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1710年1月、アルレシア本土東部にて、スウェーデン軍と援軍たるフランス・スペイン軍が上陸した。
それに対峙するのは、アルレシア軍と、オランダ、イギリス、ポルトガル、デンマークの連合軍である。
「お前とやりあうのは初めてだな、スウェーデン」
「…おめぇも俺ん家さ来」
アルレシアとスウェーデンは、お互い剣を向けながら睨み合う。
普段から眼光が鋭いスウェーデンと、戦うときになると恐ろしいほどに鋭利な空気を纏うアルレシアが向き合う様は、この世の終わりのようだったとイギリスは語る。
北欧の獅子と北海の覇者が会戦することに欧州各国は戦々恐々としていたが、オランダだけはアルレシアを心配してそわそわしていた。
「金ねぇの、フランスのせいだからさ、俺のとこ来るのはお門違いだぞ」
「関係ね。ただの口実だべ」
「…お前のそういう正直なとこ、嫌いじゃない、ぜ!!」
言うが早いが、アルレシアは一気に間合いを詰め、剣をスウェーデンに降り下ろす。
スウェーデンは即座に自身の剣で打ち返し、しのぎを削る。
やはり、力ではスウェーデンに勝てない。すぐに跳ね返されることを予想したアルレシアは、剣を切っ先に向けて思いきり滑らせるようにして押しやり、その力を生かしてスウェーデンの横に回り込む。
一瞬押されたスウェーデンだったが、すぐに剣を構え直し、アルレシアに振りかざす。
回り込んだアルレシアは背中に掛けていた銃剣を瞬時に取りだし、スウェーデンの頭に向ける。
この間、僅か3秒。
たったそれだけの時間で、アルレシアの銃剣がスウェーデンの頭を、スウェーデンの剣がアルレシアの首筋を捉えた。
それだけではない。
イギリスとポルトガルはフランスに、オランダはスペインに、デンマークはスウェーデンに銃を向け、フランスとスペインはアルレシアに銃を向けた。
フランスはすぐに「やっちゃった」という顔をした。
「勝負あったな」
アルレシアは不敵に笑った。
この態勢は、誰かが動けば全員発砲、ないし切りかかる。
しかし、イギリスとオランダ、デンマークがそれぞれフランス、スペイン、スウェーデンを倒せるのに対し、フランスたちは全員アルレシアに切っ先と銃口を向けている。
つまり、最後にイギリスたちが残って、フランスたちは全滅するのだ。
イギリスとオランダが、アルレシアを助けるためにスウェーデンを狙いたいのは山々だったが、アルレシアを信じて戦いの勝利を選んだことが大きかった。
フランスたちは、その点でうまく連携できていない。
「…俺の負げだ」
最初に剣を仕舞ったのはスウェーデンだった。
ついで、フランスとスペインも銃を下ろし、それからオランダたちも銃を戻した。
最後に、アルレシアが剣を仕舞い銃剣を下ろした。
「さっすがアルレシア、スヴェーリエに追い付げるやづなんて初めて見たっぺぇ!」
ケラケラ笑いながらデンマークはアルレシアを褒め、「スコーネ返してくんろ〜」とスウェーデンと戦いに北欧へ戻っていった。
「あーぁ、またアルレシアには勝てなかったよ…お兄さんもイギリス軍ぼこぼこにしよ、スペインで」
「あん?上等じゃねえかやるぞこら!」
「俺も手伝うでイギリス〜」
「ちょ、やめたってぇ!!」
フランスはスペインでの内戦に戻り、イギリスとポルトガルも応戦するため帰る。スペインは半泣きでついていった。
残されたのは、オランダとアルレシア。
「…ありがとな、オランダ。銃口をスペインに向けてくれて」
「アルレはほないな戦いで負けるわけあらへん。当然やざ」
ほやけど、とオランダは続ける。
「戦うんなら、怪我だけはせんでおくんね。お前だけの体やないさけ」
「妊婦みてえな言い方すんな…でも、気を付ける。オランダもな?」
アルレシアはオランダに抱き止められながら、オランダにしかと確認する。
最近、オランダは常に戦っている。
「ほやの」
ふ、とオランダは笑い、アルレシアを抱き締める力を強くした。