Middle Age I: the Ruler of North Sea
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835年。
人口増大と相続の問題などから、スカンディナヴィア半島やユトランド半島の北方ゲルマン人たちが海へと繰り出すようになった。
男は婚姻にあたって妻に対して持参金が必要だったため、その確保のために略奪に走ったのである。
こうして、最寄りの島で、なおかつこのとき欧州最大の金持ち国家だったアルレシアへの侵入が始まった。
第一次ノルマン戦争から始まる断続的な戦いは、300年近くにわたるノルマン戦争として総称される。
***
「おらおらどけーい!ヴァイキング様のお通りだー!」
「うわぁあ!ヴァイキングだ!逃げろ!」
北部の港町にヴァイキングがやって来たと知らせが都に入って来たときには、すでに都の外港ポルタスヴィアにも上陸されていた。
「アルレシア様、逃げましょう!」
大人たちが逃げ惑い、都はパニックに陥っている。
「…王は」
「陛下は祈祷をされています」
「……」
だめだ早くなんとかしないと。
アルレシアは遠い目で声をかけた人間を先に逃がした。
重い腰を上げると、アルレシアは都の城門へ向かった。
パニックになっている通りへ入ると、アルレシアの姿を見た人々が駆け寄る。
「アルレシア様、どうしましょう」
「もうこの島は終わりですわ…!」
「落ち着いて。俺が行こう。城門をすべて閉じて」
アルレシアは落ち着き払い、ゆったり城門へ歩いた。
他の城門は閉じられ、アルレシアが着いた城門だけが開いている。
そして、城門の向こう、外港の方から荒々しい集団がやって来ていた。
「デーン人か…」
北方ゲルマンの大きく猛々しい姿に、さすがに怯むが、それだけではいけない。
まだ都には多くの人が残っている。略奪されるわけにはいかなかった。
「おめぇがアルレシアけ?」
「そうだ。君はデンマークだな」
「知ってんのか!俺も随分有名になったみてぇだな!」
「あんこうるせ」
髪をツンツンとさせた少年・デンマークと、その後ろでデンマークをつつくピン止めをした少年。
「こいつはノルウェー!」
「…ん、ノルウェーだ」
ふっと微笑むノルウェーはなんだか格好よく、漠然とだがこんな男になるのが理想だな、なんて思った。
デンマークは少しうるさい。
開かれた城門を挟んで対峙するアルレシアとデンマーク、ノルウェー。
デンマークは楽しそうな顔つきから、北方の覇者の顔つきに変わる。
「そんで…降伏するべ?」
まるで決定事項のように言うデンマークに、内心かなり毒づきながら、「そうしたらどうなる?」と聞いた。
「悪いようにはしねぇ。ただ俺の子分になるだげだっぺ」
「やめどげ」
ノルウェーが嫌そうに言った。仲が悪いのか良いのか。
「俺もやだなぁ」
そしてアルレシアも、デンマークに挑戦的な笑みを向けた。
「他を当たるんだ、な!」
アルレシアはそう言いながら剣を振りかざした。
デンマークは斧でそれを受け止める。
「交渉、決裂だな…!」
デンマークは剣を跳ね返すと、そのままの勢いでアルレシアに斧を振る。
アルレシアはそれを避けると、斧を振って重心が傾いているデンマークの足を払いながら、斧を振る腕を反対側に押しやる。
するとデンマークは簡単に重心を崩し、地面に倒れ込んだ。
斧の上に立ち、剣をデンマークの喉元に突き付ける。
「っ!」
「おぉ…」
見てるだけのノルウェーが感嘆の声を漏らした。
「ここで死ぬか、ここを出ていくか。どっちがいい?」
そう尋ねるアルレシアの目は据わっている。
「は…はは、強すぎだっぺ…」
苦笑いを浮かべるデンマーク。
その言葉はどこかで聞いたことがある気がした。
「分かった、出ていく…負けは負けだ」
アルレシアはデンマークから離れる。
デンマークも立ち上がり、邪気のない笑顔を浮かべた。
「敗者は本来生き残れねぇ…生ぎでるがらには、別んとこ行くしかねえべ」
行くべノル、とデンマークはノルウェーを連れて背を向ける。
その背中は、やはりどこか重なって。
気が付けば、デンマークの服の裾を掴んでいた。
「?どうした?」
「…略奪じゃなく交易なら、その、なんだ、…また相手してやる」
こういうとこはあまり成長してないな、と内心苦笑する。
「…天使…」
「…ん?」
「天使みてえって。俺もそうさ思う」
デンマークの呟きに、ノルウェーも乗っかる。
「また来っぺ!今度は土産もってな!」
そう言ってデンマークは船に乗って別の地へ向かった。