Contemporary III: make us one
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「ま、アルレシアのフォローは他のやつがやるだろ。それこそノルウェーやオランダはあいつと特に縁が深い。デンマークもだけど今はノーカンな」
「…あぁ」
ドイツがまだ浮かばない顔のため、プロイセンが話題を変えようとしたところで、チャイムが鳴った。
「誰だこんな時間に」
プロイセンが呟くと、ドイツは無言で玄関へ向かう。
「誰だ…って」
「ドイツ!ドイツ!大変なんだよ!」
そんな騒がしい声が、夜遅い中欧に響いた。
***
イタリアは、気がつくと真っ白な空間に立っていた。
「ヴェー…ここは…?」
「おお、マジでヴェネチアーノがいた!」
「へ…?」
懐かしい声がして振り向くと、そこには大好きな祖父の姿。
「ローマ爺ちゃん!」
「でかくなったなー」
快活に笑う男はローマ帝国だった。
イタリアは飛び付いて嬉しそうに声をあげる。
「どうして?夢?」
「どうだろうなぁ。でも、神様にここへ来いって言われたんだ」
「神様…?あ、そういえば俺、神様にお願いしたんだ!」
「なにを願ったんだ?」
イタリアは初めからことの顛末を話した。
ローマはそれを聞き、神様の意図を知る。
「なるほどな…よし、爺ちゃんに任せろ!」
ローマは豪快にそう言うと、「おい、いるんだろ!」と声をかけた。
すると、どこからともなく二人の男が現れる。
「お呼びですかな」
「あぁ。うちの孫が、あんたらの願い叶えてくれるぞ
」
「なんと!」
初老の男たちは目を見開き、イタリアに詰め寄る。
「アルレシア君にぜひ伝えて欲しいことがあるんだ!」
「え、え?うん、」
戸惑うまま、イタリアは頷く。
「王宮の地下を捜索して下さい!」
別の男が叫ぶように言い、イタリアはこくこくとただ頷いた。
「アルレシア兄ちゃん家の王宮だよね…?」
「ええ」
「頼みましたよ」
二人は言うだけ言って忽然と姿を消した。
「なんだったんだろ…」
「ヴェネチアーノ、今のをアルレシアに伝えるんだ」
「うん、よく分かんないけど分かった!」
何がなんだか分からないイタリアだったが、ローマへの全幅の信頼があった。
「よしよし。これで、アルレシアとドイツは仲良くなるぞ」
「へ?」
重大なこと、それこそ現代世界が驚愕するようなことを言って、ローマの姿はぼやけ出す。
「ちょ、爺ちゃん!」
「頑張れよー」
気の抜けた声を最後に、イタリアの視界は見慣れた天井に変わった。
***
深夜、アルレシアは眠れずにワインを開けていた。
悲惨な歴史の回顧を終え、目が冴えてしまったのだ。
グラスの深紅を眺め、ため息をつく。
―――俺は嫌いだ
ドイツの言葉が頭に響く。
「ごめんな…」
静かな部屋に、小さな懺悔が落ちる。
アルレシアもドイツも平和になった。
だが、ふたつの国の間には何もない。
もう一度ため息をつこうとしたところで、電話が鳴り出した。
「…誰だよ、こんな時間に無神経な」
無視してやろうかと思ったが、よっぽど大事な用事かもしれない。
アルレシアはとりあえず受話器を取った。
「もしもし」
『もしもしアルレシア兄ちゃん!?イタリアだよ!』
「イタリア…?どうした」
『あのね、夢が爺ちゃんとおじさんで王宮の地下を捜索して欲しいって!』
「…、夢に爺ちゃんとおじさんが出てきて、王宮の地下を捜索するようにって言われたってことか?」
『そういうこと!』
「王宮って俺ん家のだよな、その爺ちゃんとおじさんって誰だ?」
『ローマ爺ちゃんと、知らないおじさん二人』
それを聞いて、アルレシアの心臓は大きく脈打った。
「…、まさか、」
『ごめん、いきなりで。でも、信じて欲しいんだ』
「あ…あぁ、信じる。ちょうど工事するか議論中だったし」
『ありがとう!』
イタリアから電話を切られ、アルレシアは受話器を置いた。
「ローマと…おじさん二人…」
さらには王宮の地下の捜索ときた。
アルレシアは窓から戦後建て直された王宮を見遣る。
地盤に問題があり、近々工事を行うか議論が成されていた。
「まずは電磁波で探ってみるか」
そうと決まればアルレシアはすぐに手配を開始した。
「どういうことだ、イタリア」
ドイツはソファーに座ったイタリアに静かに尋ねた。
「言った通りだよ…ローマ爺ちゃんとその二人に言われた通り、アルレシア兄ちゃんにも電話したよ」
「イタリアちゃん、それは夢のお告げってやつか」
「わかんない」
プロイセンも呆気にとられている。
当たり前だ、突然こんな突飛な話をされたのだ。
「そして…俺と、俺たちとアルレシアの仲が直ると?」
「そう言ってた。俺もよく
分からないんだけど…」
「まぁイタリアちゃんなら…こう…バチカン的な何かであり得そうな気はするな」
イタリアの真剣さに、現実主義なところがあるドイツとプロイセンも信じる方に傾く。
「アルレシアは応じたんだろう?」
「うん」
「それなら…結果待ちだな」
結局は様子見しかない。
それでもすでに、祈るような気持ちになっていた。