Contemporary I: devil’s warfare
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四人は騒ぎながら(主にフランスが)、ビルの高層部分、会議場のある階までやって来た。
この辺りまで来ると国の数が少ない。
どうやらビルのどこかでみんな時間を潰しているようだ。
とりあえず会議場に入ってしまおうと、四人が廊下を曲がったときだった。
「あ、ドイツ…」
先頭のフランスがどこか気まずそうに呟いた。
フランスの陰から出て廊下を見ると、ドイツが日本と話をしていた。
「こんにちは、お早いですね」
いち早く気付いた日本がこちらに挨拶をする。
ドイツもこちらを見て挨拶をしようとして、固まった。
日本も普段見かけないアルレシアに気付き、そして全て察した。
日本の白い顔がさらに白くなったように見える。
「久しぶりだな、日本。相変わらず早いな。オランダも一緒に来てくれてありがとう。俺トイレ行ってくる」
矢継ぎ早に言い、アルレシアは背を向けて歩きだそうとした。
「アルレシア…、」
ドイツの珍しく細い声。
思わずアルレシアの肩が跳ねたが、無視して立ち去った。
アルレシアがいなくなった廊下には沈黙が下りる。
「えと、アルレシアは今日は上司に言われて来たんだって。珍しいこともあるもんだねー、はは」
フランスが何とかしようと試みるが、空回りしている。
「…しばらく、放っといた方がええで」
スペインが静かに言った。
意外そうに他の面々もスペインを見る。
「俺、ロマ探してくるわ」
スペインは明るい声に戻してから鼻歌を歌いながら廊下を歩き去る。
「フランス、行くで」
オランダもフランスを連れて会議場へ入った。
日本とドイツだけになると、ドイツは軽く息をついた。
「…ドイツさん、」
「…すまない日本、話の続きをしようか」
「…はい」
欧米事情は複雑怪奇だと思うのは、何度目になるだろうか、と日本は内心ため息を吐いた。
アルレシアはひとりになると、廊下の窓までやって来た。
ニューヨークの町並みが眼下に広がり、暖かい太陽の光に心が落ち着く。
「はぁ…」
さっそくドイツと出くわしてしまった。
置いてきたフランスたちは気まずくなってしまっただろうか。
悪いことをしたなぁともう一度ため息をする。
「ヴェー、どうしたのため息なんて」
「うわっ、」
突然後ろから声がかかった。
振り返れば、イタリアが心配そうにこちらを見ていた。
「顔色悪いよー?」
「まぁ、な…ロマーノはどうした?」
「スペイン兄ちゃんに連れてかれちゃったー。それより、アルレシア兄ちゃん具合悪いの?」
はぐらかされてくれなかったようだ。
観念し、アルレシアは素直に話すことにした。
「…ドイツに会ったんだ」
人の心には敏感なイタリアだ、それだけで状況を察したようだ。
「そっかぁ…昔はあんなに仲良かったのにね」
「昔は、な」
「あれ、そういえば久しぶりだねー、世界会議」
ゆるゆると続く会話に苦笑がもれる。
「そうだな。上司に言われて来たんだ」
「ヴェッヴェッ、嬉しいな、アルレシア兄ちゃんもいるの」
「俺もそう言ってもらえて嬉しいよ。そろそろ行こうか」
まっすぐなイタリアの言動に、アルレシアは優しい笑みを浮かべる。
「ヴェー」
「わっ」
イタリアはそれを見て嬉しくなり、たまらずアルレシアの背中に飛び付いた。
アルレシアはよろけながらも振り払ったりせず、そのまま会議場へ向かった。
***
広い会議場には輪を描いて机と椅子が並び、机には国の名前が書かれ場所が指定されていた。
アルレシアはオランダとデンマークの間だ。
少し離れたところにドイツがいる。
その向こうに主催のアメリカと、フランス、イギリスが並ぶ。
「アルレシアじゃねーか、久しぶりだな」
イギリスは着席する前にアルレシアに声をかけた。
「久しぶり。今日も凛々しいぞ」
「そ、そうか?」
「眉毛が」
「おい!」
冗談だよ、とアルレシアが笑う。
「髭野郎から話は聞いた。今日は普段話せないやつとも話すといいぜ」
「あぁ、ありがとう」
開始時間が迫り、そこでイギリスは自席に着いた。