Modern: Revolution for Revolution
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その頃、困窮するアルレシアも、大陸での情勢を注視していた。

1795年までにベルギーとオランダが占領され、1806年7月までにナポリ王国、ドイツ地域もフランスの属国となった。

神聖ローマ帝国は名実ともに崩壊したのだ。

1808年までにはプロイセンの半分やポーランド、スペインも支配し、ロシア、東プロイセン、オーストリアはフランスに屈服した同盟を締結。

デンマーク=ノルウェーもフランスに同盟した。


さらに1806年には大陸封鎖令で大陸諸国とイギリスとの貿易が禁じられたが、これはフランスも大陸諸国もダメージを受けるものだった。




そしてアルレシアはその様子を見て、激しく危機感を抱いていた。


「これ…今あいつに来られたら、負ける」

アルレシアの戦力は無いようなもので、イギリスによってフランス海軍が弱められたからこそ、今まで占領を免れてきた。

だが、大陸諸国のほとんどを支配している以上、フランスはいつアルレシアへ攻めてきてもおかしくはない。

アメリカは干渉しないことを宣言しているし、頼れる者はいない。




―――いや。


アルレシアは目を閉じる。


一人、頼りがいのあるやつがいた。

同じ北海に浮かぶ、あいつ。


「…イギリス…」

デンマークやオランダ、スペインはアルレシアを攻めるために海軍を出すことを渋ってくれているが、それもいつまでもつか。


「…もう、戦わねえって決めたけど…そうも言ってらんないな」

これ以上、国民を苦しめるわけにはいかない。

アルレシアは重い腰を上げた。


1808年4月。


それは、突然のことだった。

イギリスへ向かおうと首都の外港に着いたとき、フランス軍が現れたのだ。

アルレシアとイギリスが手を組もうとしていたことが漏洩していたらしい。

「くそっ、なんで、」

まだ復興の済んでいない外港へ、海上の軍艦から砲撃が浴びせられる。

木造の掘っ建て小屋が次々に吹き飛び、人々が悲鳴を上げながら走る。

アルレシアは人々を庇いながら、駐屯していたわずかな軍隊に応戦を支持した。

しかし、陸上から粗末な大砲を撃っても、立派な軍隊には当たらない。

あっという間に陸上の大砲設備も破壊されてしまった。

街には煙と埃が漂い、爆音が絶え間無く響く。

悲鳴と建物が崩壊する音が混ざる。

「誰か!」

女性のその声を聞きアルレシアが駆け付けると、瓦礫に足を挟まれ動けない女性と、その娘らしい幼い少女がいた。

少女は泣きながら助けを求める。

「おかあさんをたすけて!」

「アルレシア様…!お願いです、この子を連れて逃げて下さい!」

アルレシアに少女は抱き着き叫ぶが、母親は必死に少女を連れて行くよう頼む。

瓦礫は一人ではどうしようもなさそうだ。

辺りにはもう人はいない。

「ちっ…どっちも助けらんねえのか…!」

少女を連れて逃げることは簡単だ。

だが、アルレシアの心には少女からの離別を拒否する悲しみが、母親の生きたいという願望が、ひしひしと伝わって来ていた。



ふと、立ち込める煙が晴れる。

その向こう、海上の軍隊の大砲が、こちらを向いていた。

(まずいっ…!)

直撃だ。

早く決断しなければならない。

そうは言っても、どうしようもなかった。

(くそ、くそ、くそっ!)

少女を抱えて逃げるしか、ない。

アルレシアは少女に手を伸ばす。


しかし、無常にも軍艦の大砲が放たれ始めた。

だんだんアルレシアたちに向く大砲へと順番が近付く。

(間に合わない、)

そう直感した、その時だった。



新たな砲撃音が響き、同時に、アルレシアたちへ砲弾を放つ軍艦が爆発した。

「は…?」

中の砲弾に引火し、火災を起こす軍艦。

砲弾が放たれた方を見ると、空にユニオン・ジャックがはためく。


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