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1760年に入ると大陸部と海外での戦争が激しさを増し、アルレシアではほとんど戦争にならなかった。

7月、ポルタスヴィアに攻勢をかけるために王都で準備をしていると、オランダがやって来た。オランダは戦場となったアルレシアに対して莫大な支援をしてくれているのだが、今日はアルレシアを見るなり王都北側の丘に連れ出した。


「…なに思いつめた顔しとるんや」

「え…」


そして、草原の上で王都の街並みを見下ろしていると、オランダはそう切り出した。アルレシアが思わず呆けると、オランダはアルレシアをそっと抱きしめる。いつもの安心する腕の中、アルレシアはオランダが言わんとしていることを理解し、目を閉じて胸板に顔を埋めた。


「無理、しとるだけやないな」

「やっぱ、ばれるよなぁ」


オランダに隠し事ができるわけもなかった。それは、オランダも一緒だ。


「…俺、ここんとこほんとに情けない。何もできてないし…」

「金はぎょうさん出しとるやろ」

「まぁ、そうなんだけど。自分の国も自分で守れないなんて…」


昔は軍事的にも欧州最強だったからこそ、余計に無常を感じるのだ。オランダは漉くようにアルレシアの髪を撫でる。


「…ホンマのこと言えば、俺がアルレを守りたいんやけどの。ほんな力、俺にもないさけ…」


オランダもアルレシアも、経済を優先しているためあまり軍事的優位性は求めていない。その結果がこれだ。


「ほやけど、俺は俺にしかできんことする。アルレの一番近いとこにおれるさけ、アルレの心を支えんねや」

「…うん、ありがと、オランダ。…ちょっとだけ、よりかからせて」

「言われんでもほうする」


それでも、お金しかなくても、オランダとアルレシアの間には愛がある。それは、この世で最も力のあるものだと、アルレシアでも思うのだ。



***



1760年7月25日、アルレシアとイギリス・ハノーファー連合軍はポルタスヴィアを襲撃した。フランス軍を追い出すことはかなわず、やはりこちらが撤退することになる。仕方なく、帰国前にハノーファーの兵たちが宿泊したポルタスヴィア郊外の離宮にて、それは起こった。

ハノーファーの将兵に呼ばれてアルレシアが離宮の一室に向かうと、その部屋には一人の兵士がいた。敬礼を返すと、その兵士は壁一面に書かれたものを指さす。


「これは、アルレシア王室の家系図、ですよね…?」

「…そうだね」


そこに書かれているのは。アルレシアの王室の家系図だ。途中からは同君連合になるため、ハプスブルク家やオランダのオラニエ家、イギリスのステュアート家や現在のハノーファー朝であるブラウンシュヴァイク家なども途中から示されていた。


「その…不遜なことを言っても構いませんか」

「いいよ」

「…私の家の家系図の、数百年前の部分が、ここと一致しているんです」


兵士が示したのは、15世紀から16世紀にかけての部分。最後の直系の子女だったマリアとカール5世の娘、次女カトリーンに連なるザクセン公やバイエルン公などの娘たちだ。
その系統の最後は、コンデ公アンリの娘と結婚した男児シャルル。シャルル夫妻は当時ユグノー戦争下にあったフランスから亡命して、そこから行方が分からなくなっていた。


「…まさか、シャルルとコンデ公アンリの娘、カトリーヌ夫妻の先の系譜があるのか?ってか、その…」

「直系、です」

「そ、んな、まさか…」


突然のとこに驚いて声も出ない。アルレシアが目を見開くの見て、兵士は慌てる。


「も、申し訳ありません!ただ、一応鑑定などが必要であれば応じる心づもりでありますということをお伝えしたくて…!」

「あ、いや謝ることじゃない…君、名前は?」

「カール・フォン・ハンザ=ブルボンです!」

「ハンザ=ブルボン…」


こんなことがあるのかと、アルレシアは呆然とする。だが、こんなことをしている場合ではない。早急に枢密院に連絡して専門家を派遣しなければ。


「カール、出身は?」

「ミュンスターです!」

「そうか…よければもう少し話を聞きたい、一緒に来てもらえるかな?」

「どちらに、でしょう…?」

「もちろん、王宮だよ」


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