Early Modern II: cannot be independent
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強い戦力を持ち、北海という広大な制海権を掌握するアルレシアの参戦は、今だ戦うオランダの人々を勇気づけた。
その様子を見て、オランダはため息をつく。


「参戦するな言うたやろ…」


そうは言っても、オランダはベルギーと別れた頃よりさらにボロボロだ。

戦争の傍ら貿易で稼ぎ、イギリスの助けもあって初期よりマシだが、長い戦いは疲弊を招いた。
資源、戦力ともに豊富なアルレシアの参戦は、わざわざ客観的に見ずともありがたい。


「顔…見てへんな…」


戦争が始まってから、まったく会っていない。愛しい存在を頭に浮かべると、自然とそんなことが口から洩れていた。


「会いたくなった?」

「そんなん昔から…って、!!」


ふと聞こえた声に、気付くのが遅れる。


「よっ、」


そこにはずっと焦がれた、アルレシアの姿があった。オランダは珍しく、大きく目を見開いた。ここまで動揺することはめったにない。


「アルレ、」

「久しぶりだな。すっかりボロボロになって」

「ほんまに、アルレか…」

「ほかに誰がいんだよ」


そう笑うアルレシアを、オランダは思い切り抱きしめた。腕の中に収まるアルレシアに、本当に来てくれたのだという実感が暖かく広がった。


「…人の言うこと聞かんで」

「ありがたく思えよ?」


労るように背中を摩られる。
その行為が、頑張ったな、と言っているようで。

不覚にも、涙腺が緩みそうになった。


「―――一緒に独立するぞ」


強い意思の篭った声。
オランダは抱きしめる力を強めた。








「にしても、なんでいきなり参戦したんや」


駐屯している村の空き家、人目につかない場所で二人は落ち着く。そこでオランダが尋ねた。


「さっさとこの戦い終わらせようと思ってな。俺の帰属を巡って、また戦いになるのはまずいし。とりあえずお前と戦ってスペインに勝って、スペイン領になる前の状態に戻ろうって」

「俺が負けるかもしれんのにか?」

「イギリスと話したんだ。お前らが優勢に立ったら参戦するってな」


イギリスにあの日頼んだのは、アルレシアが参戦した後の応援だった。あくまでアルレシアはオランダの味方だという姿勢を示し、イギリスへの一種のけん制とするのだ。
スペイン領のままでいることで起こる争いを回避し、イギリスの企みを阻止し、国民の命を守るためには、これが最善だった。


「ええんか、また俺ん家来て」

「いいよ。あん時と違うし…今は、オランダのこと信じてるから」


まっすぐ目を見て言えば、オランダは顔を緩めた。珍しい表情にこちらが驚く。


「ん、幸せにしたる」


その言葉に、アルレシアも頷いた。


***


1598年、フランスではアンリ4世がナントの王令を発布し、新教徒を公認した。
彼は新教徒側だったが、あえてカトリックに改宗して即位しこの王令を出すことで内乱を納めたのだ。
30年に渡る内乱は国土を荒廃させたが、これより復興が始まる。


一方、同じく宗教戦争でもあるオランダ独立戦争も山場を迎えていた。


アルレシアの参戦で士気が上がるとともに、スペインとの戦いに勝っていったからだ。


そうして、10年あまり膠着状態が続き、西暦は1608年を迎えた。




大砲や銃声の音が響き、戦士たちの怒声が聞こえる。空には煙が立ち込め、辺り一面埃っぽい。

スペイン軍とオランダ・アルレシア軍が交戦する中、オランダは別の場所へ向かった。スペイン軍を挟撃するためだ。

足止めをするべく、陸上で機動力に欠けるアルレシア軍はスペインの主力部隊と向き合う。


先頭にアルレシアが立ち、相手も先頭にスペインが立つ。


「…スペイン、」


一分の隙もなくアルレシアは構えるが、発した言葉に覇気はない。剣を取ることは十字軍の撃退以来で、しかも仲の良い国とそれを交えるなどということは初めてのことだった。


「気にせんでええんよ、アルレ」


対してスペインは笑ってみせる。その笑顔に偽りはない。


「ロマーノがなんか優しくなってん。アルレのおかげやろ?他にもぎょうさんアルレには助けられとるもん」

「…悪い、スペイン。でも、負けるわけにはいかないんだ。戦いを終わらせるためにも」

「分かっとる。お互い様や」


そう言ってスペインは銃剣を構える。剣先のピックが鈍く光る。


「…今までありがとう、スペイン。楽しかった」


アルレシアも自らの銃剣を振り上げる。それは、名残惜しい決別への後味を絶つ意味も込めていた。


「全軍進めっ!!」

「応戦や!!」


両者の軍が雄叫びを上げながら駆け出す。










翌1609年、オランダ側の勝利のもと、休戦条約が結ばれた。

事実上の独立を勝ち取り、アルレシアは同君連合としてオランダ領に継がれる。


そのことが決定した日の夕方は、今まで見たことがないくらい美しい、群青色だった。


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