Early Modern III: bill rather than kill
−新たな家とロンドン大火



イギリスの家へやって来たアルレシアは、まず使用人に迎えられ、ついでイギリス自身に迎えられた。
使用人たちは礼儀正しく、廊下ですれ違う偉い人たちも紳士的だ。


「随分好意的だな」


アルレシアが不思議に思ってイギリスに聞くと、イギリスは首を傾げる。敗戦国に対する扱いにしては、非常に丁重だ。


「当たり前だろ?お前はヨーロッパ1長生きなんだから」


その言い回しに、そうか、と納得する。


イギリスは伝統を重んじる。
古いものほど大事だから、古くから、それこそイギリスより古くからいるアルレシアも尊ぶべき存在としているんだろう。


「悪かったな化石で」

「そこまで言ってねえだろ」








イギリスの家に来てからイギリスの上司に挨拶をしたのだが、わりとすぐの1660年に王政復古が行われ、上司が変わった。共和政を率いたリーダーの死と、後を継いだ子供の能力不足などによる。

上司の交代だけでも忙しいのだが、イギリスはさらに様々なこと、海外事業や財政危機などで多忙だった。


アルレシアも自治は任されているが、オランダ領時代から変わらないため、ぶっちゃければ暇だ。


この前負けた経験から、アルレシアは自治を任されている直属の上司に相談し、兵力の増強を始めた。海軍の整備と、沿岸部の防衛に重きを置き、本土へ攻め込まれないようにした。

本土が戦場になるのを避けたためにスペインへの宣戦を行ったし、これからの情勢によっては同じことが起こりかねない。そういうことはオランダに任せてしまっていたから、自分でやらないといけない。

その矢先のことだった。



「イギリスがオランダに喧嘩売った?」


使用人の報告で、イングランド軍がアメリカのオランダ領ニューアムステルダムを占領したと聞いた。


「またやんのか…」



アルレシアが呟いたように、1665年、第二次英蘭戦争が始まった。財政難のイギリスは、アルレシアを連れて戦場に向かおうとする。


「おい、俺戦わねえからな」

「なんでだよ!」

「いや、俺にメリットねえし。この前は俺も被害を受けたから宣戦したんだ」


つれないアルレシアにイギリスは頬をひくつかせる。同君連合とは、かくも弱いものだっただろうか、とイギリスは自分の常識を疑う。


「一人で行け」


しっしっとやられ、殴ろうかと思ったが仕返しが怖くてやめた。ペストが流行り出し、財政難が深刻でこれ以上マイナス要因はいらないからだ。
そう、なんといってもアルレシアは北海の覇者様だ。同君連合などしたところで、イギリスが強制できることなどたかが知れていた。


そしてこの年、ローストフトの海戦ではイングランドが勝利したが、翌1666年6月の4日海戦で大敗した。

8月、ホームズの焚火事件などではオランダに勝ったイギリスだったが、優勢とはならず。
9月の頭に久しぶりに帰って来たと思ったらかなり疲弊していた。


「だっせ」

「最近冷たくねえか…?」

「根に持つタイプなんだよな、化石だし」

「だからそこまで言ってねえだろ!」


イギリスはため息をついてソファーに倒れ込んだ。本当に疲れたのだろう、紳士さを貴ぶイギリスが珍しくソファのひじ掛けに足を乗せ、シャツの袖をめくっていた。
シャツから見える腕の筋肉の筋に、イギリスが大人の男になったのだという実感がわいて、思わず目をそらした。


「そんなお前に耳寄りな情報教えてやるよ」


それでも同情したアルレシアはソファーの側にしゃがみ、イギリスの顔を覗き込みながら喋る。
こういう普通の場面で近付かれると照れるイギリス、顔を染めつつ耳を傾けた。


「フランスがベルギーを狙ってる。スペインは取り合わないみたいだから、戦争になるかもな」

「…で?」

「オランダが今は優位だろ?でもベルギーにフランスが侵攻したら、オランダは危機感を持ってお前との戦争を終わらせようとするはず」

「!そうか、」

「必ずフランスはお前の邪魔になるから、…ま、これ以上はいらねえな」


アルレシアは話を止め立ち上がる。


「じゃ、俺いったん本国帰るから」

「はあ!?こんなときに!」

「だからどうでもいいっつってんだろ。関係ねえ」


そう言って、アルレシアは部屋を出て行った。


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