Middle Age II: a part of the world
−若かりしおっさんたち
イギリスの内乱が終わった頃、すでにヨーロッパは近代への準備を進めていた。
もともと貨幣経済の進展にともなって農奴の反乱があいついで農民身分が向上したほか、百年戦争によって長い間兵役に出ていた騎士たちの大部分が没落した。
ペストの大流行によって人口の激減もあり、余っていた人手は15世紀半ばにはそれなりに落ち着いていた。スイスはその傭兵を産業として組織化し、ハプスブルク家の支配下から脱していた。
しかし戦争の終結と新たな農業生産技術の進展によって、人口は再び増大に転じ、いよいよ行先のなくなった男子はドイツ地域ではちきれそうになっていた。
こうして中世社会はもはや半壊し、東方ではスラブ系とオスマン帝国の争いが繰り広げられていた。
そして、今日おっさんとして知られている面々がほぼ出揃っていた。
「アルレシア!お兄さんが遊びに来たよ!」
「またかよ、暇なのか」
「暇ではないね」
「サボりだな」
「逃避行さ!」
アルレシアの家に、フランスが騒がしく突入してきた。ちょうど玄関を掃除していたアルレシアは、騒々しい音にげんなりとする。
「実は今日は新しくできたマブダチを連れて来たんだ」
「よっ、スペイン言うんや。よろしくな!」
しかしフランスの後ろから顔を出したのは、ラテンな感じのイケメン。黒髪に健康そうな肌、快活な表情。全体的に眩しい。
こういうことは稀なため、アルレシアは驚きつつもその握手に応じた。
「アルレシアだ、よろしく」
「つい最近、イベリア半島からイスラム勢力を追い出して国が建ったばっかなんだよ」
「すでにでかいな」
「国の原形はかなり昔からあったんや」
「あ、そういう」
イベリア半島でレコンキスタを行った中心勢力、カスティリャ王国のときからスペインの自我はあったそうだ。そのほか、ポルトガル王国、アラゴン王国と半島には並び、アラゴンはかつてノルマン人が建てた南イタリアの両シチリア王国を「シチリアの晩鐘」という反乱を機に併合していた。
そのため、1479年にカスティリャ王国とアラゴン王国が合同してスペイン王国ができると、同時に南イタリアもスペインの支配下に入ることになった。
「ほんとはもてなしたいとこだけど、今日は来客の予定があるんだ」
「えー、お兄さんというものがありながら!」
「二人はそういう関係なん?」
「違うから」
フランスめ、スペインにあることないこと吹き込みそうだ。スペインもスペインで純朴にそれを受けとめてしまいそうで怖い。
「立ち話もなんだから入れてよー」
「予定あるって言っただろ。つかお前が言うのか」
その言葉はこちらのセリフだと思いながらしつこく粘るフランスをあしらっていると、「げっ」という声がした。
そちらを見ると、まだあちこち傷が残るイギリスがいる。ちなみにバラ戦争終結時に、待たせた罰だとデコピン済みである。
「げぇっ!」
イギリスの登場にはフランスも呻いた。百年を争った禍根はあるようだが、付き合いの長い2人だ、そう引きずっているわけではないようで安心する。
「イギリスやん、もう元気なんか?」
「まぁまぁな。それよりなんでフランスがいるんだ」
「こっちのセリフだっての!まさかアルレシア、予定ってイギリス?」
「いや?」
イギリスも突然やって来ただけだ。
なぜこう、先に確認を取らないのだろうか。
ため息をつきたいが、二人とも戦争を終えたばかりだ、少しは我慢することにした。スペインは百年戦争で2人に巻き込まれているため、慣れたように2人と話していた。