Modern: Revolution for Revolution
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アルレシアは日本でオランダと別れ、今度は中国へ向かった。
実は、広州でイギリスと待ち合わせしている。
中国貿易はイギリスが優勢のためだ。
とは言っても中国は強大で、去年にイギリス外交官が皇帝に謁見できず帰国している。
通商とは呼べないレベルでしかないわけだ。
広州に着いて、アルレシアはイギリスと落ち合う。
「お前ほんとに中国と仲いいんだろうな」
「仲いいってほどじゃないな」
「騙したな…?」
「ちげえよ!てか俺のおかげで船造りながらよくそこまで態度でかくなれるな!」
アルレシアはそれを聞いて、急に眉を下げてイギリスを見上げ、手を掴んで自分の頬に当てた。
「イギリスがいなかったら、俺……お前がいて良かった」
その手に擦り寄るアルレシアに、イギリスは分かっていながらも「そ、そうか」と頷いてしまった。
演技と知りつつ、心臓と下半身は簡単に反応しているのを情けなく思う。
イギリスが頷いたのを見て、アルレシアは呆気なく殊勝な態度を翻しすたすたと歩き出した。
「行くぞ」
「もうほんとやだ…」
ついうなだれると、アルレシアの足が止まる。
「…嫌いになった?」
今度は、本当に不安そうにアルレシアが聞いてきた。
目が揺れて、声も細い。
時折見せられるこういう弱いところを確認する度、イギリスは愛しさが沸き上がる。
「…んなわけねえだろ。俺がお前を嫌いになる日なんざ、歴史上一瞬たりともないだろうな」
そう言ってイギリスはアルレシアの腕を掴み歩き出す。
アルレシアが抵抗しないのが、今本当に不安に思っていたことの現れだ。
「…イギリス、今度何かご馳走してやるよ」
「楽しみにしてる」
***
イギリスの助けで、アルレシアは中国と会えることになった。
中国人は嫌そうにこちらを見ていたが、何とかイギリスの説得で応じてくれた形だ。
イギリスは別の街で用事があるということで、アルレシアは一人で中国と面会する。
「誰あるかー」
「アルレシアだ」
扉をノックして出て来た中国に名前を告げる。
中国はこちらをぱちぱちと瞬きをして見てから、「珍しいこともあるもんある…中に入るよろし」と入れてくれた。
やはりヨーロッパの中国趣味の調度品と違い、本場は鮮やかで異国風だ。
「久しぶりだな」
「ほんとある。1600年振りくらいあるか?」
「そうだな、あの黄巾の乱の後くらい以来だな」
当時の中国人口の三分の一、世界人口の五分の一が亡くなった事件。
突然それだけの数が減り、何事かと見に行ったとき以来だ。
「大秦國(ローマ帝国)がいた頃あるね、懐かしいある」
「年寄りくせえぞ」
「うるせーある!」
くすくすとアルレシアは笑い、それから表情を引き締めた。
「それで、だ。本題なんだけど」
「…お前も他の欧州のやつらみたいに無理なこと言うあるか」
「いや、どちらかが不利な貿易の形は、俺の家の経済構造に適してない。だからあくまで対等な通商をお願いしたい」
アルレシアの家では、第1次産業と農民の保護のため、貿易商人には特別課税を行っている。
産業革命で資本主義が育ち始め、工業化が進む中、農民と農業は衰退の危機にある。
産業革命は国の復興に必要なため推進したいが、同時に農業を保護するのは難しい。
そこで、これまでの主要産業であった中継貿易の分野で、税を高くし農業との格差を是正し、これ以上の農業の没落と格差拡大を食い止めているのだ。
もし他のヨーロッパの国がやっているような不平等な貿易であまりに利益を上げてしまうと、課税では格差の拡大を止められなくなる。
そのため、あえて対等な貿易にすることで利益を抑え、課税で農業と同格の産業に位置づけている。
それを説明したのだが中国は、「よく分かんねーあるけど欧州との貿易はこれ以上いらないある」とばっさり切った。
「え、俺の説明の努力」
「んー、仕方ないあるね、じゃあ少しならやってやるあるよ」
「…お前は昔からそういうやつだったな、」
呆れたように言うが、人のことを言えないアルレシアである。
そうして、アルレシアは中国、日本との一部間接的な貿易ルートを得た。
対等な関係でも莫大な利益が生まれ、貿易商人への課税により得られる金額も増える。
その金で復興と工業産業育成、軍備を進め、アルレシアは1820年頃までに再びヨーロッパの大国に返り咲いた。
そしてその1820年より、ウィーン体制は崩壊を始め、抑え切れない民衆の力が世界を変えようとしていた。