新たな双子のかたち−8


その日も訓練を終えて寮に戻り、夕食を食べてから緩やかな休憩の時間になった。それぞれ思い思いに過ごしている中で、灯水は落ち着いて焦凍とのことを考え始めた。

テレビが映し出されるソファー席に座り、ぼうっと眺めながら上鳴に言われた通りに考える。
自分が納得する、2人の形。もともと双子で、兄弟で、家族だ。クラスメイトでもあるし、新たに恋人という可能性も出てきたわけだ。焦凍は性的な側面も見せてきたから、恋人というのが一番求められている形なのだろうが、急にそうやって接すると言ってもどうすればいいか分からなかった。

そうやって悶々としていると、突然肩を叩かれてびくりとしてしまった。


「わっ、」

「おお、驚かせてわりぃ」


後ろから肩を叩いてきたのは切島だった。他にソファーに人影はない。どうやら一人になっていたようで、テレビも知らない深夜アニメになっていた。


「見てんのかなあって思って」

「や…ぼーっとしてた」

「だよな」


さすがにバレていたらしい。切島は苦笑すると、隣に男臭くどかりと座った。テレビを消して、共有スペースは沈黙が落ちる。


「もう11時だぞ、皆部屋戻った」

「え、マジか…全然気づかなかった」

「…悩み事か?」


切島は心配そうな顔で灯水を覗きこんできた。その目は心配だという気持ちが前面に出ていて、申し訳なくも嬉しくも思う。そういえば切島も家に来てくれた。上鳴と同じく人付き合いという点では上手だし、上鳴とは違って色々と本質を考えて見抜けるヤツだと思う。話を聞いてみてもいいかもしれない。多角的な考え方をしてみたかった。
昼間、上鳴が教えてくれたように、切島も焦凍の気持ちを知っているなら話は早い。


「…うん、そう。あのさ、よければ聞いてくれるかな」

「っ!おう!なんでも聞くぜ!!!」


先日の上鳴同様、切島も嬉しそうにしてくれた。相談を持ち掛けるだけでこんな顔をさせるとは、灯水はどれだけ彼らの優しさを無視していたのだろう。罪悪感が沸くが、それはあの家に来てくれた日に互いに追及しないことにしたのだ、今は灯水の悩みをただ打ち明けるべきだ。


「焦凍にさ、前に言われたことがあって…」


そして灯水は上鳴にしたのと同じ話をした。焦凍の言葉に驚き、意識してしまって上鳴に相談したところ、ムラッとくるかが判断基準になると教えてもらい、確認したらその通りだったということも話した。


「そんで、今日上鳴君に、俺自身が納得できる、俺らなりの形を考えろって言われたんだ」

「な、なるほど…合宿で聞いたときより進展したんだな」

「気分悪くしたらごめんね」

「まさか!でも、そうだな、それは悩むよな」


切島は、兄弟からの関係性の変化という大きなことの大変さを察してくれていた。それだけでも救われる気がする。


「でも、灯水は意識したんだろ?」

「うん」

「それって、わりとお前にとっても恋人って関係性もナシじゃねぇってことだろ?」

「…そういうことなのかなぁ」

「じゃあ俺とか砂藤とかにドキッとするか?」

「いや…むしろむさ苦しい…」

「うん、その一言余計だぞ」


こつ、と頭を軽く突かれて軽く謝る。だが実際、あのとき風呂で焦凍に意識してしまったときと同じような感覚は他の男子に抱かない。


「でも焦凍めちゃくちゃイケメンじゃん、同じ男でもドキッとしない?」

「しねぇわ」


焦凍ほどのイケメンなら皆そうなるのではと思ったが、切島は即答だった。

と、そこへ、緑谷がコップを持って降りてきた。どうやらプロテインを飲んでいたのを洗いに来たらしい。「あれ、どうしたの」と不思議そうに見てくるので、灯水は試しに聞いてみることにした。


「緑谷君はさ、焦凍にドキッてすることない?あんなイケメンだし」

「へぁ!?何言ってんの灯水君!ないよ!」

「マジかぁ…」

「むしろ僕は灯水君の方が…って何言ってんだ自分ッ!!」


緑谷はさっと顔を赤くするが否定する。続いて灯水の方がと言うものだから首を傾げるとさらに慌てていた。それを見て切島も苦笑する。


「まぁ、分かるぜ緑谷。轟は雄って感じで何も感じねぇけど、灯水はなんかこう…くるもんがあるよな」

「えと、うん、黙秘で!!!」

「そうなの?」


腕で顔を隠す緑谷をもう一度笑ってから、切島はこちらに向き直る。笑みはありつつも真剣な声音で口を開いた。


「ま、轟と話してみろよ。2人の関係は2人で決めることであって、灯水だけで決めるもんじゃねぇよ」

「あ、そっか」


言われてみれば確かにそうだ。まずは灯水で答えを出すものと思っていたが、2人のことなのだから2人で考えてもいいかもしれない。
緑谷は何やらブツブツと言いながらキッチンに向かい、切島もあくびを漏らす。さっそく、灯水は焦凍と話そうと意思を固めた。


「ありがと、切島君。緑谷君も急にごめんね」

「おう!またなんかあったら言えよ!」

「え、うん!」


よくわかっていない緑谷には、きちんと落ち着いたら話をしようと思う。


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