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一方、プロイセンも大きな机に広がる欧州の地図を前にフリードリヒ2世と頭を抱えていた。
イギリスとフランスが戦いはじめ、いつ欧州でも開戦するか分からなかったからだ。オーストリアによる報復は、ないと考える方がおかしかった。
「しかし私は戦争は避けたい…少なくとも、オーストリアとの戦いになれば、確実にまた英仏を巻き込んでの大戦争となる」
「だけどよ親父、あの坊ちゃんの寄せ集めの兵なら、イギリスたちがとやかく言う前に短期決戦もできんじゃねぇの」
「それはあるが、いざ開戦したときにイギリスとフランス、どちらが味方になるか…」
プロイセンは地図を見やり、顔をしかめる。
「オーストリアがフランスと組むわけねぇだろ。また、俺とフランスで同盟して、坊ちゃんとイギリスの構図だ」
「そのフランスが、ハノーファーを超えてこちらまで派兵すると思うか?奴はハノーファーさえ占領できればあとは終戦にもちこめばいい。こちらがどうなろうと関与しないだろう」
「…まぁ、あいつそういうやつだしな、否定できねぇ」
ただの口実としてしか欧州での戦争を捉えていないフランスが、海外植民地を巡る交渉材料としてのハノーファー占領以上のことをするとは思えなかった。
「でも、フランスはロシアを嫌ってる。オーストリアがロシアに接近してるっつーウワサがある以上、フランスがオーストリア寄りのことをするとも思えねぇ」
「あぁ、ロシアはオーストリアとフランスと同盟したいだろうが、オーストリアを説得するのもフランスを説得するのもできないだろう」
「…あ、でも、フランスに同盟してハノーファー占領を手伝ってやってる間に、後ろからロシアとオーストリアに挟撃される可能性もあんな。かといってハノーファー占領すら手伝わなきゃ同盟なんて意味ねぇし…あー!めんどくせぇ!!」
ザクセン=ポーランド=リトアニアはフランスにつくかロシアにつくかで揺れているし、そもそも弱小、広いだけなのでロシアもオーストリアも何の障害もなくザクセンとポーランドを横切ってブランデンブルク選帝侯領と東プロイセンへと至るだろう。
今、プロイセンは自分から動くには確実な国がなく、後手に回らざるを得なかった。その恐怖心は、いつまでもフリードリヒ2世の中にくすぶり、焦りを生んでいた。
***
イギリスは、巨大な机に世界地図を広げてアルレシアと話していた。アルレシアはあまり興味はなかったのだが、なんだかんだと同君連合が続いてることもあり、イギリスがどうするつもりなのか確かめるつもりだった。それに、植民地でフランスがアルレシアの船も襲っているため、すでに気持ちはイギリス寄りだ。
「アメリカとインドでもうフランスとやりあってる。ここで欧州大陸で戦闘になればハノーファーを守らきゃなんねぇんだが…」
「選択肢は3つ、だな」
共同防衛という形をなるべくとって出費を抑えたいイギリスは、誰と組むか考えていた。
「まず前回と同じオーストリア。こいつはシュレジェンでかかりきりになる、ハノーファーまで手ぇ回せるかは微妙だな」
「イギリスが守っちゃった方が速そうだな」
シュレジェン奪回のために主戦力をザクセンからシュレジェンに集中させるオーストリアが、ハノーファーのために割く余力があるかは微妙なところだ。
「んで、対立してる相手のプロイセンだが…」
「フランスがオーストリアにつくとは思えない。そうすると、ハノーファーに特に危険がない。つまり、お前の一方的なボランティアになるな」
プロイセンにつくと、フランスはオーストリアに加勢するわけもないから、イギリスがただプロイセンに優しくしてやっただけになる。そしてプロイセン自身、オーストリアとロシアによる挟撃を恐れてハノーファーへの援軍を出す余力はない。
「最後はロシアだな。噂ではオーストリアと同盟してるらしいし、2人合わせりゃそれなりに力になるだろ」
「…まぁ、そうだな」
アルレシアとしてはロシアに味方する意味はあるのか微妙なところだ。むしろ、もしプロイセンに味方することになった場合、ロシアをいたずらに参戦させかねない。
そして、その懸念は当たった。