2
一方で、バイエルンやヴュルテンベルク、ハノーファーやブラウンシュヴァイクなどが難色を示した。ドイツ地域の小国は、大陸経済があまりにアルレシアに傾きすぎるのを警戒している。
さらに、ローマ教皇領はカトリックの強い南ネーデルラントが異教徒の国に従うことに異を唱えた。
「俺は連合王国としてなら賛成やざ」
「うわ、マジかオランダ」
そしてオランダも賛成に回った。
アルレシア=オランダ連合王国という形式は、すべての当事者と列強に認められてしまったのだ。
ただ一人を除いて。
「…俺は反対だ、お荷物になるだけだからな」
「あなたの投資で復興すれば力になるでしょう」
「体よく焦土を押し付けようなんざムシがいいな?」
海外領土経営などコストが高すぎる。見合ったリターンを期待できるようなポテンシャルは、もはや今のネーデルラントにはなかった。
「俺も反対や、カトリックはカトリックでおった方が互いのためやん」
意外なところからの援軍としてスペインがそう述べた。カトリックの権威などかつてほどではなくなったが、それでもカトリック国家たちにとっては精神的な連帯の象徴だった。
特に、プロテスタントの北欧やオランダ、イギリス、プロイセンなどの伸長を見れば、カトリックはまとまることで力を維持しようと考える。
敬虔なカトリック地域であるベルギーとルクセンブルクについて、プロテスタントですらない異教徒の支配下に置きたい国はなかったし、それが新たな火種となれば、いよいよアルレシアが大陸へ武力で侵攻しかねない。
「…それでは、すべての間を取りましょう」
すると、オーストリアは難しそうな顔をしつつそう切り出した。いよいよイギリスとの共同戦線だったことが伺えた。助け船のように代案を出してくるなど、協力関係としか思えない。
「アルレシア=南ネーデルラント連合王国はどうです?南ネーデルラントには広範な自治権を。オランダは独立を保ち王冠を守り、南ネーデルラントには緩衝地帯が成立します。大半の経営を自分たちにさせればコストにはなりませんし、教皇庁としても自立していれば妥協できるでしょう」
「俺様さんせー」
「お兄さんも賛成」
「俺もそれくらいならええなって思うで」
「俺も異論はない」
即座に賛成したのはプロイセン、フランス、スペイン、イギリス。ロシアは興味がなさそうなままだ。
「俺も賛成や」
当事者の一人、オランダも頷く。さらに後ろから、別の当事者も声を上げた。
「ウチも賛成や!自治権てええなぁ」
「自分もそれならいいと思います」
併合されるベルギーとルクセンブルクだ。2人はオランダに併合されるより自治権が望めることから前向きだった。
ドイツ諸国も、オランダが別であることから賛成に回り、ローマ教皇領も自治権があるならと認めた。
アルレシアは内心で舌打ちをしつつ、否を口にする。
「俺の家から最寄りの大規模港湾はブルージュかアントウェルペンだ。そんな距離で連合王国なんざ合理的でないにもほどがある」
「飛び地歴200年の俺からすれば近えと思うけどな?」
そんなアルレシアに、ブランデンブルクとの飛び地を長らくやって来たプロイセンが諫めるようなことを言ってきた。ドイツは飛び地上等な継承をしてきたのは確かだ。
「陸上における飛び地とは訳が違う。何より俺へのリターンがねえだろ。オラ、早く協定結ばせろ。ラインもエルベも開放してもらうぞ」