Early Modern II: cannot be independent
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久方ぶりに足を踏み入れる都。
100年の間、一度も来なかったわけではないが、やはり町並みは変わっている。

特に、城壁の外に広がる市街地はそうだ。


レガリスタードは、中世に建てられた城壁の内側の旧市街と、その外側の新市街で構成されている。この城壁は、昔デンマークやノルウェーと初めて会ったときに街の一番外れだった場所だ。

今は街の中心部である。

プロイセンに襲撃された旧市街の森は公園として整備され、王宮は火災で消失してから建て変わった。
王宮は12世紀まではローマ建築だったが、火災で消失して入口部分だけが残った。ちょうどギリシャのパルテノン神殿のようだ。
それに、当時流行りだったロマネスク様式の建物がくっつけられていた。
ギリシャ風にアレンジされていたから違和感はなかったが、やはり昔を知るアルレシアにすればなんだかな、といった外観だった。
それがさらに火災で後宮部分が消失し、後宮部分はバロック様式のアレンジで建てられた。
つまり、入口がギリシャ、大部分がロマネスク、後宮がバロック、というバラバラな様式の王宮なのだ。

ある意味歴史は感じる。


そんなことを思い出しながら、二人は新市街を歩く。王宮から放射線状に大通りが新市街まで伸び、その一つにいる。

この道は途中、デンマークたちと会った城門を通って旧市街に入る。

歩いていると、ふとアルレシアは足を止めた。


「あ、これ…」


アルレシアが見上げるのは、通りに面して建つ荘厳なゴシック様式の建物。
オランダも見上げ、「あぁ、」と声を漏らした。

そう、これは100年前、アルレシアがオランダの家にいた頃、アルレシアが激昂するきっかけとなった教会だった。

農地を潰し税金を使い建てられたため、植民地のようだと怒ったのだ。あの頃はこの辺りも農地だったのだが、市域が拡大し、今は建物が所狭しと並ぶ。

放射線状に伸びる道も、市域の拡大に沿って延長されて来たのだ。


「懐かしいな…」

「まぁ、な…」


オランダはいわば黒歴史のため複雑そうだ。
アルレシアの数少ないキリスト教の人々が礼拝を行う場所になっているようだ。
オランダ領、スペイン領と経験し、少しずつカトリックやプロテスタントの人口は増えている。礼拝区画を分けることで、宗教対立は分けている。この教会はオランダが建てたものではあるが、カトリックの礼拝に使われる場所だった。

宗教に関わらずアルレシアへの移民は増えており、南部のリートラントにはオランダ系の住民がどんどん増えていた。それより北の地域では、ユグノー戦争から逃れてきたフランス系のプロテスタントも多い。
自由な信仰を保障することで、金持ちが増えてアルレシア社会に還元される仕組みである。金のためとはいえ、ここには信仰の自由があった。


「この国にいるばっかりに自由に信仰できないってのよりはいいだろ。結果オーライ?」


アルレシアは気にせず教会を見上げる。高い尖塔は首都で一番高い建物だ。


「行こう、遅刻しそうだ」


アルレシアは今だ渋面で教会を見上げるオランダを引っ張る。


「ほら、時代は変わったんだ」


順応しろと、過去の自分を許せと言外に言うアルレシアに、オランダはゆっくり頷いた。



過去には戻れない。
だが、新しく作った歴史が過去になったとき、それが良いものならば、それでいいのだ。

過去に縛られず歴史を紡ぐこと、それが必要だった。


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