Contemporary I: devil’s warfare
−WWI
オーストリアはイライラを募らせていた。
「ヴェー、オーストリアさん、南チロルとか返してよー」
「返すもなにも私のものです」
「バルカン半島はスラヴ民族だけ。ドイツ人はいらないよ」
「ロシアが決めることではありません」
イタリア、ロシアからの要求や圧力に、事が上手くいかないことを疎ましく感じていた。
「オーストリアさん、ルーマニア殴って来ましょうか」
「…お待ちなさい」
ハンガリーは血気盛んで、今にも半島へ突っ込みそうだ。
私情も垣間見えるが。
一方イタリアは、オーストリアに要求を拒否され、どうしようか悩む。
「アルレシア兄ちゃんはフランス兄ちゃんに頼るなって言ってたけど…アルレシア兄ちゃん中立だからなぁ…」
やっぱり、フランス兄ちゃんに頼ろう、そうつぶやいてイタリアは電話を取る。
「フランス兄ちゃん、」
『んー?なんだい?』
「…オーストリアさんが、南チロルとか返してくれない」
『あいつはそういうやつさ。どう?お兄さんたち側につかない?』
「うーん…考えとく」
その電話を傍受する銀髪。
「おいヴェスト、イタリアちゃんフランス側につきそうだぞ」
「その可能性は視野に入れていた。オーストリアと近付けば問題ない」
そうして、イタリアは実質宙ぶらりんの状態となった。
1908年、トルコで革命が発生。
ブルガリアが独立した。
「うあー!やっと自由だわー!」
「え、お前独立したの?」
「…なんだよ、ルーマニア。文句あんのか」
「いや…この大変な時期によくやるなあってな」
「いつまでもトルコの下にいたらどうなるか分かんねえからな」
ブルガリアの言う通り、その直後、オーストリアはボスニア・ヘルツェゴヴィナを併合した。
翌年にはブルガリアの独立も承認される。
それを見て不愉快なのがロシアだ。
「オーストリア君は喧嘩売ってるのかな…まぁ、セルビア君も怒ってるし、ブルガリア君も独立したし、そろそろかな」
ロシアは1912年、ルーマニアやブルガリアなどバルカン4国をバルカン同盟として結束させた。
「僕と友達になるよねー?」
「…っ、もちろんです!」
バルカン同盟はトルコに戦争をしかけ、イスタンブール周辺を除くバルカン半島全域からトルコ領を廃した。
その跡地はアルバニアが独立した他、ギリシャも含め各国で分割。
すると、ブルガリアに不満が噴出した。
「つかさ、ブルガリアの取り分多くね?」
「ルーマニアは取り分ないからだろ。そんなことねえわ」
「絶対あるって。不公平だろ」
そうして1913年、ブルガリアは周りのバルカン諸国とトルコからフルボッコにされた。
領土は縮小され、さらに分割される。
「ルーマニアもセルビアも嫌いだわ…いってえ…」
「おうおう、ずいぶんなやられっぷりだなー!」
そこへ、プロイセンが現れる。
「…なんだよ」
「いや?でもあいつら憎いだろ?俺らにとってもロシアやセルビアは敵なんだよなー」
「…そういうことかよ」
「理解が早くて助かるぜー」
「いいぜ、乗った」
「待てやぃ、俺も乗るぜぃ!イギリスたちがむかつくんでな!」
そして、ブルガリアとトルコはドイツ側についたのだった。
不穏な空気が濃密になる中、アルレシアはドイツを警戒せざるを得なくなっていた。
海上覇権を巡るイギリスとドイツの対立に巻き込まれる危険があったからだ。
イギリスは安全保障のため、対岸の低地国、つまりオランダやベルギーの中立を重視しており、アルレシアもそれは同じだった。
そのためイギリス寄りの展開になることを予想し、周辺中立国の中立侵犯があった場合は、それを行った相手と敵対することを発表、ドイツを牽制した。
それを受け、ドイツはアルレシアとの開戦を避けるための道を模索した。
1914年5月、ドイツはアルレシアの家を訪れる。
「よく来たな」
「いきなりすまない」
ドイツを招き入れ、リビングに通す。
紅茶と菓子を出して、向かい合うようにソファーに座った。
「話って?」
「…単刀直入に言う。俺たちと中央同盟を組まないか」
中央同盟は三国同盟の別称だ。
トルコ、ブルガリア、オーストリア=ハンガリー、ドイツとヨーロッパの真ん中を横切る同盟だからだろう。
アルレシアもその中央ライン上にある。
「俺はどこの侵略の危機にも晒されてないし、どっかを侵略する気もない」
「知っている。だが、俺たちはアルレシアと戦いたくない」
「…お前さては、中立侵犯を考えてるな?」
「…それは言えない」
現在フランスとドイツの国境は頑強に警備され、突破は難しい。
だが中立国ベルギーを通れば、警備ラインはないしパリも近い。
ドイツがベルギーを侵犯すれば、アルレシアはドイツに宣戦するつもりだ。
「…なるほど、俺がイギリスと組めば北海を制圧される上、俺がドイツ本土に上陸できるから嫌なんだな?」
そう、イギリスはドイツ本土まで遠いが、アルレシアはすぐ近く、敵に回すと厄介だった。
「…あぁ、その通りだ。それなら…アルレシアがイギリスと組まないなら、俺はお前と戦わない。これでどうだ?」