Modern: Revolution for Revolution
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「イギリス…?」
「大丈夫ですか!」
アルレシアが呟くと同時に、一人のイギリス兵が駆けて来た。
まだ若く、20代前半くらいだろう。
「どうして、」
「アルレシア様の方へフランスが向かっていること、アルレシア様が我が国に歩み寄ろうとしていることを聞いて、すぐに向かったのです。イギリスさんもすぐいらっしゃいますよ」
「そう、か…でも君はなんで俺を知ってるんだ…?それに、わざわざ一人で市街地まで」
兵士はふ、と笑う。
「命の恩人、と言いますか…あなたがいなければ、私も私の家族の命もなかったので」
その言葉に、アルレシアは眉をひそめた。
「なんかした覚えないぞ」
「私の曾祖父が、あなたに命を救われているんです。あの、ロンドン大火のときに」
そこでアルレシアは全て合点した。
イギリス領だった頃、ロンドン大火に巻き込まれ、そこで一人の少年を助けた。
結局イギリスに助けてもらいはしたのだが。
その少年の、曾孫だという。
「そうなのか!…まさか、それでこうして来てくれたのか?」
「はい。イギリス兵ではありますが、あなたのお役に立つことが家訓なんです」
「そんな大袈裟な…でも、ありがとう。助かったし、嬉しい」
笑いながら言えば、兵士は顔を赤く染めた。
「い、いえ!それより、この方をお助けするのですよね?」
いまだ瓦礫に足を挟まれている母親に、アルレシアは頷く。
「手伝ってもらえるか?」
「Yes,my pleasure(喜んで)」
兵士と二人で瓦礫を持ち上げ、母親は自力で這い出る。
「怪我はしてないか?」
「擦り傷だけです…本当にありがとうございました」
「おかあさん!」
少女を抱きしめ、母親は頭を下げる。
「いや…それより、一応早く安全な場所へ」
「はい」
二人は街から脱出すべく、なるべく早く歩き出した。
「君の名前を聞いてもいいか?」
「ハワード・グリーンフィールドです」
「ハワードか…本当に助かった」
「いえ。…海上の戦いはイギリス側で勝利したようです。イギリスさんのところへご案内しましょうか?」
「頼む」
「はい」
アルレシアはハワードの後に続いて、煙の上がる街を海へ向かった。
イギリスは海上のイギリス軍艦の一つにいた。
案内を終えハワードは去り、アルレシアはイギリスと二人きりになる。
「…久しぶり、だな」
「あぁ…」
どこか気まずいまま、二人は目線も合わない。
「ありがとう、助けてくれて」
「いや」
会話も続かない。
「…そういや、あのハワードってやつ、ロンドン大火のときの少年の曾孫なんだな」
「そうらしいな」
「……」
二人の間には、昔の気軽さがない。
ただ、距離を掴みかねる不器用な男が二人、同じ空間にいるだけだった。
「…イギリス…」
「…なんだ」
「…、」
どうする、何を言う。
頭の中が混乱する。
次第に、熱を無視して屋敷を出て来たことが今になって現れてきた。
視界がぐらつき、思考がぼやける。
「おい、アルレシア、大丈夫か、おい!」
イギリスの声をぼんやり聞きながら、アルレシアは足から力が抜けた。
倒れる、そう予想したが、イギリスがアルレシアを支えた。
イギリスの肩に頭を預ける形になる。
「すげえ熱…なんでそんな…」
「…超…景気わりぃ…」
「…俺のせいだよな」
イギリスはアルレシアを抱きしめる。
「ごめんな…」
「俺も…ごめん…仲直り、しよ?」
何とか顔を上げ、体重をイギリスに預けながらもその目線を合わせた。
「あぁ。フランスの野郎に、お前を渡したりしねえ」
「ん…良かった、イギリスと…仲直りでき、て…」
アルレシアからかけられる体重が一気に増えたかと思うと、アルレシアは気を失った。
今回の外港襲撃でさらに被害を受け、もうアルレシアは限界だった。
「おやすみ…」
イギリスはアルレシアをベッドに寝かせ、まずアルレシアを回復させるべく動き出した。