林間合宿と混乱−4
自ら施設を出ていくのだ、絶対に会敵しないようにしなければならない。そのために、灯水は雲と見間違えるよう高度100メートル付近で飛行することにした。
ここまで飛べば、蒸気がパッと見雲に見えるかもしれないし、たとえ灯水に気づいてもそう攻撃してこれない。
灯水は施設から一気に高さ100メートルまで上がると、火災に向かって飛んでいく。飛びながら水を放つのは、それこそ個性伸ばし訓練で練習したことだ。
眼下の森に注意しながら飛んでいると、再びテレパスが届いた。いったん止まってホバリングしながら聞く。
『A組B組総員、戦闘を許可する!!』
その瞬間、眼下の森に見える道で氷結が煌めいた。間違いなく焦凍が交戦しているのだと分かる。
火災はもちろん気になる。だが、実際に起きている戦闘の方が優先だろう。灯水は深く考える前に体が動くのを感じた。やはりどうしても、焦凍となると思考より行動が先んじてしまう。
蒸気を噴出して一気に道に向かう。よく見ると、氷結によって敵らしき男が出した無数の刃を防いでいるようだった。男に向かって空中から氷結を放つと、男は簡単に避ける。その代わり、焦凍たちに向かっていた刃は引っこ抜かれた。
「灯水!!」
「焦凍!大丈夫!?」
灯水はすぐに焦凍のつくった氷壁の後ろに降り立つ。
焦凍は背中にB組の円場を背負っていて、隣には爆豪がいる。やはり混乱の中でA組B組が入り混じっているようだ。円場は意識を失っており、焦凍の動きを封じている状態である。
「てめぇ施設にいたんじゃなかったんかよ!?」
「火災が見えてたから消そうと思って飛んできたら、戦ってるのが見えたから」
爆豪に答えると、また脳内にテレパスが届く。
『敵の狙いの一つ判明!生徒の”かっちゃん”と灯水君!”かっちゃん”はなるべく戦闘を避けて単独では動かないこと!分かった!?”かっちゃん”!灯水君は施設にとどまって!』
「えっ、俺!?」
「不用意に突っ込むんじゃねぇ、聞こえてたか!?お前狙われてるってよ。てか灯水は誰にも言わずに施設から出てきたのか!?」
「…言ってないかも」
「かっちゃかっちゃうるっせんだよ頭の中でぇ…!」
爆豪はキレている。この呼び方は緑谷特有なので、それもあるだろう。焦凍は灯水も狙われているということで焦った顔をしていた。
「灯水は先に施設に戻った方が…」
「耐えなきゃ…仕事しなきゃ…あーーーーーー肉見せて」
しかし、敵の男は歯から刃を伸ばしながらぐるりと回転してこちらを見据える。動きにムダがなく、こちらを認識する気配に隙はない。
「…空中であの刃を避けられるか自信ないな、可動域も分かんないから…」
どこまで伸びるか分からない刃を前に空中戦は圧倒的不利だ。まさか自分も狙われているとは思わず、飛んで火にいる夏の虫とはまさにこのことである。
男は黒い服に全身をベルトで覆われている。あれはこの国の敵用に開発された新しい死刑囚の服装だ。死刑になるほどの罪を重ねた男だ、実力は今までとは比にならないだろう。
男は刃のいくつかを地面に突き立てることで宙にぶら下がっている。その状態で、大量の刃をこちらに向けてきた。途中でいくつにも分岐し、こちらに届く数は無数になる。
「俺も氷結する!」
「ああ!」
短く言うと、灯水と焦凍は2人で氷結を使った。一気に広範囲に分厚い氷壁を出現させるが、それでも何本かは突き抜けて一歩手前まで伸びてくる。30メートル近く離れているのに、ここが精一杯でこれ以上近づけない。