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12世紀、高まる拡張運動のひとつが、キリスト教十字軍に代表される布教活動だった。
アルレシアはこの時、西欧で唯一非キリスト教国であり、多くの伝道師が押し寄せては挫折していた。
国力の大きさから十字軍を向けることはできず、民間の十字軍は上陸する前に北海の藻屑となった。
そんなアルレシアに業を煮やしていたのが、十字軍に随行するうちに強くなったドイツ騎士団、プロイセンだ。
1191年にローマ教皇に公認され、ついで領地を得る。
そうして強くなったプロイセンは、なんとアルレシアの首都でアルレシアを襲うという暴挙にでたのだ。
アルレシアはプロイセンに驚きつつも秒殺、捩じ伏せて強引な布教を禁じた。
実はプロイセンのトラウマだそうだ。
そんな目に遭わせた話は瞬く間に西欧に広がり、人々を震撼させた。
最強の騎士団が負けた、それだけでアルレシアへのイメージは猛々しい化け物のようなものになっていたらしい。
諦めきれないフランスたちは、なんとかして改宗させようと試みたが、悉く失敗。
ちなみに最後にチャレンジしたのは17世紀。
ゴシック様式の教会にフランスやイギリス、プロイセン、オランダに連れられ、荘厳な教会を見せて感動のあまり改宗させよう作戦に付き合わされたのだ。
ゴシック様式は初めてステンドグラスが用いられ、その美しさに実際改宗者が多く出ている。
しかしアルレシアは建築様式を取り入れることしか頭になく、あまりステンドグラスを意識しなかった。
さらには、帽子を落とした婦人に帽子を渡す際に腰を折って軽く微笑み、その姿にステンドグラスの光が当たって「受胎告知をするガブリエルのようだ」とフランスたちの方がやられる結果となった。
アルレシアを天使と呼ぶデンマークにい言えて妙と感じた西欧である。
「ほんっと、アルレシアには叶わないよねー」
「プーちゃんも若気の至りってやっちゃなぁ」
プロイセンの悪友二人はしみじみとしている。
「俺、プロイセンがそんなことしてたなんて知らなかったよー」
そう言うイタリアに微妙な顔をしたのはドイツだ。
あまり聞かせたくなかった身内の恥である。
「彼は今も昔もお馬鹿さんですからね…」
「なんっも変わらないんだから!」
オーストリアとハンガリーはプロイセンに頭を悩まされ続けたからか、呆れ顔だ。
「教会連れでって失敗した話もみっだぐねえな!」
快活に笑うデンマーク、それをつつくノルウェーは天使と呼称し始めた二人だ。
「あんこも突撃して返り討ちにあっだべこの。人のごどさ言えね」
「ちげえねえ!」
「お前らも変わんねえよな」
出会ったときから同じ応酬を繰り返す二人に、アルレシアは呆れながらも嬉しく思う。
変わらないことがあるのは、安心するものだ。
「アルレシアさん、そろそろ13世紀の話してもらえませんか?自分見に行けなかったんで」
そこへいたずらっぽく声をかけたのはルクセンブルクだ。
もじゃっとした髪に、前髪で左目が隠れている。
それでも不潔な感じがしないのがすごい。
「あの時お前は後継者とか領土とかで大変だったもんな」
ルクセンブルクも昔は活発で、常に領土を広げようと画策していた。
13世紀はそのピークである。
「そうなんですよ。だから、ちゃんと聞いてみたくて」
「あの時のアルレシアの格好よさは見ないと分からんみたいなとこあるしー」
当事者のポーランドが言う通り、言葉でどう説明したものか。
考えながらも、アルレシアは口を開く。