生来、将来、信頼−11
涙を焦凍のシャツに拭うように押し付けたあと、灯水はそっと体を起こし、上から焦凍を見下ろした。焦凍の紅白の髪が布団に散っている。
「よし、ヤるぞ」
「……は?」
灯水は完全に体を起こす前に、焦凍の両腕を掴み、そのまま自分は勢いよく後ろに倒れた。焦凍は腕を引っ張られる形となり、その勢いで上体を起こすことになった。
先ほどとは逆に、灯水が布団にあおむけになり、焦凍が見下ろす格好となる。
「不安にさせてごめんね焦凍。今からしよう」
「なっ、でも、俺はお前に…」
「ぐだぐだうるさいな、いつヤるのかってだけじゃん」
タイミングの話でしかない。確かに情緒はないが、焦凍を安心させることができるなら今で良い。
「焦凍、俺は別に、やってあげるってつもりじゃない。焦凍とそういうことしたいって思ってるよ」
「…そんなん、俺だって……」
「でしょ?じゃあいいじゃん。俺のことは大丈夫だよ」
今はもう、焦凍は乱暴なことは決してしない。もう怖くなんてなかった。
「…おいで、焦凍」
だから、両腕を焦凍に向けて広げて招く。焦凍はさっと顔を赤らめると、視線を逸らした。
「…ずりぃだろ、それ……」
「しょ、う、と」
「分かった、覚悟決める…嫌だったら絶対言えよ」
「分かってるよ」
ようやく、焦凍は覚悟を決めたらしい。普通逆だろうと思うのだが、焦凍の方があの夜のことを引きずっているのだから当然だ。ド天然の癖にこういう繊細な一面を見せるのは、それだけ本気で灯水のことを愛してくれているからに他ならない。
「…キス、していいか」
「聞かなくていいって」
前にも同じようなことを言ったはずだ。おかしくなって笑うと、焦凍もやっと少し微笑んでから、そっと唇を重ねた。
最初は触れ合うだけ。そこから、何度か離してからもう一度くっつけ、更にもう一度、と繰り返し、そしてゆっくりと舌が口内に入ってくる。
自分のもので迎えて絡ませると、互いに角度を変えながら徐々に深くしていく。
上あごをなぞられるとぴり、とした快感が走る。
「んっ、ふっ、っ、」
「っ、はぁっ、灯水…」
唇を離し至近距離で見つめ合う。焦凍は灯水の頭を撫でると、右手を灯水のシャツの裾に忍ばせる。きゅ、と胸の先を摘ままれると、思わず灯水は焦凍の肩を掴んだ。
「んっ、ぁ、」
「…かわいい」
声が漏れると、焦凍は恍惚とそう言ってから、再びキスしてきた。舌が口内の感じるところを責め立て、左手もシャツをめくって反対側の胸元をいじる。
膝で股間を押されると、緩く立ち上がった灯水の自身に刺激が走る。
「んっ、んん、はぁっ、あっ、」
「…っ、下、脱がすぞ」
焦凍は灯水の確認を取るまでもなく、ジャージと下着を下ろした。少し乱雑だが、足が引っかからないように配慮してくれているところは、あの夜とは比べ物にならない。
自身が外気に触れて目をつぶる。今更明るさが羞恥を感じさせた。
すると、焦凍はがさこそと段ボールを漁ると、中からローションとゴム手袋を取り出した。
「…え、どうしたのそれ」
「アマゾンには何でもあってすぐ届くって切島に聞いた。しかも、内容物の名前出ねぇんだな。すげぇな」
「そうだね…?」
そういうことではないのだが、まぁいい。焦凍は手袋をすると、ローションを手のひらに垂らして温める。やけにそういう細かいところまで気が利いている。
「…あのあと、調べてた。次はちゃんとしようって。次のこと考える前にやるべきことあんのにな」
「…結果オーライじゃん」
どうやら焦凍なりに考えてくれた結果らしい。ちょっと予想の斜めを上をいくところが焦凍らしいと思った。