アメリカ独立革命


第一次分割が行われた1772年頃、欧州は落ち着いていたものの、アメリカではついに独立の狼煙が上がろうとしていた。

イギリスとフランスの第二回チキチキ百年戦争はイギリスの勝利で終わったものの、イギリスは極度の財政危機に陥っていた。そこで植民地に対する課税を行おうとしたが、すべて反対にあった。
特に大陸商人を怒らせた茶法によって、ボストン茶会事件が起きると、マサチューセッツ封鎖などイギリスによる懲罰的な法律が次々と制定された。

アメリカは耐えがたき諸法として反発、代表なくして課税なしの精神で独立に向けた準備を開始する。

そして1775年4月、一発の銃弾が世界を変えた。
偶発的に始まったレキシントン・コンコードの戦いでもって、アメリカ独立戦争が勃発したのである。



***



「お前ついにおっぱじめたな」


アルレシアはアメリカの粗末な家にて、商談をかねてアメリカと話していた。すでに怪我をしているアメリカだが、表立って貿易を続けるアルレシアは重要な取引先であるため、戦場から商談に赴いたのだ。


「もう耐えられなくてさ。俺はもう、子供じゃない。イギリスと対等に付き合いたいんだ」

「いんじゃね?子離れと親離れは必要だよな」

「軽いな…」

「どうなろうと知ったこっちゃねぇしな」


アルレシアはそう言うと、さらさらと注文書に文字を書き足す。


「まっ、応援はしてやるよ」

「…これ、」


アルレシアが渡した注文書は、いくつか武器が記されていた。最新式の鉄砲や砲弾である。数量のわりに、請求金額はあまり多くない。


「最近目が疲れててさ。あんま手元見えなくて文字ちゃんと書けてるか自信ねぇんだ」

「……アルレシア…、ありがとう」

「ゼロの数合ってんなら良かった。ま、どうせオランダとかフランスあたりがこっそり味方してんだろ」

「スペインもいるぞ」

「思惑が透けて見えんな」


フランスやイギリスは新大陸地域におけるイギリスの影響力排除と自分たちの覇権の拡大、スペインも領土回復を狙っているはずだ。イギリスの態度によっては正式に参戦するだろう。それだけここは金になる。


「なんでアルレシアは俺に味方してくれるんだい?前からずっと、貿易だって平等だ」

「俺は宗主国じゃないし。それに、商人が儲けすぎると困るんだよ。だから平等にしてた。独立を応援すんのは、いちいちイギリスに干渉されずに貿易したいからだな」

「うっ…さすがの合理性…」


アメリカはアルレシアの飄々とした態度に苦笑する。アルレシアは商談終わるので、立ち上がってソファに座るアメリカの頭をぽんと撫でた。


「あとは可愛い後輩への老婆心的なヤツかな。死なない程度に頑張れよ、若人」

「爺臭いな…」

「言ってろ」


アメリカは口ではそう言うが、その声は少し震えていた。きちんと心を寄せる存在がこの戦いでいないからだろう。アルレシア国内の世論も、最近イギリスから同じく独立した立場であることもあって、アメリカに好意的だ。


そうしてアメリカの家を出て帰路につくと、道中で見慣れた広い背中が見えた。恋人に声をかけないで通り過ぎるようなことはしない。


「オランダ」

「アルレか…どないしたんやこんなとこで」

「アメリカと商談してた。オランダは情報収集?」

「ほんなとこや。アルレはアメリカにつくんか」


オランダは煙管をくゆらせながら聞いてくる。それには曖昧に笑って返した。不干渉原則があるため、はっきりとそのような態度を取るには時期尚早だったのだ。


「…まぁええわ。こん前戦い終わったばかりやさけ、あんま無茶したらあかんで」

「分かってるよ。てかそれはオランダもだろ」

「ほやの。一緒にイギリスんこと笑いよっせ」

「さてはまだいろいろ根に持ってるな…」


大方アルレシアを英蘭戦争で奪われたときのことだろう。イギリスとは基本的に同盟関係にあるオランダだが、そんなアルレシアの言葉には目線を逸らした。


70/94
prev next
back
表紙に戻る