Modern: Revolution for Revolution
−開国しねま
イギリスの助けで産業革命を起こして復興が進むアルレシアは、ウィーン体制で落ち着いたのを見計らって、新たに造船した船で本業である貿易を再開した。
しかし今回は初の試みである、アジア貿易だ。
アルレシアの知る限り、ローマ帝国時代にはすでに中国は世界の最先進国だった(長らく全世界のGDPの三分の一を占めていたとされる)。
今も、中国と日本との間で行われる貿易や、日本列島での檜垣・樽廻船による貿易は全世界の総貿易量の五分の一を占める。
ポルトガルやオランダ、イギリスはそこへの参入を目指し、それぞれ占領した東南アジアから日本を目指し、アタックの末に日本は引きこもったそうだ。
特にイギリスとオランダの小競り合いは加熱し、ナポレオンにオランダが占領されるとイギリスはその植民地を奪っていった。
日本との貿易は、ヨーロッパではオランダだけなものの、全体的にイギリスが優勢だ。
アルレシアの目標は、中国・日本との貿易ルートの確立。
中国は自分で行くとして、日本はオランダの手を借りないといけない。
そこで、アルレシアはオランダと日本へ向かうことにした。
イギリスの助けで造った船でオランダと日本へ行くという暴挙も、イギリスは「いや…もうお前はその感じがアイデンティティーだからいいよ…」と許してくれた。
そうして1817年、アルレシアはオランダと日本の家にやって来た。
***
「日本、俺や」
「他の人の気配…どちら様です?」
ふすま越しにも関わらず、アルレシアの気配を察した日本に驚く。
「俺の大事なやつや」
「…、」
こっ恥ずかしいことを、とアルレシアは言いたいのを我慢するが、ふすまの向こうからも「惚気は輸入しません」と恥じらう声がした。
「ばか…悪い、日本。オランダの隣に住んでるアルレシアだ。大昔に手紙は出したことあるんだが」
「あぁ…確かに中国さんを経由して頂いた気がします。中へどうぞ」
日本は自らふすまを開き、二人を招き入れる。
「ありがとな」
「いえ」
「その調子で開国しねま」
「それは嫌です」
暗く殺風景な部屋。
年季入りの引きこもりだ。
二人は畳にあぐらをかいて座り、日本は正座した。
お茶を出してもらい、日本と向き合う。
「それで…アルレシアさんは今日はどうされたんです?」
「あー…俺と貿易して欲しい、って言いに来たんだが…ずいぶんしっかり引きこもりしてんな」
「それは難しいお話ですね…欧州の方とはオランダさんだけで結構なんですが」
「なに、お前らそういう関係なのか?悪いな不粋な真似して」
「大事な人と紹介されておきながらのこの発言…苦労されてるんですね」
「分かるか」
何やら悟りを開く日本とオランダをますます訝しげに見るアルレシア。
オランダはため息をついて「ちゃうわボケ」と悪態をついた。
「ボケとはなんだ」
「ボケはボケやざ。せっかく人が中継してやろうと思っとるんに」
「え、ほんとか?」
「バタヴィアかアンボイナか、そこら辺にお前が輸出して俺が輸入、そんでそれを俺が日本に輸出するんや。日本もそれならええやろ」
「まぁ…はい」
「やった、ありがとオランダ」
莫大な利益を予感した嬉しさで満面の笑顔になるアルレシアの頭を、オランダは表情を緩めながら撫でた。
(あんな可憐な笑顔が金によるものなんて…オランダさんは気付いてるんでしょうか、いいえ、恋は盲目といいますから…)
怪奇現象を見るように、日本は二人を遠い目で眺めた。