革命戦争: 俺たち島国
1795年初頭のうちにネーデルラント連邦共和国は滅亡し、フランスの衛星国であるバタヴィア共和国が成立した。バタヴィアはフランスに代わってイギリスと戦う役割を任されるが、オランダが有していた海外植民地のうち、セイロンやケープはすぐにイギリスに占領されてしまった。
インドネシアはバタヴィア共和国によって引き継がれ、オランダの国力は著しく疲弊していくことになる。
「お、俺様この辺にしておいてやるぜー」
「このお馬鹿さんが!!」
オランダの傀儡化を見てプロイセンはフランスとの戦闘を諦め、国土が離れていることもあり、4月にバーゼルの和約で停戦してしまった。それによってラインラントは完全にフランスの手に落ちる。
その代わり、プロイセンはポーランド分割に集中するようになった。
「プーちゃんおらんし、親分もこんくらいにしとくわぁ。ほら、ロマも帰るで」
「何ひよってんだちくしょー」
さらにスペインとロマーノも脱退、7月の第二次バーゼルの和約でフランスと講和した。
残されたのはイギリスとオーストリア、北イタリア諸国のみである。ここにきてイギリスの危機感はかなり大きなものになった。
そしてこれより、アルレシアのこの戦争への介入も始まることとなる。
***
1786年にアルレシア王に即位したアイク6世は、1791年にイギリスのジョージ3世の娘と結婚し、アメリカ独立戦争で微妙な空気になっていた両国の関係を修復した。
しばらく同盟には加わらず静観の構えを見せていたアルレシアだったが、オランダが占領されてから情勢は一気に変わった。
オランダの最新式の海軍を手に入れたフランスは、今やアルレシアのすぐ目の前に迫る。国防上の危機感を感じない方がおかしい。
オランダとの貿易がストップしたことで、アルレシアが欧州内陸と貿易するにはハノーファーとオルデンブルクまで行くしかなくなったためコストも嵩む。重武装商船の建造を急ピッチで進めるアルレシアだが、軍備もあって金が飛ぶ。
すると、オランダからの置き土産に気づいた。
「オランダ領植民地への寄港手数料撤廃、関税撤廃を承認する…ってまさかあいつ」
それは、オランダ領植民地との完全な自由貿易が可能であることを意味していた。少しでもアルレシアの金になるようにしてくれたのだろう。もちろん、オランダにとっても利益のあることではあるのだが、アルレシアとしても大陸部との貿易が制限される中でこれはありがたかった。
更に、オランダらしくバタヴィア共和国は衛星国といえどフランス本国を無視して密貿易を開始。アルレシアの通関法を利用して、かつてのように貨物の国籍を変えて貿易を行った。
そうしたオランダの心配りのおかげで、アルレシアも踏ん切りがついた。これは、不干渉と言っている場合ではない。
「イギリス、話がある」
「あークソ、またいいようにされる気しかしねぇ」
アルレシアは緊迫する情勢の中、イギリスの家を訪れた。すでにイギリスはケープやセイロンなどを占領している。
「実はな、オランダが負け際に、俺に対して植民地の自由化をしてくれたんだ。港湾利用料も関税も完全フリー。バタヴィア共和国としては密貿易でも貿易が続いてるし、東インドはすでに自由化を行った。でも、お前が占領したセイロンとケープは違うよな」
「分ーかったよ、認めりゃいいんだろ」
「お前ん家の本国は?」
「は?俺までかよ」
「俺は戦いたくねぇからフランスについても…」
「分かったって!!」
イギリスは投げやりに言うと、紅茶を乱暴に飲む。苛立ちや怒りというよりは、呆れだ。イギリスにとって死活問題であるアルレシアの独立維持という目的のためには、アルレシアの要求を呑むほかない。
イギリスは、渋々ながら旧オランダ植民地における自由化の有効性を認め、イギリス本国およびその植民地へのアルレシアに対する関税削減に同意した。これでアルレシアはできる限り最大限の通商優位を得た。
「じゃあ俺は正式にイギリスと同盟する」
「え、そこまでしてくれんのか」
「さすがに割に合わないだろ。俺はお前を搾取したいわけじゃない」
イギリスはアルレシアの払う対価に意外そうにした。アルレシアとて、さすがにイギリスに対してそこまで横暴にはならない。きちんと正式な同盟関係を結んで、軍事的な介入を行うことにした。
これをダーリントン条約といい、これをもってアルレシアは対仏大同盟に参加した。第一次から第七次まですべてに参加した辺り、アルレシアは自分でも律儀だと思っている。