18世紀も危機: 初の世界大戦へ


オーストリア継承戦争はプロイセンにとってこそは意味あるものだったが、他の国にしてみれば多大な金を使ったわりに変わったことなどほとんどなかった。大北方戦争とポーランド継承戦争によって疲弊した北欧は戦争に否定的で、特にデンマーク=ノルウェーはかつての暴れん坊ぶりはどこへやら、戦争を極力避ける農業国家となっていた。スウェーデンは台頭するロシアとプロイセンへの警戒心を抱いてはいたが、自分からアクションを起こすつもりなどなかった。
オランダや北イタリア諸国、アルレシアは貿易による利益を最優先としていたために戦争は損でしかなく、特にオランダとアルレシアは海外との貿易の維持のために英仏の戦争に関わることを嫌がった。

イギリスとフランス、プロイセンとロシアは戦争に意欲的で、自らの利益は戦争で相手を打ち負かしてこそ最大化されると考えていた。
そうして1754年にはイギリスとフランスが植民地において武力衝突を開始し、再び欧州での緊張は高まっていった。

さらにこのとき、主要国の思惑は非常に不安定で、疑心暗鬼に満ちていた。欧州はこのあと、疑心暗鬼によって二度に渡る世界大戦を戦争に否定的だったにも関わらず引き起こすことになるが、まったく同じことがここで起きようとしていた。


オーストリアは、シュレジェン奪回のためにプロセインとの開戦を視野に入れていたため、急速に軍の改革を開始、行政の刷新などの政治への改革も断行していた。一方、開戦した場合の国防のために、どのような同盟関係を構築するか、微妙なところで選択肢を決めあぐねていた。
オーストリアはハンガリー、マリア・テレジアとともに豪勢な応接室で考える。


「私にある選択肢は3つ。聞いてくれますか、オーストリア、ハンガリー」


マリア・テレジアは固い顔で切り出す。無言で2人がうなずくと、机に広げた欧州の地図に視線を移した。


「まずは先の戦争と同じイギリス。しかし前回は早々に中立に回るという勝手なふるまいもありました。正直、信用できません」

「彼はハノーファーのことしか、欧州では考えていませんからね」


イギリスのハノーヴァー朝の王、ジョージ2世は1世と同じくウェストファリア付近にあるハノーファー選帝侯領が故郷だ。そのためハノーファーの維持に躍起で、フランスはそれを狙う。フランスには海外での戦争を、大海軍を擁するイギリスに対して優位に進めることはできない。だから、欧州で戦争に介入してハノーファーを占領し、終戦時の和平交渉で海外植民地と交換する形でイギリスに譲歩させるための材料にしたいわけだ。


「ロシアとは、先の戦争終結直後に秘密条約を結びました。有事の際にはシュレジェンを共同防衛するほか、東プロイセンを占領してポーランドに割譲、そしてその分クールラント(ラトビア)をロシアに割譲することになっています」

「ロシアは信用なりません」


オーストリアはすげなく返す。気持ち的な問題だろう。しかし実際、ロシアはまだ途上国で、広大なポーランド領をつっきって戦場となるシュレジェンまで来る頃には疲弊しきっている。あまりあてにならない上に、ポーランドを今後どうするかというときに敵となりうる。


「最後は、ハノーファー占領を手伝うという口実でフランスと同盟…」

「絶対に嫌です」

「…でしょうね」


残る選択肢は、フランスと同盟しハノーファー占領を手伝う代わりにシュレジェン奪回を手伝ってもらうことだ。しかし、かれこれ100年以上オーストリアはフランスと直接戦火を交えているし、さらには15世紀からずっと敵国なのだ。
オーストリアはぷんすことしながら拒否した。


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