三十年戦争: ブレダ要塞攻防戦


1624年、プファルツでの戦後処理を終えたスペインはすぐに北上し、オランダ国境のブレダを包囲した。
ブレダは南北1.5キロ、東西2キロほどのひし形をした都市で、街の西部を南北に流れる川の水から引いた濠と外壁が街を囲み、外壁はギザギザに造られている。また、五方向に向かって大きく突き出た部分があり、まさに要塞だった。
市内には97メートルの高さを誇る聖母教会の他、住宅地や貴族の邸宅が東部から中央部まで広がり、西には畑が広がる。

ブレダは欧州最強とも称されるほどの堅牢な要塞都市であり、その頑強さからVale of tempe、テンペの谷と言われた。テンペの谷はギリシャ神話におけるアポロゆかりの地である。

スペインは、すでにオランダには経済的に打撃を与えることが有効であることは分かっていたが、敢えてこの都市を落とすことこそがオランダ兵の士気を喪失させられると考えていた。
また、ベルギーへの侵攻が容易な交通の要衝でもあり、ブレダを占領することはオランダへの圧迫になった。

8月28日、オランダとアルレシア、そして同盟しているイギリスはブレダにてスペインに包囲される。
ここから、なんと10か月にも及ぶ包囲戦が幕を開ける。


***



1568年の独立戦争開始以来、ブレダは度々スペインによって包囲され、これが三次となった。
オランダにとってここに立て籠るのは慣れたもので、十分な食糧、武器、装備を蓄えていた。市内には7000人のオランダ兵と1000人のアルレシア兵、オランダと同じく7000人のイギリス兵がおり、市民や周辺農民とオランダ兵の妻たちを含め13000人が1200軒の建物で生活した。
壁の上や外、付近の別の城、川沿いの堤防など市外に常駐した兵士も多かったとはいえ、ブレダ市内外には28000人がいたことになる。

対してスペイン軍は18000人。軍人だけで構成されているため、兵力はオランダ側に勝っていた。



窮屈で慌ただしい市内、市庁舎の軍本部にて、オランダ、アルレシア、イギリスは顔を付き合わせた。

「本当にいいのかよ?アルレシア」

「無理はせんでええ」


心配そうな顔をしているのはオランダとイギリスだ。それを向けられているアルレシアは涼しい顔をしていた。


「別に大丈夫。浸水地対策はしてあるし、装備もギリギリまでスペイン領だったからそれなりに最新だし」


そう、この戦いにおいてアルレシア軍は主に市外での戦いをすることになっていた。
市内には1000人だけしか置いていないが、ブレダ南方に5000人を配置させている。南方は川を決壊させて水浸しにすることで敵を動けなくすることができるため、敵を南方で迎え撃って水浸しの中に留まらせ、なるべく多く仕留めるつもりだ。

その対策はしてあるし、欧州最強と言われる最新火縄銃を備えたスペイン軍と遜色ない重火器も装備している。

「まあ見とけって」

久しぶりの戦争にテンションが上がっているようだ。13世紀ぶりだな、とイギリスは思いながら苦笑した。





ついにスペイン軍が侵攻してきた。
先頭に立つのはスペイン、そして後ろにはベルギーとルクセンブルクもいる。実は、今回のスペイン軍の36%は南ネーデルラントから徴兵している。スペイン人はたった18%だ。
アルレシア軍の先頭にもアルレシアが立ち、両者はブレダの南方5キロのところで対峙した。

ブレダの城壁は遥か後ろに薄く見えているだけである。



「久しぶりやんな、アルレ」

「そうだな、スペイン、ベルギー、ルクセン」

いつも通り爽やかに笑うスペインに、いつも通り返す。
ベルギーとルクセンブルクは顔が曇っていた。まさか、戦うことになるとは思っていなかったのだろう。


「アルレ兄ちゃん…ほんまに戦かわなあかんの…」

「今からでも、こちら側に戻りませんか、アルレ兄さん」


2人の言葉は嬉しいし、悲しくもある。アルレシアとて戦わないで済むなら戦いたくない。だが、戦うなら全力だ。


「悪いな、2人とも。嫌なら下がっててくれ。とりあえず…スペインとやる」

「せやな、俺も2人に下がっててもらお思っとったとこや」


スペインは片手をベルギーたちの前に向けた。2人は顔を見合わせ、渋々下がる。
背後の兵士たちは、各々武器を構えた。同時にアルレシアは剣を抜いた。


「スペイン、初めてのサシなんだ。まさか、銃なんて無粋なもん使わねえよな?」

「アルレに銃弾当たる気せえへんもん、弾の無駄や。使わへん」


スペインもそう言いながら剣を構えた。この時代、火縄銃は装填に時間がかかり接近戦には向かなかった。


「行くで」


スペインが右手を上げて降り下ろした直後、大勢の兵士たちが走り始めた。
戦いの始まりである。


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