18世紀も危機: 大北方戦争
スペイン継承戦争、大北方戦争はそれぞれ、前半はフランスとスウェーデンに有利に進んだ。
しかし1707年にはフランスが、1708年にはスウェーデンも各国と膠着状態になり、徐々に戦況は転じようとしていた。
アルレシアはフランスによる商船の撃沈でますます経済が悪化し、高熱で常にフラフラとするようになった。
「お、おい、大丈夫かよお前…」
「あー…まぁな」
アルレシア王位を獲得したプロイセンは、王宮で壁に寄りかかりながら廊下を歩くアルレシアを見かねて声をかけた。
「まっ、どうしてもっつーなら、この俺様が支えてやってもいいぜ?」
そんなアルレシアがらしくなくて、プロイセンは軽い冗談を言っていつもの辛辣な切り返しを期待した。
だが、アルレシアは「マジ…?」とわりと前向きに検討していた。
「あ、あぁ…」
「じゃあ…頼むわ」
そして、アルレシアは壁から離れ、プロイセンのところまで近付いた。
そのままプロイセンの肩に額を預け、服の裾を軽く握った。
プロイセンは思わず固まる。
見下ろせば、弱ったアルレシアがプロイセンに凭れている。
今まで、クールで鬼のように強く、金にひたすらがめついところしか見たことがなかったプロイセンは、アルレシアがこれほどまでに弱っているところを見るのは初めてだったのだ。
プロイセンの中で、急速に沸き上がったのは、庇護欲。
自身より小さく細い体で、これまで1700年近く世界を生き抜いてきた、その強さの裏の儚さに気付いたのである。
「…やっぱ今のなしだ」
「…?」
「お前は俺様が運んでやる」
プロイセンはそう言って、アルレシアを抱き上げた。いわゆる、お姫さまだっこである。
「なっ、おい、」
「大人しくしとけ。落とすぞ」
恥ずかしさでさっと顔を赤らめたアルレシアだったが、見上げたプロイセンの凛々しい顔は、普段より真剣だ。
アルレシアは仕方なく、プロイセンの首に手を回して、その胸元に顔を埋めた。
***
1709年11月、デンマークはスコーネ地方奪還のため、再びスウェーデンに侵攻した。
この頃にはスウェーデンは少しずつ劣勢になりつつあった。
フランスもネーデルラントとの国境付近において、リール、アウデナールデの戦いに破れて劣勢に立たされていた。
そんな中、アルレシアは再度、スウェーデンにアルレシア騒乱の負債延期を求めた。
これまで適当に認めていたスウェーデンだったが、ここに来てそれをチャンスと捉えた。
この返済を口実に、アルレシアへ侵攻し、戦況を好転させるのだ。
こうして、第三次アルレシア継承戦争は、スウェーデンの侵攻という新たな局面を迎え、フランスやプロイセンを含めて三つ巴の戦争に発展した。
これに誰よりも焦ったのはプロイセンである。
まだスウェーデンと開戦する気はなかったため、このままではアルレシアとの同君連合として開戦しかねないことに懸念した。
「つーことでアルレシア、俺お前に王位返すわ!じゃあな!」
「お前…さっきは見直したのに」
もはや呆れて怒る気にもならないアルレシアだったが、自分も人のことを言えないくらい暴れていた。
結局プロイセンは王位を枢密院に返上し、本土から撤退した。
そして12月、スウェーデンはついにアルレシア本土へ侵攻した。
すぐにアルレシアはデンマークと同盟したが、正直当てにならない。
そこで迅速に対応したのが、オランダ、イギリス、ポルトガルだった。
スウェーデンの驚異が北海にまで及ぶことは、なんとしても避けなければならなかった。
こうして、スペイン継承戦争と大北方戦争の接続点として、アルレシアで戦争が行われることとなった。