死穢八斎會戦/前編−5


二日後の深夜に、メールで決行日が告げられた。どうやらエリの場所は特定されたらしい。
それからすぐに決行日となると、一同は再びナイトアイの事務所に集められた。早朝からやって来たということは、これから遠方に移動するのかと思っていたが、集まったヒーローたちにナイトアイが示したエリの居場所は、なんと本拠地だった。
つまりナイトアイの管轄である、この名古屋郊外の街だ。

すぐに警察が動員され、事務所の前にはぞくぞくと警察が集まってくる。それに混じって、事務所ごとにヒーローと雄英生も集まった。

相澤はナイトアイ事務所と動くと緑谷に念を押していた。見張っているぞということだろう。
それを横目に、落ち着いた様子のヒーローたちと緊張するインターン生との間で待っていると、警察の代表がナイトアイのところへやって来た。
ナイトアイ、そして他のヒーローたちを見渡す。


「ヒーロー、多少手荒になっても仕方ない。少しでも抵抗や反抗が見えたら対応頼むよ!相手は仮にも今日まで生き延びたヤクザもの、くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うして欲しい!」


静まり返る一同に、男の声が響く。いよいよ、これから作戦が開始されるのだ。


「出動!!!」



***



午前8時半、八斎會の邸宅の門で、警察の男が全員の整列を待ってインターフォンへ向かう。現行犯ではない捜索のため、令状を読み上げてこれからどんな意図でもって警察権を行使するのか伝えなければならない。犯罪者相手に、というのは感情論でしかなく、まだその犯罪者は法廷で罪を確定していない容疑者であって、彼らには依然として所有財産の権利がある。
彼らにまだ存在する人権を守るため、このような段階を踏まねばならないのだ。

しかし、男がインターフォンを鳴らしたかどうか、というタイミングでのことだった。


「何なんですかァ」


突然、そんな気の抜けた声とともに、門が吹き飛んだ。扉ごと正面にいた警察が空中へ飛ばされ、轟音が響く。
一気に緊張感が走ると、すぐに相澤と緑谷が飛ばされた警察を保護した。


「全員で取り押さえるぞ!」


警察はすぐに、門を破壊したのだろう非常に大柄な男へ向かうが、男は大きな拳を握ると、リューキュウは警察を制止した。


「下がって!」

「朝から何なんですかァ!」


直後、リューキュウは個性を発動し、ドラゴンの姿になった。どちらが本来の姿かは分からないが、リューキュウのこの姿は格好良くて人気がある。
リューキュウは男の拳を簡単に受け止めると、ドラゴンの姿のまま冷静に告げる。


「とりあえず、ここに人員を割くのは違うでしょう。彼リューキュウ事務所が引き受けます、皆は引き続き仕事を」


不意を突かれてしまったため、事態は一気に流動的になった。順序も段取りもすべてなくなり、警察含め一同は全員で邸宅になだれ込んだ。
サポートに入る波動、麗日、蛙吹と分かれ、ナイトアイ事務所の緑谷とミリオ、灯水、ファットガム事務所の切島と天喰は先陣を切って建物に突入する。
組員らしい男たちは警察と他のヒーローが食い止めて、組員の予知によってエリのいる部屋の場所を突き止めたナイトアイが全員を率いて廊下を走った。

ナイトアイはさっそく、廊下の途中で花瓶と掛け軸が置かれた床の間のようなところで立ち止まる。


「ここだ」


どうやら仕掛けがあるらしく、花瓶をどかして床の継ぎ目を弄ると、床の間そのものが格納されて通路が視界に入った。

その直後、中から組員たちが飛び出してくる。
それをバブルガールとセンチピーダーがすぐに取り押さえると、2人は男たちの確保を行う。


「追ってこないよう足止めします!先行ってください、すぐ合流します!」


その瞬時の行動は、先ほどのリューキュウもそうだが、プロの速さだった。
こうして、相棒2人を除いたナイトアイ事務所とファットガム事務所、そしてロックロックと警察が本拠地施設に突入することとなった。

階段を駆け下りて廊下に入る。辺りは武骨なアスファルトと配管という光景だ。
そこを走っていくと、すぐに行き止まりの壁があった。明らかに質感が違うそれを、まずミリオが透過によって向こう側を確認した。


「壁で塞いであるだけです!ただかなり厚い壁です!」


ミリオがナイトアイに報告すると、ヒーローより先に緑谷と切島が前に出る。


「来られたら困るって言ってるようなもんだ」

「そだな!妨害できてるつもりならめでてーな!!」


そう言うと、切島は拳で、緑谷は足で壁をぶち破った。大量のコンクリートが粉々になって散らばり、壁がかなり厚いことがはっきりと分かる。


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