Early Modern I: the crown oversea
−和解



翌日。


アルレシアとベルギーとロマーノは、屋敷がある丘のふもとにある街へやって来ていた。
大きな都市ではないが、物は揃っている。

スペインとルクセンブルクは仕事があるらしく、ひどく残念そうにしていた。

例によってオランダとはコンタクトをとっていない。


「やっぱ元気な街やねぇ」

「スペインはどこもこうなんじゃねえか?」

「おいあの姉ちゃんかわい過ぎるぞこのやろー」

「ロマーノ口悪いぞ」


ロマーノはベルギーとアルレシアに挟まれて歩いている。

手を繋いで歩く三人、ぎりぎり若い親子に見えなくもないが、外見的には兄弟と思う人が多いだろう。


「にしても、やっぱ物価高いんやね」

「3倍近くになってるな」


スペインやポルトガルが海外からもたらした大量の銀や金が出回り、物価が一気に跳ね上がっているのだ。
いわばインフレで、価格革命と言われる。これによって、貨幣で資産を成していた地主たちが資産が目減りしてしまい、一気に力をなくして絶対王政に近づいていくこととなる。


「親分がたくさんお金くれはったからええけど、普通の人は大変やね」

「何の話してんだよ」

「ロマーノ拗ねるな。ほら、美人がチュロス売ってるぞ」

「どこだ!」


単純なロマーノにベルギーと二人で癒されてから、チュロスを買う。


「はい坊や」

「キ、キスしたっ「あー行くぞー」おいアルレシア!」


とんでもないことを言おうとしたロマーノを無理矢理連れて店を離れる。
帰り際に、美人が投げキスをロマーノに飛ばしてくれていたからいい女だ。


「アルレ兄ちゃんに投げキスしたで」

「ずりぃあのベッラ!」

「…ん?」


二人の言葉に引っ掛かり聞き返すがぼかされた。

だが、ベルギーの「ウチが隣におってあんなんされるって何なん、ウチそんな魅力ないんか」という声が聞こえた。


「ベルギー、何のことか知らねえけど、お前は見た目も中身も別嬪だから安心しろって」


穏やかに笑いながら言うアルレシアに、ベルギーは真面目に顔を赤らめた。


「ず、ずるいわ…!」

「おい俺はどうなんだちくしょー」

「可愛いけど中身はかっこいいぞー」

「そ、そうか?」


手を繋いで並ぶ三人のうち二人が顔を赤らめる光景に、道行くラテン人たちは微笑ましそうな目を向けた。


それから三人は人通りの少ない路地の入口にあるベンチに座り、チュロスを食べた。


「親分が作るやつの方がええな」

「まぁ、スペインのがマシってだけだけどな!」

「ん、確かにそんな上手くないかも。スペインに言ってやったら喜んで夕飯豪華にするな」

「わ、アルレ兄ちゃん頭ええなぁ!」

「伊達に紀元前から生きてないからな」

「アルレシア、そんな昔から生きてんのか」


ロマーノが驚く。
そうか、言っていなかったか、と思いアルレシアはその話をすることにした。


「自分でもどんくらい前か分からないんだけどな。でも物心ついたときにはローマ帝国がいた。ロマーノの爺ちゃんだな」

「ローマ爺ちゃんと知り合いなのか!?」

「まぁな。つっても、一回しか会ったことはないんだ」

「追い払ったときやね」

「アルレシアってそんなすごかったのかちくしょー…」


ロマーノの頭を撫でながら話を続ける。気持ちよさげに目を細めるのが愛らしい。


「あの頃を生きてて今も世界にいるのは、多分俺と中国くらいじゃないか?」

「あぁ、あの東の果ての」


ベルギーが目を輝かせる。


「ウチめっちゃ東方のこと気になってん!世界の果てとかどないなんやろー!」

「滝になって、落ちたら死んじゃうんだぞ」


ロマーノは怖いのだろうか、嫌そうな顔をしている。


「いや、もう世界は丸いって証明されただろ」


マゼランの艦隊による世界周航などで世界が球形であることは分かっていた。
二人は知らなかったのか、ポカンとしている。まだ情報の伝達に時間がかかる時代なのだ。


「え、そうなん?」

「知らなかったぞこんちくしょー!」

「ほんとのとこ分かんねえよ?自分の目で見ないことにはな」

「やっぱ行ってみたいぞ…」

「せやね、真っすぐ行ったら戻って来るんやろ?どんな感じするんやろか」






「教えてやろうか」






突然、上から声が落ちる。

見上げると、図体のでかい、柄の悪い男たちが立っていた。


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