Contemporary II: the sin
−4



「待って、そんな、」

引きずられながら扉が閉まるのを見たアルレシアは、目の前が真っ暗になったような気がした。

爆音は激しくなり、揺れも大きくなる。

先日慰められた窓辺に差し掛かったとき、アルレシアは空から落ちる爆弾を目にした。


「っ、危ない!」

咄嗟に兵士を廊下に押し倒すと、轟音とともに天井が崩れ落ちた。

明かりが消え、シャンデリアや窓が割れる鋭い音が続く。

壁の表面が崩れて散らばり、埃が立ち込めた。

「げほっ…大丈夫か、」

「は、い…なんとか」

兵士も辛うじて立ち上がり、辺りを見渡す。

二人がいた場所は瓦礫で埋まり、向こうは見えなくなっていた。

「…陛下、」

二人の安否が気になるが、そうも言っていられない。

兵士の命が危なくなるかもしれないのだ。

やはり、目の前の国民の命を放っておくことはできなかった。

「…行こう」

アルレシアは振り払うように頭を振り、逆に兵士を引っ張ってめちゃくちゃになった王宮を走り出した。






しばらく走り、二人は秘密の抜け道から外へ出た。

同じような空間は多くあり、王宮を昔から見てきたアルレシアしか知らないものも多い。

抜け道の先は首都の北の外れで、少し小高い丘になっている。

公園である丘から眼下の街並みを眺め、アルレシアは絶句した。

首都の南側半分が炎に包まれ、王宮は完全に崩壊していたのだ。

しかも、王宮の国王たちがいた部屋のある部分は完全に消失している。

爆弾の直撃を受けたとしか考えられなかった。

王宮のシンボルである巨大なドーム天井も崩落し、見る影もない。

唯一残された旧市街の城壁の門、北門には人々がごった返し、旧市街を出ようともがいている。


「助け、ないと…」

アルレシアは呆然と呟いた。

脳内でその声が響くことで意識し、思考がクリアになる。


握りしめたペンダントが温かい。


アルレシアは丘の麓の駐屯地を見つけ、走り出した。

「アルレシア様!?」

兵士の声を無視して丘を駆け降り、混乱する駐屯地に入る。

軍の兵士たちは立ち上る黒煙を唖然として見上げたり、どうするか話していたりしている。


突然の爆撃に戸惑い、指揮官も困っているようだった。

アルレシアは建物に入り、放送室を目指す。

目的の部屋に入ると、マイクのスイッチをいれた。

「あー、兵士の諸君。俺はアルレシアだ」

ここからは施設内の様子は分からないが、空気が変わったのは分かった。

「現在、この街は爆撃を受けている。不可侵条約を破ったドイツによってだ。今、人々は危険に晒されている。この都の防衛を任された君たちの出番だ」

アルレシアは深く息を吸う。

「目の前の命を救え。今生きている全ての命が、この
国の財産だ。子どもを守れ。子どもたちが、この国の未来だ。安心しろ、君たちは俺が守ろう。この国そのものたる俺が、今君たちを見ている」

「戦え!愛する者を守るために!敵にこの国の土を踏ませるな!」

叫ぶように言うと、施設内のあちこちから雄叫びが聞こえた。

すぐにサーチライトが灯され、砲台の準備が始まる。

アルレシアも放送室を出て外に向かう。


先程までの混乱は消え失せ、兵士たちは忙しそうに動いている。

爆撃機に砲弾が放たれ、次々と撃墜されていく。

装備こそ乏しいが、兵士は熟練されている。

アルレシアは彼らを誇りに思いながら、キッと爆撃機を睨み付けた。


「これ以上好きにさせるか…!」

この国は最後まで俺が守る。消滅するその時まで。

アルレシアはペンダントを握りしめた。


112/127
prev next
back
表紙に戻る