Early Modern II: cannot be independent
−決断
オランダとの間で戦いが始まってからしばらく経った。
長期戦となり、戦いの小休止期間というのがぽつぽつと生まれたりもする。
そんな中で、ロマーノが里帰りすることになった。
「本当に大丈夫なん?」
「大丈夫だって言ってんだろこのやろー!」
そんな会話を幾度となく繰り返し、ついに当日。
一応玄関でロマーノを見送ってから、スペインは「よし、」と呟く。
「尾行や!」
「おい」
思わずアルレシアは突っ込んだ。仕方ない、心配だけど頑張れよ、みたいな雰囲気を醸し出していたというのに。
「結局ついてくのかよ」
「当たり前や!物騒やし」
「じゃあ最初からついて行けばいいのに」
呆れながら言うアルレシアに、スペインは苦笑する。
「せやね…けど、何でもやってやることがいいわけやない。一人でもできるようにするんが、愛情やないかって思ってん」
優しい、慈愛に満ちた翡翠の瞳。
それは、子を想う親のそれに酷似していて。
子どもっぽい言動の多いスペインだが、まだまだ至らない点もありつつも、しっかりと親分らしさを身に付けていた。きっと、スペイン本来の優しさやおおらかさもあってのことだろう。
「…いつか、ロマーノもスペインの優しさに気付く」
もう気付いてるかもしれないが。
素直じゃないようで、イタリアらしく感じ方や思考はやはり素直だ。
「アルレはどうなん?」
すると、楽しそうにスペインがアルレシアの顔を覗き込んだ。真面目な雰囲気が性に合わないのか。そういうわけではなさそうだが、これといって考えているわけでもないだろう。
「ちゃんと俺の愛情伝わっとるー?」
「慎んでお返ししたいくらいにはな」
「えー!」
その顔を押しやり、次に背中を押して玄関から出す。尾行するならもう行かねば。
「ほら、ロマーノ行っちまうぞ、早く行ってやれよ―――親分?」
「へ、今、」
スペインの驚いたような呆けた顔。
言葉を全部聞く前に、玄関を閉めてやった。
「っ、なんだこれ、恥ずかし…!」
少し後悔しつつ、玄関にもたれる。
顔が熱い。
ロマーノを思う姿勢に、少しはそう呼んでやってもいいかな、なんて思ったのだが、やたら気恥ずかしかった。
ちなみに、その扉の向こうでスペインも顔を赤らめていたらしい。
***
里帰りを終え帰って来た二人。
だが、二人は一緒に帰って来た。
「尾行はどうしたんだよ?」
「いやぁそれがなぁ…?」
なんと、スペインが話すところによると、途中トルコにロマーノがさらわれ、それを助けたときにバレたのだそうだ。
「いや、どっから突っ込めばいいんだ」
まずトルコは何やってんだ、てかスペインはあのトルコに勝ったのか、そして結局里帰りの道中一緒になったのか、と様々が頭を巡る。
「親分あのトルコに勝ったん?ヨーロッパ初めてやん!」
「さすがスペインさん」
元気になったベルギーも驚く。ルクセンブルクも、あまり余裕そうな表情は崩さないながら驚いていた。
「余計なことしやがって…」
ロマーノはふて腐れているが、内心感謝しているのであろうことは容易に想像できた。それを理解していないのは、情けない顔をしているスペインくらいだ。
「あ!せやアルレ、玄関でのあれな「よーし飯にすっぞー」
ぶり返したスペインを遮り、用意しておいたパエリヤを準備しに行く。まさかそのことをぶり返すとは思っておらず、強引にその場を離脱した。
「どうしたん?」
「や、アルレが俺んこと親分って言ってくれたんよ」
「へー、良かったやん!」
「アルレシアのがすごいぞちくしょー」
「うっ、それは否めん…」
***
宗教改革の流れは、刻々と加速していく。
フランスの宗教戦争であり内乱であるユグノー戦争は、1572年のサンバルテルミの虐殺によって1万人以上の新教徒が殺されてからさらに激化した。
スペインの上司は、それを記念して記念貨幣を発行。
持ち帰ったスペインは複雑そうな顔をして、それを見えない場所に隠していた。
アルレシアに参戦しないよう言ったオランダでは、ユトレヒト同盟が結ばれ、より結束してスペインに抵抗を始めた。
一方のスペインもさらに力が高まり、1580年にはスペイン王がポルトガル王を兼任し、その領土をすべて合併した。
オランダは負けじと張り合い、1581年、強引に独立宣言を発表しスペイン政府を激昂させた。
「そろそろ、だな…」
アルレシアは自室から夜空を見上げ考える。
行動を開始するときが来た。
もはや、これ以上の静観はできなかった。