Contemporary II: the sin
−終わりの始まり



空襲から2日、アルレシアではドイツとの開戦に伴い3つの宣言が発表された。

1つはアルレシア国内における総動員令、2つ目はドイツへの国交断絶宣言、そして3つ目は非同盟宣言だった。

3つ目は、連合側と協力しないこと、引き続き領内での軍事行動を禁止することなどがその内容である。

これはドイツにとって都合が良かった。

ポーランド、フランスを破ったドイツ帝国の前に、アルレシアはひどく脆弱で、イギリスなどが手を出せないときた。

自らの首を閉めるような行いに、もちろん連合側からは非難が上がった。

アルレシアの占領はイギリスにとっても打撃だからだ。

しかしアルレシアはそれで良かった。

ドイツに勝つことなど不可能なのだ。

イギリスすら敗戦の色が濃厚で、耐えられるわけがない。

それでも抵抗せずに占領されることは国民の意志ではなかった。

少しでも抵抗による犠牲を抑えるためには、連合側がアルレシアで戦うことがないようにしなければならない。

そういった考えからの宣言である。

政府の亡命準備がなされ、北海でアルレシア海軍がドイツに決定的な敗戦を喫した場合にそれを実行する。

王室は国内に留まり、アルレシア自身も残る。

そのような準備の末、ついにドイツとの闘いが始まった。



***



1941年2月。

ドイツとの戦いが始まってから半年。

南側の制海権を奪われ、ついに上陸部隊がアルレシアへ向かっていた。

最新のUボートの前に海軍はことごとくやられ、アルレシア政府は亡命を決定した。

すでに北側の都市からポルトガルに向けて向かう船に内閣閣僚たちが乗り込み、出発した頃だろう。

アルレシアは外港に兵士たちを連れて立っている。

政府が亡命するということは、降伏しないということだ。

だから、一応戦いはする。

もちろん勝てるとは思っていない。

アルレシアにとっても意地のようなものだった。

(約束破らないって…言ったのに)

勅令に基づき、ドイツとは一切の交流をもたない。

友人を1人、失ってしまったのだ。

その上、国王と首相、多くの市民や兵士の命を失い、国富も消えていった。


(なんでこんなことになるんだろうな…)

先の大戦からまだわずかしか経っていない。

いや、先の大戦の延長だと見なした方がいいだろうか。

凍てつく真冬の風に吹かれながらとりとめもなく考えていると、部下が走ってくる。

「配備完了、疎開も終わりました」

「了解。総員警戒態勢」

「はっ!」

アルレシアはコートの裾を翻して振り返る。

港の先には黒い陰。

ドイツ軍だ。

背後の廃墟に兵士が入っていくのを気配で察する。

外港は三度ほどの空爆を受け、市街地のほとんどが廃墟と化した。

外壁だけが骸骨のように残り、虚ろな窓枠から銃口が覗く。

通りの両側に連なるそのような廃墟は、まるでドクロが並んでいるようだ。

空は淀み、海も暗い。

「世界が滅びたみたいだな」

「や、やめてください」

部下が不安そうにするため、アルレシアは苦笑する。

「悪い、心配するな…俺がいる限りこの国は残る。大丈夫、俺がお前も生きて帰そう」

「っ、いえ!それに甘んじる気はありません!精一杯戦います!」

「その意気だ」

地対空兵器が起動するうなり声が響く。

敵機が防空圏に入ったようだ。




直後、ドイツの戦闘機が急降下してきた。

お得意の急降下爆撃だ。

地対空兵器が火を吹き、戦闘機に砲弾が放たれる。

それらを掻い潜り、爆弾がすでに命のない墓場を荒らす。

黒い粉塵が爆音とともに立ち上ぼり、廃墟が崩れ落ちる。

火の手はもう上がらず、白い煙だけが空へ立ち上がる。

兵士たちの悲鳴も響くが、それよりも地対空兵器の砲撃音が強い。

撃墜されたものは炎を吹き出しながら落下し、道路や瓦礫に突っ込んでいく。


ドイツ空軍は動きが乱れているようだ。

「作戦が功を奏したな」

事前に配備する位置を流しておいて、いざ当日になると急に場所を変える。

簡単なようで、時間や労力のかかる大変な作業だ。

しかし成功すれば、相手に動揺を与えられる。


上陸部隊の援護である戦闘機が想定より多く撃墜されたことは衝撃なはずだ。

それでも上陸部隊は接近する。

迫撃で迎え撃つが、海に水の柱が上がるだけだ。

「構え!」

アルレシアは叫び、自らも銃を構えた。

港に上陸したドイツ軍は、素早い動きでこちらに接近する。

アルレシア軍は港に面した建物からドイツ軍を狙い打つ。


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