気付けなかったこと−11


ウサギの件は後で処すとして、一行は口田の部屋を出た。そこで、ふと上鳴が顔を真面目にして言い出したことがきっかけだった。

女子たちがあまりに容赦なく評価するものだから、上鳴だけでなく真面目な尾白、常闇、そして青山なども「釈然としない」と同意し、そこに峰田が乗って女子を焚きつけた。
結果、A組一同のセンスを問う「部屋王」なるものを決める大会が引き続き行われることになったのだ。

乗り気なのはごく数名で、多くの男子たちは鼻をほじったり爪を弄ったりスマホを見たりと興味なさげだった。それでもほぼ全員がきちんと行動をともにしているのは謎の連帯感である。

まず全員、引き続き男子部屋を評価するため4階に上がる。ここは1部屋空室になっている上にすでに爆豪が寝ているため、切島と障子が対象だ。

とりあえず切島の部屋。トレーニング用品が目につき、壁には漁船のような旗が飾られ、そのほか男臭いものが並ぶごちゃごちゃとした部屋だった。「彼氏にしてほしくない部屋2位にありそう」という葉隠の言葉に、切島も涙目だ。

そして障子、「面白いものはない」と言って見せた部屋は、面白いものどころか備え付けの家具すらなかった。ローテーブルを布団のみである。焦凍ですら驚いていた。いわゆるミニマリストというやつだ。道理で尾白と2人、片付けが速かったわけだ。

いよいよ5階へ上がる。
まずは灯水と反対側の端にある瀬呂の部屋ということでそちらに向かうと、意外にもセンスの良い東南アジア風のテイストに統一されていた。まさにインテリアという感じで、女子も喜ぶ。こういうのが本命だろう。

そして次は、焦凍の部屋だ。女子たちが目に見えて緊張する。灯水もまだ見ていないため、焦凍がどういう風にしたのか気になった。


「さっさと済ましてくれ、ねみぃ」


そう言って扉を開けると、芦戸と瀬呂が叫んだ。


「和室だ!!」

「造りが違くね!?」


なんと焦凍の部屋は純和風。旅館の一室のようだ。調度品や壁の飾り、電気カバーまですべて和風に統一され、床は畳が張られている。
ベランダに至っては木組みの襖が作られ、その横に小さな床の間のようなものまであった。内側にせり出す形でこうした新しい構造を作ったのだろう。


「実家が日本家屋だからよ、フローリングは落ち着かねぇ」

「理由はいいわ!当日即リフォームってどうやったんだよ!?」

「………頑張った」

「なんだよこいつ!!」


上鳴と峰田にツッコミを入れられる焦凍だが、言葉通り頑張ったのだろう。それにしても、フローリングに慣れないのは灯水とて同じだ。


「いいなぁ、俺も畳がいい」

「じゃあ一緒に寝るか。狭くて布団は一つになるけど」

「いいの!?焦凍がいいならぜひ!!」

「おう、そう言うと思ってお前の分の枕あるぞ」

「焦凍大好き!!!」


準備の良い焦凍に思わず抱き付くと難なく受け止められる。男子たちはそれに色々と察して「はいはい」と部屋を後にする。
一応2人も後に続くと、砂藤の部屋ではシフォンケーキを焼いていたようで、おいしそうな匂いとともに一切れ分けてもらえた。めちゃくちゃ美味しかったので、砂藤もまたギャップ男子ということになる。

口々に「うまっ」と言いながら、当然とばかりに灯水の部屋に向かう一同。そこに後ろから灯水は声をかけた。


「あー、俺の部屋は良くない?尾白君の部屋と間違い探しするようなもんだよ?」

「あ、そうなんだ」


芦戸がそれならいいかと頷くが、せっかくなら、という声も上がる。


「えー、俺早く焦凍と寝たいから次いこ」


それに対して灯水がはっきりと言った瞬間、一気にクラスがざわついた。特に男子が「!?」とこちらを凝視している。どういうことか分からずにいると、まだくっついたままの焦凍がなぜか照れたように言った。


「そういうのは、まだ早いんじゃねぇか」

「そっか、まだ入寮初日だもんね…」

「あわわ、絶対2人とも違う意味だよ…!」


さらにざわめくクラスを横目に、緑谷が慌て、焦凍に対して「単なる一緒に寝るってことだと思うよ!」と言っていた。逆にどうするのかという話だが、納得したらしい焦凍が一緒に寝ることを許可してくれたのでどうでもよくなった。


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