新たな双子のかたち−7
灯水が発目と話し終えると、上鳴もちょうど終わったらしく、2人で戻ることにした。「難しそうな話してたなぁ」と感心したように言われたが、灯水にはほとんど理解できていなかったので曖昧に頷いた。
そうやって廊下を歩いていると、昨晩のことを思い出す。ちょうど2人きりでもあるので、訓練時間中にこういうことを話すのは気が引けたが、報告することにした。
「昨日、ありがとね」
「おお、別にいいって!もう聞いてみたのか?」
「うん、なんか押し倒されたから…」
「へっ!?」
上鳴の部屋から出たところを見られたという話をすると、上鳴は納得しつつも「轟こえぇ」と半分ふざけて言った。半分は本気で怖がっているだろう。灯水だって怖かった。
「なんともなかったんだろ?」
「うん、俺もビビってたら焦凍が謝って来た。そのときに、俺に対してムラッとするのか聞いたら、するに決まってるって。2,3回くらいはっきり抱きたいって言われたし」
「あいつやるな…で?灯水はどう思った?」
「どう…」
焦凍にそう言われたときの気持ちを言葉にしようとすると考えあぐねる。とりあえず恥ずかしさが先行したが、気持ちとしてはどうだったのか。
「…よく、わかんない。焦凍もゆっくり考えてくれって言ってた。俺はまだ、双子だってことが引っかかる…」
血がつながっているのに、恋愛をするなんて、と思ってしまうのだ。さすがにこれくらいは皆同じ立場だったら迷うと思う。
「そればっかりはなぁ、灯水が決めることだしな。でも、俺的にはそんな深く考えてなくてもいんじゃねっていう風にも思うぜ。お前らの形でいいじゃん」
「俺らの…」
「そっ。お前らは特殊な人生歩んできたわけだし、世間の普通とか気にしなくていいだろ」
確かに、灯水たちはおおよそ普通とは言えない家庭環境で普通とは言えない悩みを抱えてきた。焦凍も、灯水も。すべて今年解決したばかりだ。
もともと男どうしだし、さらに双子という罪を重ねるのもいいのかもしれない。というか、昨日からさりげなく上鳴にはとんでもないことを話している気がする。
「てかごめんね、なんかすごく変な話してるよね」
「べっつに〜?つか灯水はともかく轟の気持ちは知ってたしな」
「え、そうなの?」
「おう。合宿の、ありゃ1日目だったな、灯水が寝た後に、俺が轟に好きなヤツとかタイプとかないのかって話吹っ掛けたんだよ。そしたらあいつ、そこらへんの女よりお前の方が可愛いって言ってさ。もうお察しだよな」
「そんなことが…」
杞憂だったようで、すでに焦凍のことは上鳴は知っていたようで、だからそう抵抗なく昨日も話を聞いてくれたのだなと納得する。
「てか、合宿中なら他の男子も…」
「知ってるぜ。切島とかみんな」
「なんだって…」
特に嫌というわけでもないが、さすがにちょっと恥ずかしい。だが、それでも態度の変わらないA組男子たちの優しさを嬉しく感じる気持ちの方が大きかった。
「またいつでも相談乗るけどさ、一番大事なのは灯水が納得することだと思うぜ。押し倒されたのだって、ほんとは結構あぶねぇぞ。嫌ならきちんと言わねぇとつらいからな」
「…うん、ありがとう」
上鳴はとても親身になってくれるし、しかも灯水が考える上でヒントになることをきちんと言ってくれる。無下にしていた自分が信じられないくらいだ。
「上鳴君と付き合ったらなんかめっちゃ幸せにしてくれそうだよね」
「そう言われると全力で幸せにしたくなるからやめて、俺は女の子が好きなんだって」
「あはは、ウケる」
「笑いごとじゃないなんだよなぁ…」