18世紀も危機: 七年戦争


こうして3人の女傑たちによる「三枚のペチコート作戦」が成立し、プロイセンは人口にして30倍もの相手を前にイギリスの財政的支援だけを頼りに戦うことになった。
オランダをはじめアルレシア、デンマーク=ノルウェー、北イタリア諸国、ポルトガルなどは中立を宣言しており、プロイセンの味方になりうる国はなかった。

そして、プロイセンはここで最大の焦りを生んでしまう。巨大すぎる相手を前に孤軍奮闘を迫られたプロセインは、予防戦争の形に打って出たのである。やられる前にやれ、ということだ。

プロイセンは1756年8月29日、ザクセンへと侵攻しシュレジェンの守りを固め、ボヘミアの一部を占領した。一か月でザクセンの首都ドレスデンを制圧すると、10月にはザクセンは降伏した。これには欧州全土から批判が沸き上がりさらにプロイセンを孤立させただけでなく、同君連合のポーランド=リトアニアをオーストリア寄りの中立にさせてしまった。そのため、ロシアやオーストリアによるポーランド領内の移動が簡単になってしまったのである。
それでもプロイセンは足を止めるわけにもいかず、短期決戦でオーストリアを直接落とそうとボヘミアへ進軍した。


「わりぃな!オーストリアはここでぶっつぶす!!」

「なら私を巻き込まないでくませんこと?」

「ほんと俺らとばっちりだよなぁ」


プロイセン軍によってプラハは包囲され、チェコとスロバキアは必死で戦う。そこへオーストリアとハンガリーが駆け付けた。この頃にはもう、プロイセンはオーストリアが前回のような寄せ集めではないことを実感しており、プラハ包囲は失敗した。
それだけでなく、コリンの戦いでは完敗し、8月にロシアがグロース=イェーゲルスドルフの戦いで勝利して東プロイセンに打撃を与えると、プロイセンはザクセンすら通り越してブランデンブルク選帝侯領まで撤退を余儀なくされた。


「…チャンスだない。ポンメルンさ取り戻すべ」

「えっ、ちょ、スーさん!?」


プロイセンの敗走を見たスウェーデンは、大北方戦争で奪われたポンメルンを取り返すため、9月にわずかに残されたスウェーデン領ポンメルンから東ポンメルンへと進軍した。


***


1757年6月29日、プロイセンがコリンの戦いで大敗したのを見て、フランスはチャンスとばかりに一気に攻勢をかけることにした。
その相手は、なんとアルレシア王国。イギリスも、中立だったアルレシアも、フランスはハノーファーへ行くものとばかり思っていたため、完全に不意打ちだった。

フランス海軍と大量の輸送艦は、南部最大の港であるポルタスヴィアに侵攻、これを海上から砲撃して要塞を破壊すると、陸軍によって城壁に囲まれた旧市街を占領した。
新市街は街道に沿って王都新市街まで接続する大都市となっているためその先には行かず、旧市街と周囲の港湾部を制圧して籠城した。
さらに陸軍は街道から北上し、王都レガリスタードへと進軍。アルレシア憲兵と陸軍東方師団が防衛に当たるも、王都新市街まであと10キロというところまで攻められていた。

7月2日にはイギリス軍が到着しレガリスタードから引き離すも、アルレシアはすでにかなり疲弊していた。


「大丈夫か、アルレシア」

「やばい、年だ…」


銃を地面に立てて体重を乗せる。援軍のイギリスは強くて助かるが、アルレシア本土での戦闘は40年ぶりくらいだ。
そのまま一進一退の戦いを続けると、7月10日、突然北端の港であるサンミネラシアが占領されたと報告が入った。フランス海軍が、ポルタスヴィアの戦いに紛れて北へ回っていたのだ。
その直後の13日、今度は東端にある港町であるノヴァ=ノルマンディアまで占領された。フランスの狙いは最初からこの3港の占領だったのだろう。

アルレシアはイギリスとともにレガリスタード南部郊外の教会で、街道からのフランスの駆逐について話し合う。奪われた港よりも、王都に迫る軍を何とかしなければならない。

すると突然、外から怒声が響き渡った。


「砲撃だぁああああ!!」


その次の瞬間、近くの建物の天井が吹き飛んだ。爆音とともに瓦礫が飛び散り、教会の壁面に当たる音も聞こえる。


「まさか…!」


アルレシアが急いで教会を出ると、南の制圧された街道から無差別砲撃が始まっていた。すでに町中から黒煙が上がり、兵士が悲鳴を上げて逃げ惑う。すでにこの地区から市民は避難させたあとだし、向こうもそれを分かってやっているのだが、それでもやはりたちが悪い。


「あんの髭野郎…っ!」


空を弾が高速で飛び交う甲高い音、そして建物が爆発する轟音。そのセットが繰り返される。


「あぶねぇ!!」


すると、イギリスがアルレシアを抱きしめて教会の壁に押し付けた。イギリスと壁に挟まれた直後、道路に砲撃が当たり石畳が吹き飛ぶ。土と石の塊が空中を舞い、パラパラと落ちてきた。イギリスのおかげでアルレシアにケガはにが、イギリスは破片があったのか、腕から血を流していた。


「っおい、イギリス、」

「いいから。それよりお前は大丈夫か?」

「…大丈夫。だから手当を…」


しかしイギリスは笑ってそれをやんわりと断る。そして、すぐに指示を出しに自軍へと向かった。
ケガをさせてしまった。それにショックを受けると同時に、空から降り注ぐ砲撃に体が痛む。これは、早く停戦交渉を受け入れさせるための圧力だ。
屈するのは悔しいが、目の前で血を流す兵士を見れば、そんなことはまったく問題に思えなかった。


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