Contemporary III: make us one
−明かされる真実
現在。
世界会議の翌日、寝る前にイタリアは普段からはあり得ないほど考え込んでいた。
ドイツには靴紐やらパスタやらで世話になっているし、イタリア自身ドイツのことは好きだった。
ドイツにもアルレシアにも仲良くしてほしい。
あの後もドイツと一緒に帰ったのだが、ドイツも暗い表情だった。
「…うん、今度は俺が助ける番だよね」
イタリアはそうひとりごちて、夜空を見上げる。
「神様お願い、なんか俺にできることを下さい」
胸元の十字架を握りしめ、イタリアは床についた。
***
一方のドイツは、自宅のリビングで、世界会議でロシアに言われたことを思い返していた。
「自分が楽になりたいだけ」
その意味するところを、ずっと考えていた。
「どうしたヴェスト、考え込んじまってよー」
「兄さん…」
茶化しながらプロイセンがドイツの隣のソファーに座る。
「恋かー?やめとけやめとけー!」
「…アルレシアのことだ」
ケセセ、と笑うプロイセンが一瞬で動きを止めた。
「…なんかあったのか」
「世界会議で色々とあったんだ」
ドイツは素直に全て話してみることにした。
世界会議でドイツとアルレシアとの関係の話が出たこと、アルレシアにドイツのことは嫌いでないと言われたこと、そして自分はわざと嫌いだと言ったこと。
ロシアやアメリカに言われたことも話した。
プロイセンは真面目な顔で聞き、話が終わると背もたれにもたれた。
「…俺もな、冷戦が始まったすぐ後くらいに、同じこと言ったんだぜ」
「なに?」
「あいつが、俺がいるから東側の集まりには参加しねえって言ったあと、俺が願い下げだって言った」
「そんなことが…」
プロイセンはまっすぐドイツの目を見つめる。
「でもあいつは俺の意図を理解した。本心じゃないってな。お前は傷つけた。この違い分かるか?」
「…、なんだ?」
「付き合いの長さだ。俺はあいつと中世からの付き合いだ。でもお前は新しい国だ」
「だから、アルレシアは俺のことを理解していない?」
「そうだ。だが、お前もそうだ。お前も、あいつを理解してねえんだよ」
「…、」
ドイツは言葉に詰まる。
確かに、言われてみればアルレシアのことを表面的にしか知らない。
だが、それがなんの関係があるのだろうか?
ドイツは、アルレシアが自分を嫌いになることで楽になるだろうと思ってわざとああ言ったのだ。
「あいつのこと理解してたら、そんな発想にはならねえんだよ」
プロイセンは空中を見上げ、息を吐く。
どこか遠くを見つめているようだった。
「あいつは…優しい」
「それは知っている」
「ただの優しさじゃねえ。あいつのすごいところは、まず最初に受け入れるところだ」
「受け入れる…」
「あぁ。あいつは島国で、昔から色んな民族が入ってくる国だった。争いを減らすために、あいつの家の人間は相手を無条件に受け入れることを大事にした。スペインもそうだろ?あいつはイスラムとヨーロッパの境目として異文化に寛容だった」
ドイツは歴史の知識を辿り、納得する。
「だからあいつも…相手を無条件に受け入れてくれる。スペインと違って頭もいいし強いから、なおさら上手く立ち回った。今もだけどな」
プロイセンは苦笑して、ドイツに向き直る。
「ヴェストは、アルレシアに嫌われようとした。でもな、あいつは、どんなお前も受け入れる。アルレシアのことが嫌いなお前でも」
そこでドイツは息を飲んだ。
それならば、ドイツはさらにアルレシアを苦しめたことになる。
嫌われていることを受け入れて、自分のせいだと責め、それにより傷つく。
「俺はなヴェスト、自分で言うのもなんだが、素直じゃねえ。それはあいつも知ってる。だから『願い下げだ』って言うのはいつもと同じなんだよ。あの時この言葉を使ったのは、謝ったり気にするなって言うよりも、自分の本心を伝えるためだ」
「傷ついた、と、わざと伝えたってことか?」
「そうなる。べつにそんな傷ついてねーけど!」
それには答えず、ドイツは考える。
プロイセンはわざと本心を伝えることで、アルレシアの心に波を立てないようにしたんだろう。
すでに罪悪感を感じていたアルレシアのその感情を拭うことはできない。
だから、謝ったり気にするなと言って余計に罪悪感を高めてしまうことを言うよりも、アルレシアが予想しているであろう態度をとることで『予想通り』にする方がいいのだ。
ドイツの嫌い、という言葉は、ある意味アルレシアも予想していただろうが、同時に恐れていたことだった。
きっとプロイセンも、どの言い回しを避けるべきか考えて言ったんだろう。
何から何まで、ドイツは間違っていたのだ。