気付けなかったこと−10
しばらくくつろいでいると、どんどん片付けが終わった男子たちが降りてくる。瀬呂や切島に「じじくせぇぞ〜」とからかわれたので今後復讐するとして、ほぼ全員が集合すると本当に一緒に暮らすんだなと実感が沸く。
わいわいと騒がしい男子のところに、女子たちもやってきた。
「男子部屋できたー?」
「うん今くつろぎ中」
芦戸を先頭に連れ立ってくる女子に、上鳴が「ひょー女子」と変な感想を漏らす。ソファー席に固まる男子たちに、芦戸と麗日は目を見合わせた。
「あのね!今話しててね!提案なんだけど!お部屋披露大会、しませんか!?」
***
女子たちの提案、もとい強制的な査察が始まった。
ぞろぞろと女子が男子2階に向かうと、面白そうだと上鳴もついていき、なぜか全員で向かうことになった。灯水も尾白たちと一緒に向かうと、まず最初に緑谷の部屋が開け放たれる。拒否権はなかった。
「オールマイトだらけだ!オタク部屋だ!」
「憧れなんで…恥ずかしい……」
いつでも見れるだろうに、部屋はどこもかしこも、ちょっとした小物までオールマイトだ。原色の色合いが多いコスチュームのため、自然と部屋も蛍光色だ。麗日の他意のないオタク部屋呼ばわりが緑谷のライフを抉る。
続く常闇の部屋は、芦戸と葉隠が強制的に開いたが、なんというか闇だった。骸骨や蝋燭、剣など(中学)男子心をくすぐる感じである。
「このキーホルダー俺中学んときよく買ってたわぁ」
切島は壁にかけられた、よく高速道路のSAや土産物屋に売っている無意味に格好いい剣のキーホルダーを見てそう言った。やはり他意のない言葉が常闇を抉る。
次の青山の部屋は、天井と机両方にミラーボールがあり、光を反射するキラキラとした置物が多い。とにかく光源の多い部屋は常闇とは真逆だ。
「思ってた通りだ」
「想定の範疇を出ない」
それを葉隠と芦戸は淡々とそう評した。青山のスーパーポジティブなところをもってしても無言になっている。
そして峰田の部屋をスルーし3階に上がる。最初に入ったのは尾白の部屋だ。
「わぁー普通だぁ!」
「普通だぁすごい!」
「これが普通ということなんだね…!」
芦戸や葉隠、麗日の容赦ない言葉に尾白は涙目だった。尾白も降りてくるのが速かったので、灯水と同じく基本形を維持した形だ。
「すごい尾白君、俺の部屋と逆に間違い探しできるくらい似てる。ほんと、相違点をあえて見つけ出そうとするのが難しいくらい酷似」
「灯水!俺たち通じ合ってるな…!」
尾白の部屋があまりに灯水の部屋と酷似していたのでそう言うと、尾白は感極まったように灯水を抱きしめた。尻尾まで背中に回されて、謎の包容力を感じる。
すると焦凍がそれを無言で引きはがした。何も言わずに尾白から灯水を離して自身の腕の中へ。
「…何してんの焦凍」
「…別に」
悪びれずにそう返す焦凍に、尾白は呆れたようにため息をついて先に進む一同に合流した。灯水も焦凍の腕を引っ張ると、ようやく焦凍も動き出す。ずっと興味なさげだったのだが、突然どうしたのだろうか。
続く飯田の部屋は委員長らしく難しい本が部屋の様々な棚に並び、メガネが大量にストックされていた。
次の上鳴の部屋は多趣味な彼らしいチャラいもので、スケートボードやバスケットボールなどいわゆるモテそうなものが多い。飯田と上鳴も対極なような部屋だった。
そして隣の口田。その部屋は、シンプルながら動物をモチーフにした可愛いデザインの小物があり、何よりも白いウサギがちょこんと床にいた。女子の歓喜の声が響く。芦戸と麗日が愛でるウサギは人に慣れているのか、口田の世話がいいからか、とてもおとなしくしていた。
「こ、口田君…俺もあの子…撫でていい…?」
そのあまりの可愛さに、灯水は口田に許可を取る。こくこくと頷いてくれたので、察してどいてくれた芦戸に代わって床に胡坐をかくと、ウサギをやんわりと抱きかかえた。
温かく、小刻みに震えている。口か鼻かをひくひくとさせ、つぶらな赤みがかった目がこちらを見ている。耳を撫でるように頭を撫でると、モフモフとした感触が手を滑った。これがアニマルセラピーだ。
ウサギの前足あたりから抱っこして顔の正面にそっと持ってくると、白い毛に赤い瞳が、灯水の白髪に赤いメッシュという色のバランスに似ているような気がした。
「ねぇ、俺となんか色合い似てない?」
そう言いながら扉付近を見上げると、まず焦凍が無言でスマホをこちらにかざし、パシャパシャパシャとものすごいシャッター音を響かせているのが見えた。その横でスマホを同様にかざしてこちらに向け続けるのは尾白。そして少し位置をずらしてカメラマンのごとくトリッキーな撮り方をするのは切島と上鳴だ。
なんだこいつら、と思って視線をずらし、麗日を見上げる。麗日は目を閉じて残念そうに首を横に振った。手遅れですのサインだった。