革命戦争: エルベ川を奪還せよ
イギリス、アルレシア、ロシア、プロイセン、スウェーデン、オーストリアは一同に会して、戦時行動プランをまとめることにした。後に世界大戦を引き起こすことになる手法である。
今回は、それぞれの国が徴兵によって国民軍となって大規模化していたため、その指揮系統を揃えて作戦を統一するための話し合いだった。
「東と西から陸路でフランスを叩くのが大筋っつーことでいいな」
やはりこういうことに強いプロイセンが言うと、各国は頷く。狙うは、帝都パリだ。
「俺と、ついでに解放したポルトガル、スペインで西からピレネーを超える」
「イギリスごっつ心強いわぁ〜」
「ポルトガルこの前イギリス陸軍ディスってたやん…」
「そうやった?」
イギリスとスペイン、ポルトガルの半島連合軍は、スペイン全土の掌握が完了すると同時にピレネー山脈を越える。国境をまたいでフランス西部からパリを目指す。
「俺と坊ちゃん、ロシア、スウェーデンはドイツ諸邦を解放して、ライン川を渡って東から叩く」
「異議ありません」
「ん、」
「どういうルートで解放するの?」
プロイセンにオーストリアとスウェーデンが同意すると、ロシアが首を傾げた。広いドイツ地域のどこから攻めるのかということだ。
「ライン同盟を超えねぇとフランスには行けねぇ。その前に俺たちがするべきは、エルベ川を確保することだ」
プロイセンはそう言うと、机の地図を指さした。各国はそれを見て、ドイツの二つの大きな河川沿いに広がる地域を見比べる。
チェコ北西部からデンマークの左下の付け根あたりに向かって北西方向に流れる巨大な川をエルベ川、スイス北西部からオランダ南部に向かって流れる巨大な川をライン川という。
エルベ川流域には、本河川沿いにドレスデン、マグデブルク、ハンブルクという大都市があり、支流にはライプツィヒやポツダム、ベルリン、リューネブルクなどがある。まずはこのエルベ川以東の旧ブランデンブルク選帝侯領、ザクセン王国、メクレンブルクなどを確保しなければならない。
その後、ライン川沿いに広がるバイエルンやヴュルテンベルク、バーデン、ケルン、ヴェストファーレンなどライン同盟を撃破する。
その向こうはアルザスとロレーヌで、すぐにフランスへと至る。
「エルベ川本流の確保には、マグデブルクまでの制圧と、ドレスデンの解放が必要だ。そんで、できればヤツらをアンハルトより西に押し返してぇ」
「マグデブルクまでは俺とおめで問題ね」
プロイセンの指がなぞるエルベ川本流、その北方流域はスウェーデンの大きな手が覆った。メクレンブルクやポンメルン、ブランデンブルク地域のドイツ人とともに、プロイセンの助力でもって制圧できるという意味だ。
「ドレスデンは私が近いので行きます」
「じゃあ僕はオーストリア君を援護するよ」
ブランデンブルクとチェコの間に位置するザクセンは、オーストリアが距離的に近いのでプラハから一気に首都ドレスデンへと攻勢をかけられる。ポーランドを突っ切ってロシアも援軍を送ることになった。
「アルレシア、お前にはエルベ川に海軍を出して欲しい」
「……へぇ、あの大河を遡上しろって?」
「どこまで行ける?」
「ザーレ川の上流まで行ってやるよ」
「さすがのアルレシア様だな」
アルレシアは長年のオランダとの付き合いもあって、海底が非常に浅い海域でも航行できる軍艦を持っている。また、河川用の商船を武装することもできた。
産業革命を始めたアルレシアの国力をもってすれば、それは容易だ。普通は考えられない河川の遡上による援護を、アルレシアは二つ返事で了承した。
そんなアルレシアに一同は思わずジト目を向けた。明らかに怪しがられている。
「…んだよ」
「いえ…アルレシアがそこまで言うとは、後で何を要求されるのかと思いまして」
「…まっ、戦後処理でのお楽しみだな。お前ら覚えてろよ」
まるで敵国のようにニヒルな笑みを浮かべてやった。
こうして、同盟はナポレオン軍の部隊を各個撃破するトラーヒェンブルク・プランを策定、いよいよフランスへの反撃ののろしを上げた。