新たな双子のかたち−5


翌日、いくらかすっきりした状態で灯水は登校した。ちなみに昨夜も焦凍と寝たが、疲労からかすぐ眠ることができた。問題そのものは何も解決していないが、それは考えることができる時間に考えればいい。

コスチュームに着替え、今日も体育館γで必殺技の訓練を行う。
エクトプラズムとともに、超臨界水と間欠泉の攻撃について練習していくが、超臨界水の方が詰まってきてしまった。


「なんか…これ以上範囲広がらないです…」

「超臨界水ノ状態ヲ維持スルノガ難シイナ。コレバカリハ、コスチュームニ頼ルホカナイ」

「そうですね、ちょっと相談に行ってきます」


高温高圧の特殊な状況でしか存在できない超臨界水。灯水の手から30センチ以上離れると、どうしても状態を維持できずただの水と化してしまう。臨界を突破した状態を維持するためには、コスチュームの方で工夫が必要だろう。

灯水はエクトプラズムに断りを入れてから、本校舎のサポート科に向かうことにした。必殺技に合わせてコスチュームの改良を行うよう相澤に指示されているのだ。
もう緑谷や飯田は相談に行ったらしいから、話は通っているだろう。

サポート科のラボであるDevelopment Studioという部屋へやってくる。扉は開いていて、様々な機材がごったになった部屋にはサポート科担当のヒーロー・パワーローダーと、体育祭で目立っていた奇才、発目がいた。発目の隣には上鳴もいて、上鳴もコスチュームの件で相談に来ているようだった。


「失礼します、A組の轟です」

「あぁ、今日は君も来たんだね」


上半身裸でショベルカーのようなものを頭に被ったパワーローダーが片手を上げて挨拶すると、発目がぐるりとこちらを向いた。ズームという個性だけあって、その目は照準器のような模様が浮かんでいた。


「あなたは体育祭3位の!名前は忘れましたが!」

「ど、どうも…俺は轟、よろしく」

「あなたもコスチュームの件ですね!?あなたのように汎用性の高い個性だと腕が鳴ります!さあどんな無理難題でもどうぞ!!」


すごくぐいぐいと来る女子だ。上鳴は話をパワーローダーと詰めている。実際に改良免許を持っているのはパワーローダーなので、最後の話は彼に通す必要がある。発目は生徒ではあるが、雄英でもきっての天才ということで、パワーローダーの許可が下りれば発目の案も採用されるという。


「発目さん、超臨界水って分かる?」

「ええもちろん!臨界点を突破した状態の水のことですね!」

「俺、それを出せるんだけど、攻撃にするには近接しかなくて…」


もちろん近接攻撃として使っても良いのだが、基本的に灯水は遠距離攻撃型だ。フィジカルもそう強くないため、接近戦に持ち込むことは避けたかった。


「なるほど…しかし超臨界水が臨界状態を維持するには、圧力22.12MPa、温度374.15度以上をキープする必要があるわけですが、その状態を提供できる装置を持っての戦闘は現実的ではないですし」

「はぁ…」

「というか、あなた、超臨界水を人に使うつもりですか?超臨界水は有機化合物に対して超臨界水酸化反応を起こし完全に酸化している二酸化炭素ですらさらに酸化させるわけですから人に触れれば数秒で人体は水と二酸化炭素に分解されてしまいますよ?」

「え、なんて?」

「しかも体育祭で拝見したときはたまたま有機物を含む化合物で生成された金属のロボットであったがために超臨界水が応用できましたが、本来は超臨界水では無機物は溶かせませんし!」

「分かりやすくお願い」

「これだから文系は!」


発目の説明がまったく分からずにいると、見かねたパワーローダーが分かりやすく超臨界水について教えてくれた。今まで詳しくない灯水や相澤、エクトプラズムも勘違いしていたのだが、実は超臨界水は普通の水よりも金属を溶かせないのだという。


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