Early Modern II: cannot be independent
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翌日。
アルレシアは、オランダを支援するイギリスの家に来ていた。
ちゃんと事前に連絡を入れたため、チャイムを鳴らせばすぐイギリスが顔を出す。
「よう、久しぶりだな、アルレシア」
「久しぶり。悪いな、いきなり」
「いいって」
イギリスに招き入れられ、応接室に通される。
テーブルに乗った暗黒物質は見なかったことにした。
「まぁとりあえずかけてくれよ」
「ありがと」
ソファーに座り、反対側にイギリスも座る。まだ貧しい田舎の国であるイギリスだが、着実に室内の調度品は良いものに代わっていた。
「最近、アジアから色んな茶を仕入れてるんだがな、まだ客人には出せそうもないんだ」
そう言ってワインを注がれる。グラスはボヘミアの一等品だろう。
「ん、いいなこれ」
「だろ?アルレシアが好きそうな香りのを用意したんだ」
好みのワインを飲みながら、アルレシアは話を切り出すタイミングを伺う。
「で?どうしたんだよ、今日は」
しかしそこは長い付き合いのイギリス、心得たようなタイミングで向こうから聞いてくれたため、アルレシアは口を開いた。
「オランダの独立戦争のことなんだけど」
「おう、それがどうした?」
「…お前が、調停してくれないか?」
「俺が?」
オランダとスペインの戦争をいち早く終わらせるためには、第3国による調停が手っ取り早い。
そう思い、イギリスを頼ることにした。
イギリスはスペインにちょっかいを出しているし、手札はある。
「…俺にはメリットが見当たらないな」
そう言ってイギリスはワインを口に含み思案顔をする。まずここで無碍にしまいあたり、こいつの優しさだと思う。
「スペインが疲弊してくれた方がありがたい。アメリカへの進出もあるしな」
「…、そこを何とか」
イギリスは賢い。
アルレシアの目的も、今日断られることを知っていることも、分かっているだろう。
アルレシアはイギリスが基本自分のために動くのを知っているから、断られるだろうことは視野に入れている。そんなことも、長い付き合いの2人は互いに分かっていた。
「まぁ…お前が俺のもんになるならいいぜ?」
にや、と笑いながらイギリスは問う。
そこでアルレシアはやっぱりな、と確信した。
イギリスの最終目標は、スペイン、オランダを抑え覇権を握ることだ。
オランダ側に立ち、まずは大国スペインを抑える。今度はオランダに何かしらしかけて、これを抑え込む。
その方法の一つは、北海に浮かぶアルレシアをイギリス領にしてオランダを封鎖することだ。
アルレシアの制海権とイギリスの制海権を合わせると、オランダはイギリスとフランスの間、イギリス海峡からしか船を出せない。
そうなればイギリスがそこの船を海賊を使い拿捕するのだ。
イギリスが敵になりうる。
この確認はアルレシアにとって重要だった。
あわよくば調停してもらえれば万々歳だったが、オランダ独立戦争がどうにかして終わった後、さらに二人を傷付ける存在になるかもしれなかったからだ。
そもそもアルレシアにも少なからず影響が出る事態になってしまうし、やはり誰にも傷ついて欲しくはない。
イギリスのスタンスを確かめ、アルレシアは予定していた行動をとることを決定した。
「悪いな、お前のもんになるつもりはねえ」
「そうか、そりゃ残念だ」
さして残念でもなさそうな様子に舌打ちをつきたくなる。
「ちっ…あ」
もうついてしまった。
イギリスはそれに苦笑する。
「でもよ、お前こうなること分かってたろ?」
「まぁな。それでだ。もう一つ、頼み?がある」
「なんだよ曖昧な」
頼み、とわざわざ言うことではない。
なぜなら、恐らく頼まずともそうなるからだ。
「まあ聞けよ、」
アルレシアはイギリスに言葉を投げ掛けた。