焦凍、焦燥、衝動−4


2学期が始まってから3日目。
緑谷が爆豪より一足先に復帰した。「ご迷惑おかけしました!!」とやたら意気込んでいた。この3日間で開いた差を取り戻そうという決意らしい。

座学の授業を終えて、午後のヒーロー基礎学の時間になる。この日はインターンの話があると朝に相澤が言っていたので、全員教室に待機している。
後ろの葉隠と行けるのかどうか話していると、相澤が教室に入って姿勢を正す。


「じゃ、緑谷も戻ったところで本格的にインターンの話をしよう。入っておいで」


相澤はさっそく、前の扉に向かって呼びかけた。全員の意識もつられてそちらに向かう。前にも体験談と言っていたので、上級生だろうか。


「職場体験とどういう違いがあるのか、じかに経験している人間から話してもらう。多忙な中都合を合わせてきてくれたんだ、心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3人、」


前の扉がす、と開く。そこから入って来たのは、前髪を上げた金髪の大柄な男子、長い藤色の髪がカーブしている女子、そして紫がかった髪を立たせた男子の3人。


「通称、ビッグ3のみんなだ」


3人は相澤の横に1列になってこちらに向き直る。先頭の男子や女子はニコニコとしているが、後ろの男子は口をもにょもにょとさせて居心地が悪そうだ。
ビッグ3、と呼ばれる生徒がいるということはウワサに聞いていたA組の生徒たちもざわつく。


「じゃ、手短に自己紹介頼む。天喰から」


びくり、と後ろにいた男子が震えると、ポケットに手を突っ込んだまま思い切りクラスを睨みつけた。その眼光は鋭く、灯水も少し気圧された。これがビッグ3の風格か、と思った瞬間。


「だめだミリオ…波動さん…ジャガイモだと思って臨んでも頭部以外が人間のままで依然として人間にしか見えない…」


そう言ってガタガタと震え始めると、天喰と呼ばれた男子生徒は顔を青ざめさせる。


「どうしたらいい…言葉が、出てこない…頭が真っ白だ、つらい、帰りたい……!!」


すると天喰はくるりと回ると黒板に頭をつけて完全に背を向けた。声に出さずとも全員困惑を隠せない。それを拾うように、女子が口を開いた。


「あ、聞いて天喰君!そういうのノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね!不思議!彼はノミの天喰環、私は波動ねじれ。今日はインターンについてお話して欲しいと頼まれてきました」


笑顔のまま、一切の悪気も悪意も感じられない言葉が天喰に突き刺さる。完全に追い打ちだ。
波動という女子はそのまま続けるのかと思いきや、すぐ目の前にいた障子のところに向かう。


「けどしかしねぇねぇ、君はなんでマスクを?風邪?おしゃれ?」

「これは昔…」

「あらあとあなた轟君だよね?ね!?なんでそんなところを火傷したの!?」

「っ、!?それは……」


障子が答える前に興味は焦凍に移り、さらに焦凍が話す前に芦戸、峰田、蛙吹とその関心は次々に移っていく。波動の天然っぽい様子に上鳴あたりは喜んでいるが、波動は尾白の席の前に膝をついて「尻尾で体は支えられる?ねえ教えて気になるの!」とゴーイングマイウェイである。
それを見て相澤は最後の男子に目を向けた。


「合理性に欠くね…?」

「安心してくださいイレイザーヘッド!大トリは俺なんだよね!!」


相澤にとって好ましくない展開に、その合理主義を知っている様子の男子は焦る。しかし笑顔は忘れない。
そしてクラスに向けて体を傾けて、手を耳に当てて大きな声を出した。


「前途ーーー!?」


どうやらレスポンスを待っているようだ。コール&レスポンスだとすれば続く言葉は限られる。恐る恐る灯水は返答してみた。


「多難〜…?」

「おっ!!ありがとう轟君兄!!だがしかし掴みは大失敗だ!!」


はっはっは、と笑う男子は確か、先ほどミリオと呼ばれていた。ミリオの意図していたレスポンスで合っていたようだが、冷静に考えると意味が分からない。
困惑が高まるばかりで、A組の生徒のざわつきに気づいたミリオは笑うのをやめて真顔(に近い笑顔)になる。


「まぁ何が何やらって顔してるよね。必修てわけでもないインターンの説明に突然現れた3年生だ、そりゃわけもないよね」


そして何やら考え始めたミリオは、今年の1年生は元気がある、と言いながら独り言で考えを進めていく。何やら感じ取ったらしい天喰がミリオの名前を呼ぶが、ミリオは聞かずに元気よく腕を振りかざした。


「君たちまとめて、俺と戦ってみようよ!!」


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