焦凍、焦燥、衝動−9
翌日、朝のHRで相澤はインターンに関する職員会議についての説明を行った。爆豪の謹慎が明けて、これで全員そろっての授業となる。
「一年生のヒーローインターンですが昨日協議した結果、校長をはじめ多くの先生がやめとけという意見でした」
「えーあんな説明会までして!?」
「まぁ全寮制になった経緯から考えたらそうなるか」
なぜか敬語口調の相澤に、切島が残念そうな声を出す。上鳴は意外にも納得したようで、確かにあんな事件のあとに生徒を学外に長時間出させるのはリスクをはらんでいた。
謹慎だったうえに仮免のない爆豪の「ざまぁ!!」という僻みが聴こえる。
「が、今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、方針として、『インターン受け入れの実績が多い事務所に限って一年生の実施を許可する』という結論に至りました」
「クソが!!」
再び爆豪の声が聞こえるが、すでに生徒たちは職場体験で行った事務所が対象になっているか気にし始めていた。
恐らくエンデヴァー事務所は可能だと思われるが、もともと職場体験でも行ったところだし、何より灯水がインターンに強い興味を持ったのはミリオの話によってだった。
そこで、灯水はミリオに頼んで、ミリオの事務所で灯水も参加させてもらえないか話をしに行くことにした。
***
昼休み、初めて3年生のフロアにやってきた。どことなく雰囲気が落ち着いているというか、学年ごとに廊下の雰囲気が変わるのは学校あるあるだよな、と思う。
ヒーロー科のところにやってくると、教室からちょうど天喰が出てくるところだった。
「あっ、天喰先輩、」
「えっ…」
声をかけると、天喰は大げさなほどにびくついた。こちらを怖いものを見るように見てくる。
「えと、あの、ミリ…通形先輩っていますか」
「あぁ、ミリオか…うん、いるよ。呼んでこようか?」
「いいんですか?お願いします!」
「うわイケメン怖い…」
天喰はまたびくりとのけぞってから教室に戻った。また個性的な人だな、と思っていると、すぐに天喰はミリオを連れて来た。
「おっ、轟君兄!」
「こんにちは、すみません急に呼んでしまって!天喰先輩もありがとうございました!」
「俺にはない爽やかさが心臓に悪い…」
天喰にも礼を言うと、そんなことを言いながら手を上げて答え、行こうとしていたところへ廊下を歩いて行った。
「ひょっとしてインターンのことかな!?」
「あ、はい」
「そうか!それなら、俺これから昼飯食いに行くんだよね!一緒にどう?」
「えっ、あ、わかりました」
ミリオは気軽に灯水を誘うと、連れ立って食堂に向かうことになった。鮮やかなコミュニケーション能力である。成り行きで先輩と昼食をすることになるとは思わなかった。
いつも通り混み合っている食堂にやってくると、ミリオはよく声をかけられていた。
「あれ、ミリオ、いつの間に1年生のイケメン注目株と仲良くなってんの〜?」
「ミリオずるー、あたしも轟君と一緒に食べたいわー」
「ナンパじゃないんだよね!言い方!」
そんなミリオに周りもけらけらと笑っている。ミリオ自身もよく笑うが、ミリオの周りの人も笑顔だった。
そうしてそれぞれ食事を受け取って席に着く。少し注目を浴びながらも、2人は手を合わせて食べ始めた。
「それで、インターンについて何か聞きたいことあった?」
「…実は、その、俺も先輩のところでインターンしてみたいって思いまして」
灯水はかつて出来損ないと言われた自分が、個性を使い方に工夫をすることで使えるようにしていったことを話し、さらに高めたいからインターンをさせて欲しいのだということをミリオにかいつまんで話した。
「ミリ…通形先輩に自分が似てるって言うのもおこがましいんですけど。通ずるものを感じて…」
「体育祭本戦は見たんだ。あんなに強いから話聞いてちょっと驚いたよ!君はユーモアもあるし実力もある、何よりその動機も模範的雄英生って感じだよね!Plus Ultra!」
ミリオはそう言うと、いつものとは少し違う、優し気な笑顔でニコリとする。
「俺も気になってたんだ。俺からもサーに言ってみるから、解答もらったら伝えるよ!」
「ほんとですか!ありがとうございます、ミ…通形先輩!」
「あはは、ミリオでいいよ!」
どうにも呼びやすいのと、ミリオだけ自己紹介よりも先にミリオという呼び方だけ聞かされて戦闘になったため、そう呼びそうになる。ミリオは朗らかに笑ってそれでいいと了承してくれたので、そう呼ぶことにした。
「はい、よろしくお願いします、ミリオ先輩」
「OK!じゃあ俺は灯水君って呼ぶよ」
そして、ミリオはひとつ付け足す。
「あとそれから、そば、のびてるんだよね!」