冷たい新婚生活


「これより、シャルル、ブルゴーニュ公、ブラバント公、リンブルフ公、下ロタリンギア公、ルクセンブルク公、ナミュール辺境伯、ブルゴーニュ伯、アルトワ伯、シャロレー伯、フランドル伯、ホラント伯、エノー伯、ゼーラント伯と、アルレシア王女マリアの婚姻の儀を執り行う」


なげえ、アルレシアはげんなりとしながら上司の結婚式を見ていた。



***


1508年12月。
ブルゴーニュ公シャルルとアルレシア王女マリアが結婚した。これにより、シャルルはアルレシア王位を継承した。

公国と王国ではもちろん王国であるアルレシアの方が格上だ。
しかし、宗教的バックグラウンドを受けていないアルレシア王位は、キリスト教世界において名目上は格下になる。事実上、アルレシア王位はその経済力から最高位だが。

さらに、いくらアルレシア王位はアルレシア王国で最高位とはいえ、ネーデルラントにいるシャルルに実権はない。アルレシアの中央集権は、=絶対王政ではないからだ。
正確には、アルレシアの権力が集中しているのは王府である。王府は王宮にあり、つまり実権はレガリスタードにある。

そのため、アルレシア王位をシャルルが継ごうともその王権は名目上にすぎず、政治はレガリスタード王宮が行う。

単なる形式的なものでしかないわけだ。

とはいっても、王女はネーデルラントでシャルルと暮らすことになるわけだし、アルレシアも一緒にそこで暮らすことになっている。

オランダ、ベルギー、ルクセンブルクと同じ家にいることになる。

どんくらいいることになるだろう、と思いながら、アルレシアはベルギー北部、ガンの屋敷に向かった。



「アルレ兄ちゃんと同じ家に住めるなんてなぁ!」

屋敷に着くと、ベルギーが真っ先に出迎えてくれた。そして、喜び溢れるハグをかまされた。


「ぐっ…ベルギー、きつい…」

「あっ、ごめんなぁ!嬉しかってん、つい」

「いいけど…大きくなったな」


ハグされて苦しくなるくらいには成長したことが分かり、思わずベルギーの頭を撫でる。


「〜〜〜!あ、案内、案内したるね!」


すると、ベルギーは顔を赤くして離れてしまった。さすがに、幼子相手にするような扱いは嫌か。少し反省しつつ、ベルギーに促されるまま屋敷を進む。


「あ、でも、アルレ兄ちゃんすぐお兄ちゃん家移るんやって」


思い出したように言うベルギー、アルレシアは思い当たる節がなく首を傾げた。


「ここじゃねえのか?」

「うん、上司の人が言うてはったんやけど、お兄ちゃんの家の人がアルレ兄ちゃん家の政治するんやって」

「…なるほど?」


完全に初耳だ。
ネーデルラント君主の思惑が透けて見える。

王女と王位を人質に、王府を乗っ取るつもりだ。王位が名前だけなのをいいことに、実務面から王府への介入を図るのだろう。それは国政というよりは、経済的な面だ。オランダの都市連合の代表者が、経済的にアルレシアに介入することでネーデルラントに有利に動くようにする。

別に搾取されるわけでもない、それくらいならまあ目をつぶろう。
アルレシアは小さく息をついてから、自分の境遇をおもった。


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