Modern: Revolution for Revolution
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「上陸されました!」

知らせを受け、アルレシアは舌打ちをついた。

念のためにと、イギリスが上陸した都市にはデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドがいたが、どうやら負けたらしい。

三人が負けたことではなく、単純にイギリスの強さに苛立った。

オランダ、フランス、スペインは西岸要塞にいる。

西の港から首都までは、ブリュッセルからアムステルダムまでの距離より少し短いくらいだ。

イギリス陸軍戦力なら、5日で来れるはず。

「王室をパリへ」

アルレシアは知らせを持ってきた部下に命令し、ロシアとプロイセンを見上げる。

「ロシア、プロイセン。来てくれるか」

「いいよ」

「やっと出番だぜ!」

没落したフランスたちに対して、二人はまさに台頭を始めた国だ。

この事態に備えて、首都で待機してもらっていた。

アルレシアは主力陸軍とロシアたちとともに、イギリスが上陸した都市へ向かった。

「伝令!」

「はっ!」

伝令兵を呼ぶとすぐに現れる。

「フランス、オランダ、スペインに離島要塞奪還と、本土へ向かうイギリス船をすべて拿捕するよう頼め」

「はっ!」

伝令は現れたとき同様すぐにいなくなる。

「えげつねえな」

プロイセンは楽しそうに笑う。

「わざと補給地点与えて、上陸したらそこ絶つんだからな」

離島要塞を手放したのは、このためだ。

イギリスが陸軍を本土へ向かわせるためには、途中離島要塞を経由し補給を行う必要がある。

海軍と違い、イギリス陸軍はそう強くないからだ。

また、艦隊以外の船で陸軍を運ぶ可能性もあるため、全てのイギリス船拿捕が必要になる。

それを見越して離島要塞を放棄し制圧させ、上陸されたらオランダたちによって奪還、その周囲の制海権を取り戻して本土陸軍の補給を絶ち倒す。

かなりの数の艦隊が西岸要塞で撃沈していることもあり、本土上陸は難しくなるわけだ。

「さすがウクライナ姉さんより年上なだけあるね」

ロシアは感心したような、馬鹿にしたようなことを言う。

「まぁな」

短くそう返し、やがて補給を絶たれるイギリス陸軍と戦うべく、手首を鳴らした。

***

1781年2月頭。

離島要塞とその制海権をフランスたちが取り戻し、上陸したイギリス軍の補給が絶たれた。

要塞に集まる大軍の前にイギリス海軍はそれ以上の侵攻を断念した。

そして、本土ではイギリス陸軍と北欧、ロシア、プロイセン、アルレシアの連合が最後の決戦を行っていた。


イギリス陸軍は上陸した都市からかなり内陸まで進み、前線は首都の手前まで迫っていた。

国土の四分の一が戦場と化している状態だ。


そして首都郊外、最前線で、再びアルレシアとイギリスは対峙した。

他の面々には先に西岸の港の解放に向かってもらい、包囲戦に持ち込むつもりだ。

アルレシアの背後には疎開してほぼ無人となった首都の街。

前には疲弊しているがまだまだ強いイギリス。

二人は銃を構えながら睨み合う。

「粘るな、イギリス」

「お前もな、アルレシア」

不思議と、以前ほどの険悪さはなかった。


どこかで、もう戦いが終わることを予感していた。

「…アルレシア、お前は俺が嫌いか?」

不敵な表情は変えず、イギリスはそんなことを聞いた。


「…イギリスは、大事なやつだ、昔も今も、この先も」

アルレシアも無表情のままだ。

「でも、もう一緒にはいれない。悪いが独立させてもらう」

「…課税しなきゃ、自由にしてやれば、いいのか?」

「…いや。もう、俺も誰かの下にいるべき時は終わったんだ」

アルレシアは再び銃をちゃんと構える。

「お前の言う通り、俺は過去の遺物だから―――「ちげえよ!」

イギリスの大声が遮った。

「…前も、そんなこと言ってたな」

アルレシアはアメリカでの戦いを思い出す。

「あぁ…俺は、俺はな、アルレシア。イギリスとしてじゃない、個人として、…アーサーとして、」


言葉を切りながらイギリス、アーサーは続ける。



その目は涙で濡れ、悲愴な、だがどこか愛しげな表情を浮かべる。

いつか、イギリスと船の上で剣を交わらせたときを彷彿とさせる。









「好きだ、お前が―――――レイス」







一筋の光が、アーサーの頬を伝う。


「イギリス…アーサー……」


アルレシア、レイスは、呆然と呟いた。


はっきりその感情を聞くのは初めてで。

これまで、英蘭戦争やロンドン大火のときのアーサーの言動の真意を、ようやく理解する。




「なぁ、一回、この一回だけでいい。アーサーって呼んでくれないか。レイスって呼ぶのも最後にするから」

国である自分たち、存在する固有名詞は便宜上のものだと思っていた。


それが、こんなに大切に感じるなんて。


アルレシアは、大切だからこそ、限られたときしか使わないようにしようと考える。





「……アーサー」





レイス、アルレシアの言葉を聞いたアーサー、イギリスは、満足そうに笑って、踵を返す。


そして、何も言わずに去って行った。






1781年3月、アルレシア独立戦争終結。

多大な犠牲の上に、300年ぶりの独立を勝ち取った。

1783年、アメリカ独立戦争も終結。


三大市民革命をあと一つに残し、アルレシアとアメリカは自分の足で立ち上がった。


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