斜陽の帝国


アルレシアはスペイン継承戦争終結後、イギリスのハノーヴァー朝を事前に決めた通り国王として認め、ようやく落ち着いた。欧州全土を巻き込んだ戦争の終結によって大陸が平穏を取り戻したところで、アルレシアはイギリスに手伝ってもらいながら新大陸貿易を加速させた。
列強という言葉が意識され始めたこの頃、西欧の列強であるイギリス、フランスの対立は17世紀から続く第二次百年戦争という形で依然として深刻だった。その合間でオランダとアルレシアが小国ながら豊富な資金力でもって列強として貿易の金稼ぎを進めていた。

北欧の列強であるスウェーデンは大北方戦争で疲弊した上にポンメルンなどの大部分を失い、デンマーク=ノルウェーも戦争はこりごりとばかりに落ち着いた。東欧ではプロイセンが台頭しつつあり、大北方戦争で大勝したロシア帝国は強大な力をバルト海で示していた。

一方、列強とまだ呼んでもいいのか分からないほどに没落していたのがスペインだった。スペイン継承戦争の一番の被害者と言っても差し支えない。欧州における領土の大半を失い、ベルギーやルクセンブルク、ロマーノもオーストリアに持っていかれてしまった。
せめてロマーノだけでも取り返そうと親分は奮闘し、1718年、オーストリアに対して戦争をしかけた。


「オーストリア!ロマーノだけでも返したって!」

「何を言っているんですかこのお馬鹿さんが!」

「ヴぇー、お兄ちゃんと暮らしたいんだよ、スペイン兄ちゃん…」

「スペイン、負けたんだからおとなしくしとけって〜」

「悪あがきはやめねま」


オーストリアはもちろん、フランスとオランダもこの動きに警戒し、余計なことはするなとばかりにスペインをフルボッコにした。四か国同盟戦争というこの戦争は1719年には終わり、シチリア島と南イタリアによる両シチリアは正式にオーストリアのものになり、サヴォイアはサルデーニャ王国に昇進、スペインはパルマのみ取り返すことを認められた。

負けたスペインは、半泣きでアルレシアの家にやってくる。


「うわ〜んアルレ〜、なぐさめたって〜!」

「あー、はいはい」


ソファーに座るアルレシアの膝に頭を乗せて落ち込むスペインの、くせっけのある髪を撫でてやる。


「俺、ふがいない親分やんなぁ…」

「お前がふがいないのは昔からだろ」

「ひどい!」


少し傷ついたように言うスペインの頭を撫で続けながら、アルレシアは苦笑する。


「俺は、お前のそういうところが好きだけどな」

「…、アルレってホンマ小悪魔やね…うう、オランダずるいわ〜…」

「分かった分かった。ワイン飲むか?」

「飲む…」

「まいどあり」

「分かってたけど!!」



そんなスペインだったが、ロマーノばかりは本当に大事だったのか、何が何でも取り返したかったらしい。1736年、大北方戦争でスウェーデンが建てたポーランドの傀儡王スタニスワフが再び王位を主張してポーランド継承戦争が勃発すると、周辺の国々が介入し、北方戦争を彷彿とさせるような戦争に発展した。
スペインもそれに介入してオーストリアに交渉を要求し、戦況がスペイン寄りに進んで終結すると、ついにスペインは両シチリアを取り返すことに成功した。
「ロマーノおおおお!!親分やったでえええ!!」と叫んでロマーノに抱き付くスペインに、オーストリアは引いていた。代わりにパルマをオーストリアは領有することになり、このほかザクセン=ポーランド=リトアニアが成立した。


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