Early Modern III: bill rather than kill
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「ちっ…イギリス、まだ剣で戦えるな?」

「当たり前、」


二人は同時に銃剣を捨て、普通の剣に持ち替える。そしてより高い金属音を響かせて二人は激突した。


「最近調子乗りすぎだろっ、」

「俺の時代が来てるだけだ、」


鎬(しのぎ)を削り、至近距離で睨み合う。
力勝負では互角か。


「ふざけた真似しやがって」

「航海法か、ま、オランダ邪魔だしな」


ガキン!と大きな音を立てて二人はいったん離れ、再び睨み合う。
そこでイギリスは表情を打算的な笑みに変えた。


「お前が俺のもんになれば、お前の船は航海法に引っ掛からない。どうだ?俺も余裕があるわけじゃない、お前と戦いたくねえし」

「俺の制海権を得たお前はオランダを完全に封鎖できるしな?」

「そういう見方もあるな?」


ナメやがって、とアルレシアは舌打ちをついた。


「アルレシアはオランダだけじゃない、デンマークやバルト帝国―――スウェーデンも封鎖できる場所にいる。海の要衝だ」

「だから俺が欲しいって?」

「…それは建前だな」


またイギリスの顔が変わる。挑戦的だが、愛おしげな笑顔。


「昔から―――お前が欲しかった。誰かのためじゃねえ、俺がただお前を独占したかった。例え利益がなかったとしても。打算なんかのもっと手前、俺自身の感情だ」


剣の切っ先を真っ直ぐこちらに向ける。
その物理的な意味ではない鋭さに、アルレシアは動揺する。まさかそんなことを言われるとは思っていいなかった。
その感情が正確にはどのようなものなのか、それはさすがに分からない。しかし、イギリスの感情が強いものであるのは分かった。
突然の言葉に黙ってしまったアルレシアを見かねて、イギリスは苦笑してから話を変える。


「オランダは勝てねえ。分かってるだろ?」


アルレシアは話が変えられたことにほっとしながらも、その話題には無言で答える。それが如実にアルレシアの考えを表していた。

戦力差の前に、オランダが勝つ見込みは、ない。


「お前が俺のもんになったら、お前には最大限の自治をやる。だから、ある程度自由に貿易ができる。つまりオランダや他の国も、ある程度お前を経由すれば北海から出られる。オランダがこのまま負けるのは嫌なんだろ?」


オランダが負けると分かっている今、アルレシアが自由に貿易できるかどうかは最大の焦点だ。

アルレシアと制海権がイギリスの手に渡ったとき、自由でなければオランダ、北ドイツ、デンマーク、スウェーデンは北海から出られない。
イギリス海峡の制海権もオランダからイギリスに移るから、完全に閉じ込められてしまうのだ。


イギリスは当然勝ったことを理由にアルレシアを要求するだろうから、アルレシアのイギリスへの移動は大前提だ。


「でも、お前がアイルランドにしたこと考えるとな」


つい最近アイルランドに侵攻し、これを半ば植民地のようにしたのだ。そんなやつの言葉など信じられない。


「そこは大丈夫だ。どっちにしろお前を自由にしなけりゃ、オランダ側に北ドイツと北欧が回るだろ。さすがにそれには勝てない」

「…、なるほどな、俺が独立できないのをいいことにしたわけだ」


アルレシアを自由にするのがオランダや北欧の連合に勝てないからだというなら、アルレシアとその連合でイギリスに戦争をしかけてオランダを勝たせるかアルレシアを独立させればいい。

だがそこで問題なのは、アルレシアがオランダと同君連合であること、そのオランダが負けることだ。

イギリスがアルレシアを自由にすると公言する以上、他の国はイギリスへの宣戦理由がなく、オランダを後ろから間接的に支援するしかない。
それだけではオランダはイギリスに完全勝利はできない。ずっと戦いを続けても、やがてオランダ海軍が全滅すれば実質戦いは終わるからだ。

他国の海軍が参加できない限り、オランダは負けることになる。

すると、アルレシアを独立させる他ないのだが、アルレシアはオランダと同君連合でオランダの君主を戴くため、独立するには違う者を君主に立てなければならない。
現在アルレシア王家はオラニエ家に若干その血筋を見出すのみで、王制と血筋にこだわるアルレシア政府は、オランダと離れれば君主を立てられない。

つまり、イギリスとオランダが戦い始めた時点でアルレシアはイギリス領になる他なかったのだ。


「…賢くなったな?」


完全にイギリスが上手だ。
ここまで情勢を理解し、利用するとは。


「どうも」


憎たらしい笑みに、いつか後ろから殴る、と誓った。


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