Contemporary I: devil’s warfare
−回顧
いったい、どれくらいの規模の編成なのか。
途切れることなく飛来する爆撃機は、たくさんの爆弾を落として行く。
パニックに陥った城下、さらに向こうには炎の壁が夜空を舐める。
そんな光景を四角く切り取るバルコニーの窓、その手前に立つ二人の男性。
アルレシアは手を伸ばす。
待って、そう声を出そうとしたが出ない。
二人は微笑む。
景色が遠ざかる、迫る炎の壁、揺れる床。
―――待って、
――――待ってくれ、
―――――置いていかないで、
扉が閉じた。
***
「―――はっ!、はぁ、はぁ、」
目を覚ますと、見慣れはしたが久しぶりに見た天井。
息は上がり、汗で寝巻もぐっしょり濡れている。
「…また、この夢か、」
呟き、呆然と窓を見る。
快晴の青空だ。
「起きたんか」
「…オランダ、」
そうだ、オランダの家に泊まっていたんだ。
アルレシアは思い出し、体を起こす。
「ひどい汗やな、顔色も悪い」
「…ちょっと、な」
「あの夢やろ」
「……やっぱバレるか」
「当たり前やざ」
オランダはベッドに腰掛け、汗で額に張り付いた前髪を掻き分ける。
「ドイツと話したから、だよなぁ…」
「…今はええわ。シャワーしねま」
「ん、ありがと」
オランダに促され、シャワーを浴びることにした。
あの世界会議の騒ぎのあと、会議室には戻らず、二人はオランダの家に行った。
よくアルレシアはオランダの家に泊まるが、前回から時間は経っている。
オランダは有無を言わせずアルレシアを泊まらせたが、それは世界会議での一件を案じてだろう。
実際、おかげであの夢のショックはかなり和らいだ。
シャワーの蛇口を捻りながら、アルレシアは壁に額をつける。
壁の無機質な冷たさが伝わる。
「オランダには…世話になってばっかだな…」
温かいシャワーが体を伝い、壁の冷たさは薄れていく。
とりあえず顔色は回復させなければ、余計な心配をかけると、アルレシアは顔面からシャワーを浴びた。
シャワーを終えリビングに戻ると、オランダがちょうど携帯の通話を終えたところだった。
「仕事の話?」
「いや、フランスから心配の連絡やった」
「…ちゃんと元気だっつったよな?」
「ありのままを話したで」
「……」
アルレシアは今日の展開を予想してげんなりする。
「…あいつ、いや、あいつら、来るぞ」
「……すまん」
そこへ、予想より早過ぎるインターホンが鳴った。
「アルレシアー!大丈夫ー!?」
「元気の出るおまじないしに来たでー!」
「スコーン作ってきたぞー!」
「それは兵器だろう?俺の家のケーキの方がいいんだぞ!」
扉の向こう、なんなら下の階であるはずの玄関から、騒々しい声が聞こえる。
「…早過ぎるやろ」
「…軽くホラーだな」
二人は顔を引き攣らせつつ、玄関へ向かった。
5分後、リビングにはフランス、スペイン、イギリス、アメリカがソファーに座り、机にはワイン、トマト、ダークマター、蛍光色の何かが置かれた。
アルレシアは必死に大丈夫だと伝えたが、彼らは信用せず、呑んで忘れようと聞かない。
「つまみになるのトマトしかないじゃない…」
フランスは呆れたようにワインを開ける。
「スコーンに文句あんのかこら」
「ケーキがあるだろ?」
「生物兵器の間違いやざ」
「「なんだと!?」」
オランダも混ざり騒ぎは拡大する。
すると、さらにインターホンが鳴り、オランダに代わりアルレシアが玄関へ向かう。
「お?アルレじゃねえか」
「具合悪ぐねえか」
やって来たのはデンマークとノルウェーだ。
「あー…大丈夫なんだけど、フランスたちも心配して来てくれて、んで、騒いでる」
「!俺も混ざってくっぺ!」
デンマークは騒ぎと聞いてリビングへ急ぐ。
「何しに来たこの」
ノルウェーはそう呟いてから、アルレシアに微笑みかける。
「大事ねえなら良かった」
「ありがとな。全然大丈夫だから」
「ん。じゃあ、ほら」
「…ん?」
ノルウェーは腕を広げる。
「や、何?」
「胸貸してやっから来い」
「大丈夫だと言った直後に…?」
「遠慮すんでね」