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ポーランド王国領シロンスク公国・公都ヴロツワフ。
シロンスク地方最大の都市であるこのヴロツワフは、西と北に分かれた部隊の合流地点となっていた。
レグニツァを攻略したモンゴル軍は、オロモウツで本隊と合流するため、この街で略奪がてら補給を行うことになっていた。
アルレシアはこのヴロツワフでモンゴル軍を叩き、戦意を失わせるつもりだった。
小高い丘から、城壁に囲まれた美しい都市を臨む。建ち並ぶ家の合間から、いくつもの塔が聳える。
その街並みからは、ところどころ黒煙が上がっていた。すでに略奪が始まり、火が放たれているのだ。
「…やるぞ」
アルレシアは街を睨み付けながら、右手を高く上げた。
同時に、兵士たちが投石装置に巨石をセットし、そして思いきりハンマーで叩く。テコの原理により、ハンマーで叩かれた部分と反対側にセットされた巨石も持ち上げられ、高く飛んでいく。
巨石は一気に飛び立つと、ヴロツワフ市街に向けて落下していった。この投擲攻撃により、ヴロツワフ中に重い巨石が降り注いだ。
「次弾装填、放て!!」
間を開けず、さらに投擲が続けられる。
市街からはモンゴル軍の悲鳴が響く。
ヴロツワフからは市民が脱出しており、ポーランド王からも攻撃の許可を得ているため、アルレシアは躊躇いなく攻撃を続けた。
シロンスク公はレグニツァの戦いで死去したため、ポーランド王からの許可だ。
「そろそろ行くぞ」
4度ほどの投擲を終え、アルレシアは馬に合図する。
市内にいるモンゴル軍を掃討するため、8000のアルレシア王国軍を率いてヴロツワフへと馬を走らせるのだ。
ここからは時間との戦いになる。
投擲と相まって、市内の火災はこれから急速に広まる。
さらに、オロモウツへとモンゴル軍が向かうのも時間の問題である。それまでに、なるべく多くの兵士を、そして指揮官を倒したい。
アルレシアは急いで馬を走らせた。
***
一方、モンゴル侵攻の知らせとアルレシア出陣の報告は、西欧諸国を驚かせた。
強力な中央集権のもと、経済、軍事ともにヨーロッパ最大であったアルレシアの進軍は、ある意味当然であり、ある意味不自然だった。
確かに力もあるし、取引先の防衛というのは利にかなっているが、アルレシアは基本的に不干渉を第1とする。
そんなアルレシアが、頼まれたわけでもなくポーランドへ向かったのは珍しい。
そして、だからこそイギリスやフランスを震撼させた。
「もし、アルレシアがやられたら…」
イギリスはようやく少年期を抜けたような若い見た目ながら、思案する顔は一国のそれである。一方のフランスは、わなわなと震えを隠さない。
「そ、そんなの分かりきってるだろ…!」
「あぁ…」
「捕らえられて、異国の屈強な男たちにあんなことやこんなことまでされるに違いない…!」
「はぁ!?」
「あ、想像したら興奮してき「帰れ!!」
禁欲はどこへやら、煩悩の塊のようなカトリック国家である。
「あんなことってなんなん??」
「…ろくなことやない」
と、そこへ幼い少女の声。
10代前半のオランダとベルギーだ。
アルレシアに並ぶ経済力のあるベルギーと、開墾が進むオランダは最近めきめき大きくなっている。
しかし、神聖ローマ帝国の領邦やフランスの伯領に過ぎない2人はまだまだ弱小国家。
中央集権の進まないフランスやイギリスもそうだが、とてもモンゴルを相手にできない。
「アルレシアの様子見に行きたいとこだけど…2人置いてくのもね…」
フランスは変態を仕舞い、真面目な顔になる。
「そうだな、とりあえず一緒に行動しておくか…オーストリア伯と神聖ローマも呼ぶか?」
「そうだね、みんなで一緒にいれば、とりあえずは…」
モンゴルがいつどこから来るか分からない今、バラバラになるのは危険だ。
イギリスたち西欧諸国は、珍しく1つになってポーランドへ様子を見に行くことにした。