焦凍、焦燥、衝動−6


蒸気で空中に飛び出した灯水は、そのまま近接隊の輪の中に飛び込んだ。ミリオは追わずに、他の遠距離隊を次々と攻撃していく。いずれも腹パンだ。鳩尾にクリーンヒットしていく容赦ないパンチに、どんどん遠距離組の生徒が地面に倒れていった。

灯水は、咄嗟に近くに着地するのを選んだ緑谷に、ミリオに個性について見解を聞いてみることにした。このクラスのブレインである緑谷は、いつの間にか頼れる存在になっていた。


「緑谷君、ミリオさん、ワープと透過どっちがメインだと思う」

「やっぱりそう考えるよね…僕は透過だと思う」

「俺も」


切島は「すり抜けるだけじゃねぇのか!?」と驚いていたが、その可能性はあまり考えられなかった。
焦凍のように2種類の個性がはっきりと並立している場合もあれば、灯水のように混ざっている場合もある。一概に言えないが、普通はそういったことは珍しいし、炎司だって3人子供を作ってようやく灯水たちでそれに成功している。

普通に考えれば、透過によって地面の中を移動してきたと考える方が妥当だ。


「透過していれば実体がない、どうやって地面の中で推進力を得てるんだろう…」

「それも気になるけど、今は攻略法だよ。俺くらいしか、もう遠距離は残ってないしね」


開始から約6分、すでに遠距離隊は全員が腹を抱えてうずくまる様に倒れていた。
残るは灯水と近接隊だけとなる。実力差に震えそうになっていると、相澤が追い打ちをかけた。


「お前らいい機会だ、しっかりもんでもらえ。その人、通形ミリオは俺の知る限り、最もNo.1に近い男だぞ…プロも含めてな」


まだ学生なのに、プロ以上にトップに近いというのだ。確かに、その動きは個性以上の「何か」を感じさせる。


「何したのかさっぱりわかんねぇ!すり抜けるだけでも強いのに、ワープとかそれってもう…!無敵じゃないすか!」

「よせやい!」


切島は歯噛みをする。ミリオは近接戦の構えのままこちらに意識を強くしていく。無敵、確かに一見そう見える。


「個性だけで無敵ってのはありえない。確実にあの個性だって弱点があるよ」

「灯水君の言う通り、直接攻撃されてるんだから、カウンター狙いで行けばこちらから触れるチャンスもあるはず。どんな個性にしろ、分かることから仮説を立てて勝ち筋を探っていこう!」


灯水と緑谷が言うと、押されていた近接組も覚悟を決め直す。


「…探ってみなよ!」


ミリオは走り出すと、すぐに地面に沈んだ。姿が見えなくなったが、確実にこちらに接近しているはず。物質的な感知はあてにならないが、一瞬でも意識をコントロールしたい。


(どんな攻撃モーションも、地上での移動も、必ず実体化している部分がある。そこを氷結させたところで油断させることをして、隙が生じたら範囲攻撃…!)


殴るにしても踏ん張らなければならないし、咄嗟に地上で動くときも足で地面を蹴る。拳や足などは必ず実体化するはずだ。

問題は、致命傷を与えるのがあまりにも難しいこと。常に足と手だけ実体化するようにしておけば、体の重要な場所、よく武道で中線と呼ばれる部位を常に透過させられる。
中線とは、頭から顔面、首、心臓、鳩尾、下腹部、股間とまっすぐに体の中心を貫く重要な部位のことで、中線を狙った攻撃は殺傷能力が桁違いに上がる。空手の膝蹴りや前蹴りなどがこれに当たる。

だが中線だけ透過させ、手や足も状況ごとに透過と実体化を繰り返すとなればかなり集中する必要がある。中線を実体化させるには、その集中を解く他になく、そしてその一瞬で確実に攻撃を決められる範囲攻撃が有効だ。


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