林間合宿と混乱−5
「焦凍、結構氷結使ったでしょ」
「ああ…でもまだ、」
「おいもう一発来るぞ!」
右側に霜が降りた焦凍に心配するも、爆豪の鋭い声に意識を前に向け、同時にまた大きな氷結を放つ。防御の壁を作りつつ男まで届かせたいが、刃の勢いによって破壊されて届かない。
さらに一部の刃は突き抜けて焦凍の足元をかすった。
「っ、!」
「大丈夫!?」
「ちょっと掠っただけだ」
それにしても、遠距離の氷結攻撃でも届かないとなると打つ手がない。分岐の仕方が力の作用を完全に把握しており、氷の攻撃ですら破壊されてしまうのだ。
「近づけねぇ!くそ!最大火力でぶっ飛ばすしか!」
「だめだ!」
灯水は防御の氷を次々と分厚くしながら刃の攻撃をなるべく捉える。一方で爆豪は苛立って爆破を提案するが、焦凍が反対する。周りの木に燃え移ることや、爆炎による視界不良が心配されるからだ。
「木ぃ燃えてもそっこー氷覆え!!」
「爆発はこっちの視界も塞がれる!仕留めきれなかったらどうなる!?手数も距離も向こうに分があるんだぞ!」
どうにもならない状況に歯がゆく思っていると、森の方から木々の倒れる轟音が響いてきた。何かが近づいてくる。
同時に、緑谷の声が聞こえてきた。
「いた!氷が見える、交戦中だ!」
そちらを見ると、なんと木々が次々とへし折られながら宙を舞い、それを逃れるように障子が緑谷を背負って走ってきていた。
「爆豪!轟!どちらか頼む、光を!!」
何を、と思った瞬間、攻撃モーションに入った敵の男が突如として現れた真っ黒な巨大な手に押しつぶされた。氷壁を破壊して現れたのは、巨大化した黒影だ。
常闇はその影にのまれている。
「障子、緑谷と…常闇!?」
焦凍も気づき、混乱する中で障子の触手の先の口が喋りながら近づいてくる。
「速く光を!常闇が暴走した!!」
その触手に向かって黒影が手を振り下ろし、轟音とともに地面が抉れる。直前に障子は触手を戻していた。夜や暗いところでは黒影の制御が難しくなるとは聞いていたが、暴走した姿は怪物だ。
「見境なしか、よし炎を…」
「待てアホ」
焦凍が炎によって光を発生させようとすると、爆豪が制止する。その視線をたどると、起き上がろうとする敵の姿。
「その子たちの断面を見るのは僕だああああ!!横取りするなああああ!!!」
「強請ルナ、三下!!」
刃を向ける男をものともせず、黒影は男を思い切り掴む。ミシミシと骨が鳴る。
「見てぇ…!」
そう爆豪が呟いたその次の瞬間には、黒影はその手を伸ばし木々に男を叩きつけながら薙ぎ払う。森の片側はその一振りで数十本の木々が折られて倒れた。
男は反対側の木に叩きつけられ、完全に意識を失った。
黒影は唸り、なおも攻撃を続けようとしたが、そこで爆豪と焦凍がそれぞれ爆発と炎によって光を生み出した。黒影は先ほどまでの怪物しかりとした呻きはどこへやら、「ひゃんっ」という情けない声を上げて常闇の中へと戻っていった。
常闇は荒い息で地面に膝をつく。焦凍は地面に置いた円場を背負いなおす。
緑谷と障子から聞くところによると、ペアだった障子と常闇は最初にあの刃男に襲われ、そこで障子の複製腕のひとつが切り落とされた。その怒りと動揺で常闇は黒影を解き放ってしまい、制御できずにいた。
それを障子と緑谷が交戦中のこちらまで誘導し、敵を倒しつつ光によって制御させたのだという。緑谷はまた無茶な戦いをしたのかボロボロで、見るからに重傷だった。障子に背負われたままなのはそれが理由だろう。