神野の悪夢/前編−9




「言っとくが!俺らはまだ戦闘許可解けてねぇぞ!!」


誘拐されて教師とコンタクトを取っていないのをいいことにそういう解釈をする爆豪。みみっちい。


「自分の立場よくわかってるわね、小賢しい子…!」

「刺しましょう!」


オカマが身構え、カウンターの内側にいる女子高生は緩く笑いながら殺気を滲ませる。


「いや…バカだろ」

「その気がねぇなら懐柔されたフリでもしときゃいいものを、やっちまったな」


荼毘とハットは呆れたように言うが、爆豪はまたしても鼻で笑う。基本的に人を見下すスタイルだ。


「したくねーもんは嘘でもしねんだよ俺ァ…こんな辛気臭ぇとこ長居する気もねぇ」

「俺のことは頭になしかこの野郎」

「あ?お前は俺に合わせてフォローしてろや」

「やっぱ爆豪君は敵連合のがあってるんじゃない」

「お前から殺してやろうか!!」


集中は解かずにそんな話をしていると、死柄木が思い切りこちらを睨んできた。その殺気は甚だしく、思わず口をつぐんで気圧される。


「手を出すなよお前ら…こいつらは、大切なコマだ…」


死柄木は顔に手を付けなおすと、そう言って他のメンバーをけん制した。やはり、しばらくは向こうはそういう認識でいてくれるらしい。


「できれば…耳を傾けてほしかったな…君らとは、分かり合えると思ってた…」

「ねえわ」

「ほんとだぜ灯水…お前ならヒーローに縛られる苦しみを分かってると思ってたがな」

「それとこれとは別」


爆豪も灯水もすげなく返す。ごく簡単なことだ。爆豪は憧れたものがあり、灯水は傷つけたくないものがあった。ただそれだけだ。


「仕方がない…ヒーローたちも調査を進めていると言っていた…悠長に説得してられない。先生、力を貸せ」

『良い判断だよ、死柄木弔』


すると聞こえてきた不気味な声。テレビの方からだ。まだ何者かが控えているらしい。近くにはいないようだが、恐らく黒幕と見ていいだろう。


「先生ぇ…?てめぇがボスじゃねぇのかよ、白けんな」


爆豪は不敵にそう言うが、不安定要因が増したのと、「力」を貸せというのが気になる。敵は雄英に立て続けに襲撃を成功させ、ステインの一件で社会に動揺を与えた用意周到なブレインだ。何が来るか分からず、2人は内心で焦っていた。


「黒霧、コンプレス。また眠らせてしまっておけ」


ハットの男、コンプレスはため息交じりに了承する。またあの玉に閉じ込める気か。


「ここまで人の話聞かねーとは、逆に感心するぜ」

「聞いて欲しけりゃ土下座して死ね!」


なおも煽る爆豪。あの黒霧のワープがある以上、単純な脱出は難しい。灯水が氷結で固めても意味がない。そう思ってじりじりと後退しているときだった。

背後の扉がコンコンとノックされる。


「どーもォ、ピザーラ神野店ですー」


そんな気の抜けた声がした、次の瞬間、左側の壁が突然吹き飛んだ。バラバラに砕けるコンクリートから現れたのは、夜でも目立つヒーローコスチュームに身を包んだ、絶対的強者。


「なんだぁ!?」

「黒霧、ゲート…!」


トカゲ男が瓦礫とともに吹き飛ばされ驚いていると、死柄木は素早く黒霧に指示を出す。それより先に、突然木の枝のようなものが太く伸びてきて、敵連合の全員を捉える。


「先手必縛、ウルシ鎖牢!!」

「んなもん…、っ!?」

「逸んなよ、おとなしくしておいた方が身のためだぜ」


木の枝ような捕縛を行ったのはヒーロー・シンリンカムイ、そして炎を燃やそうとした荼毘を一蹴りで気絶させたのはグラントリノ。


「もう逃げられんぞ敵連合…なぜって?我々が来た!」


そして、壁を吹き飛ばして圧倒的威圧感を出しているのは、オールマイトだった。


115/214
prev next
back
表紙に戻る