古い友人
1660年、クロムウェルの息子が失脚すると、チャールズ2世が国王に即位し王政復古が行われた。
それに合わせて、クロムウェルが持っていたアルレシア王位もチャールズ2世に移り、同君連合は強化された。
これまではイギリスと仲良くしながらイギリスの家で暮らしていたが、この王政復古が大問題となってしまった。
「アルレシア、いい加減、同君連合なんだから消費税と関税かけさせろ」
「枢密院が拒否したんだろ?じゃあだめだな」
「アルレシア王位も売りにかけてやろうか?」
イギリスの屋敷の居間にて、ソファに座るアルレシアにイギリスが追及する。
財政が危うくなっているイギリスは、共和国政府から踏襲された消費税と関税をアルレシアにも課そうとしていた。
イギリスに比べ遥かに裕福なアルレシアからは多額の消費税が見込めるし、貿易大国であるため関税も大規模な収入源になるだろう。
いまだ無総督時代が続くオランダは王位を与えられないため、イギリスにある程度譲歩してやらねばならないのもまた事実だった。
「税金だけじゃねえだろ。宗教だって弾圧しようとしてんじゃねえか」
イギリス議会はイギリス国教会以外の宗教、主にカトリックだが、これを認めない姿勢だった。
信教の自由によって裕福な資産家が移住してくることを目的に自由化しているアルレシアには損だ。
「何よりも、なんでお前に従わなきゃいけない?」
「国王がイギリス王だからだ」
「国王に権利はない」
「枢密院があるからだっけか?…簡単なことだよな、解散できんだから」
イギリスは不敵に笑い、アルレシアはここで初めて顔を歪めた。
「どこからそれを…」
「一人ならなんとか買収できたよ、枢密院議員」
どうやらイギリスは金にものを言わせて、枢密院の議員を買収し、解散権のことを聞いたらしい。
こんな簡単なことだが、枢密院は他国の干渉を防ぐため、各種規程を一部しか公開しなかったのだ。
「国王が好きなときに召集し、好きなときに解散できる。単純なシステムだよな」
「…それで?枢密院を解散して、親政でもすんの?」
「まぁ、そうなるな。だから、これで名実ともにお前は俺のもんだ」
イギリスはそう言いながら、アルレシアをソファに押し倒した。ぎしり、とスプリングが音を立てる。
「オランダが良かったか?…てか、もうオランダとはヤったのかよ?」
アルレシアの両腕を頭上で固定し、イギリスはそっと腰に手を這わす。
「お前…っ、なんで、」
動揺を隠せないアルレシアに、イギリスは一瞬だけ、痛そうな顔をした。
しかしそれはすぐに不敵な笑みに塗り替えられる。
「そりゃ、昔からお前の隣にいるからな。ずっと思ってた…俺のものにしたいってな」
「直轄領にして、無理矢理組み敷いて、そうすりゃお前、満足なわけ?」
「…っ、さぁな」
シャツを捲し上げられ、体が外気に触れる。今度は直接腰を撫でられ、ぞわりと鳥肌が立った。
……―――オランダとはしたことがない。まだ。だから、慣れているはずもない。
オランダへの愛しさが沸き上がるのと同時に、古い友人からこんなことをされていることに哀しみを覚える。なんで、どうして、それしか頭に浮かばなかった。
「…悪いな、イギリス。頭冷やせ」
本当はやりたくなかったが。
アルレシアはそう口の中で呟き、イギリスの鳩尾に拳を叩き込む。
「ぐっ…!?」
ついで倒れこむ体をソファから落とし、うつ伏せになったところを上半身だけ抱えあげてうなじ付近に手刀を落とした。
イギリスは意識を失い、床に倒れる。
「日本から教わっといて良かった…じゃあな」
次に会うとき、イギリスが正しい態度を取れたなら、アルレシアは和解に応じるつもりだ。
「やっぱ、全力で血筋を引く人間を探そう」
そうひとりごちて、アルレシアはイギリスの屋敷を出ていった。